[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

勘定科目を体系的に分類し、仕訳の仕方等を解説した会計の実務的マニュアルです。


営業権(のれん)


営業権とは 【good will

営業権の定義・意味など

営業権(えいぎょうけん)とは、額で評価した暖簾(のれん)を処理する資産勘定をいう。

営業権の別名・別称・通称など

のれん

営業権はのれんともいう。

参考:岩崎恵利子 『パッと引いて仕訳がわかる 逆引き勘定科目事典』 シーアンドアール研究所、2009年、85項。

法人・個人の別

法人・個人

営業権は法人・個人で使用される勘定科目である。

営業権の範囲・具体例

営業権の範囲
官公庁の登録・許認可に基づく権利

法人税法上、官公庁の登録・許認可に基づく権利も営業権に含めている。

たとえば、次のようなものがある

  • タクシー会社のナンバー権
  • 許可漁業の出漁権
  • 内航海運業の建造引当権
  • 繊維機械の登録権利

営業権の具体例

営業権の具体的な内容としては次のようなものがある。

  • 老舗の商号や商標のブランド・伝統・社会的信用・知名度・名声・ネームバリュー
  • 技術・ノウハウ・営業上の秘訣
  • 得意先・仕入れ
  • 従業員の質
  • 顧客網
  • 経営組織
  • 金融
  • 立地条件等の地理的条件
  • 政治的特権

営業権の位置づけ・体系(上位概念等)

無形固定資産

営業権は無形固定資産のひとつである。

無形固定資産には営業権も含めて次のようなものがある。

  1. 法律上の権利
    1. 借地権(地上権を含む)
    2. 鉱業権
    3. 漁業権(入漁権を含む)
    4. 水利権
  2. 法律によって知的生産物などに与えられる独占的権利
    1. 工業所有権
      1. 特許権
      2. 商標権
      3. 実用新案権
      4. 意匠権
    2. 著作権
  3. 特定の施設の利用権など契約上の権利
    1. 電話加入権
    2. 施設利用権
      1. 電気ガス供給施設利用権
      2. 水道施設利用権
      3. 工業用水道施設利用権
      4. 電気通信施設利用権など
    3. ダム使用権
    4. ノウハウノーハウ
  4. ソフトウェア
    1. コンピュータプログラム
    2. システム仕様書
  5. 営業権といった企業信用などにより超過収益力をもたらす権利
    1. 営業権(のれん)
  6. リース資産(当該会社ファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産である等の一定の条件あり)

会社計算規則
資産の部の区分)
第七十四条 …
 次の各号に掲げる資産は、当該各号に定めるものに属するものとする。

 次に掲げる資産 無形固定資産
 特許権
 借地権(地上権を含む。)
 商標権
 実用新案権
 意匠権
 鉱業権
 漁業権(入漁権を含む。)
 ソフトウエア
 のれん
 リース資産(当該会社ファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産であって、当該リース物件がイからチまで及びルに掲げるものである場合に限る。)
 その他の無形資産であって、無形固定資産に属する資産とすべきもの

営業権の決算等における位置づけ等

財務諸表における区分表示表示科目

貸借対照表資産固定資産無形固定資産 > 営業権

区分表示
無形固定資産

前述したように営業権は無形固定資産に属するものとして表示する。

企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)

(一)資 産

B …
  営業権、特許権、地上権、商標権等は、無形固定資産に属するものとする。

表示方法
直説法

帳簿価額)

減価償却の対象となる無形固定資産については、直接法しか認められていない。

つまり、有形固定資産とは異なり、帳簿価額だけを表示し、また、減価償却累計額の注記も不要である。

企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)

(一)資 産

B …
無形固定資産については、減価償却額を控除した未償却残高を記載する。

会社計算規則
無形固定資産の表示)
第八十一条  各無形固定資産に対する減価償却累計額及び減損損失累計額は、当該各無形固定資産額から直接控除し、その控除残高を当該各無形固定資産額として表示しなければならない。

営業権の会計簿記経理上の取り扱い

会計処理方法

使用する勘定科目・記帳の仕方等
取得時

暖簾という無形のリソースは、原則として、資産計上の対象とはならない(貸借対照表上に計上されない)。

つまり、暖簾は自社で創設することはできない。

ただし、例外として、次のような場合に限り、暖簾額で評価して、営業権のれん勘定借方に記帳して資産計上できる。

企業会計原則注解
〔注25〕営業権について
営業権は、有償で譲受け又は合併によって取得したものに限り貸借対照表に計上し、毎期均等額以上を償却しなければならない。

取得原価取得価額)の決定方法

暖簾取得原価は、買取価額から実際に取得した産の価額を差し引くことで求められる。

暖簾取得原価 = 買取価額 - 実際に取得した産の価額

減価償却
耐用年数減価償却の方法減価償却費の計算方法)・減価償却の記帳方法

会社法では、暖簾の償却期間等に関する具体的な規定はない。

しかし、法人税法上、耐用年数5年の定額法で均等償却するものとされている(法人税法施行令48条の2第4号)。

また、記帳方法は直接法で行う。

なお、「企業結合に関する会計基準」では20年以内に償却するものとされている。

取引の具体例と仕訳の仕方

事業譲渡
一般
借方科目
貸方科目
(諸)資産 (諸)負債 ✕✕✕✕
営業権(のれん) 普通預金 ✕✕✕✕

商品のみ

取引

A社の事業を1000万円で譲り受けた。なお、これによって現実に取得した産はA社の商品600万円だけである。

仕訳

借方科目
貸方科目
商品 600万 普通預金 1000万
営業権(のれん) 400万

吸収合併
受入純資産額<増加資本額の場合

吸収合併により受け入れた純資産額が増加する資本額を下回る場合は、被合併会社資産時価超の額で購入したことになるが、その差額は営業権勘定無形固定資産)の借方に記帳して処理する。

つまり、この場合、暖簾(のれん)という法律上の権利ではないが、収益の原因となりうるものを額で評価したということになる。

借方科目
貸方科目
(諸)資産 (諸)負債 ✕✕✕✕
営業権 資本金 ✕✕✕✕

営業権の務・法・制上の取り扱い

消費税の課・非課・免・不課(対象外)の区分

課税取引

消費税法上、営業権は課税取引に該当し、仕入税額控除の対象となる。



現在のページのサイトにおける位置づけ

 現在のページが属するカテゴリ内のページ一覧[全 13 ページ]

  1. 借地権
  2. 工業所有権(産業財産権)
  3. 特許権
  4. 商標権
  5. 実用新案権
  6. 意匠権
  7. 電話加入権
  8. 施設利用権
  9. 営業権(のれん)
  10. 営業権―取得―会社設立(法人化・法人成り)による事業譲渡
  11. ノウハウ(ノーハウ)
  12. ソフトウェア
  13. ソフトウェア―会計基準―中小企業の会計に関する指針

 現在のページが属するカテゴリのサイトにおける位置づけ



プライバシーポリシー