[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

勘定科目を体系的に分類し、仕訳の仕方等を解説した会計の実務的マニュアルです。


借地権


借地権とは

借地権の定義・意味など

借地権(しゃくちけん)とは、事業目的の地上権と土地の賃借権を処理する資産勘定をいう。

法人・個人の別

法人・個人

借地権は法人・個人で使用される勘定科目である。

借地権の範囲・具体例

借地借家法では借地権は建物の所有を目的するものに限定されている。

しかし、所得法では構築物の所有を目的するものも含まれ、法人税法ではさらにその範囲が広がり、目的が限定されていない。

所得法施行令
資産の譲渡とみなされる行為)
第七十九条  法第三十三条第一項 (譲渡所得)に規定する政令で定める行為は、建物若しくは構築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権(以下この条において「借地権」という。)…

法人税法施行令
土地の使用に伴う対価についての所得の計算)
第百三十七条  借地権(地上権又は土地の賃借権をいう。以下この条において同じ。)…

そこで、会計上は建物構築物の所有に限らず、広く他人の使用する土地事業目的のために利用する場合も含む。

参考:駒井伸俊 『世界一使いやすい!勘定科目仕訳の事典』 秀和システム、2007年、98項。

借地権の位置づけ・体系(上位概念等)

無形固定資産

借地権は無形固定資産のひとつである。

無形固定資産には借地権も含めて次のようなものがある。

  1. 法律上の権利
    1. 借地権(地上権を含む)
    2. 鉱業権
    3. 漁業権(入漁権を含む)
    4. 水利権
  2. 法律によって知的生産物などに与えられる独占的権利
    1. 工業所有権
      1. 特許権
      2. 商標権
      3. 実用新案権
      4. 意匠権
    2. 著作権
  3. 特定の施設の利用権など契約上の権利
    1. 電話加入権
    2. 施設利用権
      1. 電気ガス供給施設利用権
      2. 水道施設利用権
      3. 工業用水道施設利用権
      4. 電気通信施設利用権など
    3. ダム使用権
    4. ノウハウノーハウ
  4. ソフトウェア
    1. コンピュータプログラム
    2. システム仕様書
  5. 営業権といった企業信用などにより超過収益力をもたらす権利
    1. 営業権のれん
  6. リース資産(当該会社ファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産である等の一定の条件あり)

会社計算規則
資産の部の区分)
第七十四条 …
 次の各号に掲げる資産は、当該各号に定めるものに属するものとする。

 次に掲げる資産 無形固定資産
 特許権
 借地権(地上権を含む。)
 商標権
 実用新案権
 意匠権
 鉱業権
 漁業権(入漁権を含む。)
 ソフトウエア
 のれん
 リース資産(当該会社ファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産であって、当該リース物件がイからチまで及びルに掲げるものである場合に限る。)
 その他の無形資産であって、無形固定資産に属する資産とすべきもの

借地権の決算等における位置づけ等

借地権の財務諸表における区分表示表示科目

貸借対照表資産固定資産無形固定資産 > 借地権

区分表示
無形固定資産

前述したように借地権は無形固定資産に属するものとして表示する。

企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)

(一)資 産

B …
  営業権特許権、地上権、商標権等は、無形固定資産に属するものとする。

借地権の会計簿記経理上の取り扱い

会計処理方法

使用する勘定科目・記帳の仕方等

権利金を支払って借地権を取得したときは、その取得価額を借地権勘定借方に記帳して資産計上する。

取得原価取得価額)の決定方法

借地権の取得原価には、次のものが含まれる。

権利金

借地権の設定には、通常権利金が必要となる。

減価償却
非減価償却資産

借地権は法上、土地と同様のものとして扱われており、非減価償却資産である。

したがって、取得価額が10万円未満であっても、資産計上する必要がある。

更新料

前述したように借地権は非減価償却資産である。

しかし、法上、借地権更新に際して支払った更新料も借地権の帳簿価額に加算することとされている(具体的には借地権勘定借方に記帳して資産計上する)ため、その代わりに借地権の一部が減価したとみなし、以下の算式により計算した額を費用計上(必要経費損金算入)できる扱いとなっている。

必要経費損金算入額 = 更新直前の借地権の帳簿価額 ✕ (更新料の額 / 更新時の借地権の価額(時価))

所得法施行令
(借地権等の更新料を支払つた場合の必要経費算入)
第百八十二条  居住者が、不動産所得事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供する借地権(地上権若しくは土地の賃借権又はこれらの権利に係る土地の転借に係る権利をいう。)又は地役権の存続期間の更新をする場合において、その更新の対価(以下この条において「更新料」という。)の支払をしたときは、当該借地権又は地役権の取得費に、その更新の時における当該借地権又は地役権の価額のうちに当該更新料の額の占める割合を乗じて計算した額に相当する額は、その更新のあつた日の属する年分の不動産所得額、事業所得額、山林所得額又は雑所得額の計算上、必要経費に算入する。

法人税法施行令
更新料を支払つた場合の借地権等の帳簿価額の一部の損金算入等)
第百三十九条  内国法人が、その有する借地権(地上権若しくは土地の賃借権又はこれらの権利に係る土地の転借に係る権利をいう。)又は地役権の存続期間の更新をする場合において、その更新の対価(以下この条において「更新料」という。)の支払をしたときは、その更新の直前における当該借地権又は地役権の帳簿価額に、その更新の時における当該借地権又は地役権の価額のうちに当該更新料の額の占める割合を乗じて計算した額に相当する額は、その更新のあつた日の属する事業年度所得額の計算上、損金の額に算入する。この場合において、その更新料の額は、当該借地権又は地役権の帳簿価額に加算するものとする。

認定課

借地権の設定に際し、通常は権利金を授受する慣例があるにもかかわらずその支払いがなく、かつ相当の地代も支払われていない場合には、権利金相当額が贈与されたものとみなされ、課税対象となる(認定課)。

参考:No.5730 権利金の認定課について|法人税国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5730.htm

取引の具体例と仕訳の仕方

借地権を取得したとき

取引

事業目的の建物を建設する目的で地主と土地の賃貸契約を締結し、権利金銀行振込で支払った。

仕訳

借方科目
貸方科目
借地権 ✕✕✕✕ 普通預金 ✕✕✕✕

借地権を更新したとき

取引

借地権を更新した。なお、更新料が200万円、更新直前の借地権の帳簿価額は300万円、更新時の借地権の時価は500万円であった。

仕訳

借方科目
貸方科目
借地権 2,000,000 普通預金 2,000,000
借地権償却 1,200,000 借地権 1,200,000

借地権償却分 = 300万 ✕(200万/500万)

認定課

認定課が行われた場合、務上は、次のような取引がなされたものとみなされる。

借方科目
貸方科目
借地権 ✕✕✕✕ 受贈益 ✕✕✕✕

借地権の務・法・制上の取り扱い

消費税の課・非課・免・不課(対象外)の区分

非課税取引

消費税法上、借地権の取得は非課税取引にあたる。

所得法上の取り扱い

譲渡所得

不動産の賃貸借時には、権利金礼金)、敷金保証金)が授受されるのが通常である。

この場合、権利金礼金)は、不動産の貸付けに関わるものなので、原則として不動産所得に該当する。

これに対して、敷金保証金)は、返還を要しない旨の特約のある場合を除き、所得とはならない。

しかし、権利金が多額に授受される場合には、土地の一部を譲渡したことと同様の経済的効果を持つことになるので、例外的に譲渡があったものとみなして、譲渡所得額として課される。



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  2. 工業所有権(産業財産権)
  3. 特許権
  4. 商標権
  5. 実用新案権
  6. 意匠権
  7. 電話加入権
  8. 施設利用権
  9. 営業権(のれん)
  10. 営業権―取得―会社設立(法人化・法人成り)による事業譲渡
  11. ノウハウ(ノーハウ)
  12. ソフトウェア
  13. ソフトウェア―会計基準―中小企業の会計に関する指針

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