貸借対照表―資産―繰延資産
繰延資産とは
繰延資産の定義・意味
繰延資産とは、減価償却と同様の趣旨で、支出を数期の費用として分割計上する(費用の繰延)ために用いられる資産の勘定科目をいう。
つまり、本来は費用項目だが、費用の効果が数期間にわたり及ぶため、費用収益対応の原則の要請から、いったん資産として計上し、その計上した資産につき償却(費用化)という手続をとる。
したがって、繰延資産は「資産」として位置づけられてはいるが、財産的価値(換金性)はない。
繰延資産の範囲
会社法が規定する繰延資産の範囲
いわゆる旧商法では、次の8つに限り、繰延資産として計上することを認めていた。
しかし、会社法においては、繰延資産の範囲は明確に規定されていない(繰延資産の限定列挙の廃止)。
それは、「政策判断に基づいて積極的に資産計上を認める規定を設けることは適当ではなく、また、会計慣行に委ねることとしているので積極的に資産計上を認める規定を設けることは適当ではない」との趣旨に基づく。
企業会計原則が規定する繰延資産の範囲
会社法で繰延資産の限定列挙が廃止され、繰延資産の範囲は会計慣行に委ねられることとなったため、これを受けて、企業会計原則では、繰延資産として次の5つを規定している。
税法が規定する繰延資産の範囲
以上に対し、例えば、所得税法では、企業会計原則が規定する開業費、開発費以外に、税法上独自の繰延資産として、次の5つを規定している。
- 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
- 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
- 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
- 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
- その他自己が便益を受けるために支出する費用
各法規間の調整
繰延資産として会計処理できるのは、会社法、つまり、企業会計原則上の繰延資産(以下、「会社法上の繰延資産」という)に限られる。
そこで、税法上では繰延資産とされていても、会社法上は繰延資産とされていないものについては、長期前払費用といった勘定科目などで処理をする。
繰延資産の具体例
税法上独自の繰延資産
自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
- 道路建設負担金
- 上下水道建設負担金
- 協会など会館建設負担金
- アーケード建設負担金
資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
- ノウハウの頭金
製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
- 特約店などに陳列棚などを贈与した場合
その他自己が便益を受けるために支出する費用
- 職業スポーツ選手との契約金
- 同業者団体への加入金
- 出版権設定の対価
繰延資産の類似概念
固定資産・棚卸(たな卸)資産
繰延資産は、貸借対照表上、資産に分類・計上されるが、固定資産などと異なり、財産的価値を有していない(換金性がない)点に注意。
減価償却
繰延資産と減価償却との違いは、前者が任意であるのに対し、後者は法的に強制されている点にある。
繰延資産の財務諸表における表示区分と表示科目
繰延資産には資産性がないため、固定資産の後にこれと区別して配列する。
繰延資産勘定の見方
家計簿的な収入・支出ベースによる管理から会計的な収益・費用ベースによる管理への変換のために用いられる勘定科目であるが、あくまでも概念的な処理であることに注意。
概念的な収益・費用ベースによる管理では損益計算書上は収益が上がっているのに、現実には手元にお金がないという事態もありうる。
繰延資産勘定の収益・費用→益金・損金変換
原則
繰延資産は前述のようにその年に全額を経費にしてしまうことも、5年間で経費にすることも任意であるが、いずれにせよかかった費用は全て経費にすることができる(その全額が「経費で落ちる」ということ)。
つまり、全額を損金(税法上・税務上認められている費用)に算入することが認められている。
なお、償却費として必要経費に算入する金額の計算方法については、次のページを参照
少額繰延資産
①所得税法独自の繰延資産で
②20万円未満のものを
少額繰延資産という。
少額繰延資産については、その全額を支出年分の必要経費に算入できる。

