資本主義
資本主義とは 【capitalism】
資本主義の定義・意味など
資本主義(しほんしゅぎ)とは何か、という問いに対する答えは様々である。
たとえば、広辞苑では、次のように定義されている。
封建制度に現れ、産業革命によって確立した生産様式。商品生産が支配的な生産形態となっており、あらゆる生産手段と生活資料とを資本として所有する資本家階級が、自己の労働力以外に売るものを持たない労働者階級から労働力を商品として買い、それの価値とそれを使用して生産した商品の価値との差額(剰余価値)を利潤として手にいれる経済体制。
また、高校の政治・経済の参考書では、次のとおり。
資本主義経済では、生産手段を私有する資本家が、労働者を雇って賃金を支払い、できるだけ多くの利潤を獲得しようとして自由に企業活動を営む。
あるいは
資本家(企業など)は資本(貨幣)を投じて工場・機械および原材料などの生産手段を提供し、それに労働者が労働力を加えることによって商品を生産する。生産活動によって生み出された新たな価値を付加価値という。
などとある。
これらに共通する概念は、資本家、生産手段、労働者(労働力)である。
つまり、生産手段※を私有する資本家が、労働者を雇って、生産手段に労働力を加えることで、不可価値(剰余価値 新たな価値つまり利潤)が生まれるという図式である。
※土地・工場・機械などを指す。マルクスは、労働手段(工場・機械など)と労働対象(原材料)をあわせて生産手段と呼んだ。
しかし、これらはマルクスによる資本主義の定義であり、19世紀の資本主義(=産業資本主義)のしくみである。
それ以前の商業資本主義や現代の資本主義などにはそぐわない(私見)。
たとえば、この定義では、個人が行う株式投資やFXなどのマネー経済は、資本主義的経済活動にはあたらないことになる。
もっと抽象的・一般的に資本主義を定義するには、端的に、市場経済から利益(利潤)を調達(獲得)することを目的とした経済体制である、とすれば足りる。
貨幣に代表される資本(つまり、財産)を元手として、事業(市場経済)に投下して利潤追求するという社会経済システムが資本主義である。
この社会経済システムでは、貨幣の目的は商品を手に入れることではなく、より多くの貨幣自体を手に入れることになり、貨幣が商品化する。
なお、「利潤・利益を獲得する」ことを「資本が自己増殖する」と表現することもある。
この表現を使えば、人間の欲望によって貨幣が自己増殖の目的を有した(貨幣が商品化したとき)とき、貨幣は資本と呼ばれ、そして、貨幣が資本となった社会経済システムを資本主義という、と定義づけることもできる。
宮田安彦 『ライフデザイン学概論 真に豊かな生活を求めて』 日本教育訓練センター、2013年、77項。
資本主義と関係する概念
貨幣
貨幣とは、市場経済における商品の媒介物であり、次の3つの機能をもったものとして定義される。
かなり図式的で乱暴な理解の仕方であるが、いちおう次のような対応関係があると考えて整理しておくとわかりやすい(私見)。
市場経済
市場経済は、資本主義と同視されてあいまいに語られている場合も多いが、両者は区別すべき概念である。
歴史的にも、市場経済は古代から存在しており、近代以降、資本主義が市場経済を取り込む(あるいは、市場経済から資本主義が生み出される)かたちで、形成・発展してきた。
したがって、資本主義は市場経済(商品経済)を前提としている(あるいは、市場経済を最大限利用した)経済体制(経済システム)であるといえる。
資本主義の特色・特徴
価値観・価値評価基準
資本主義経済は、利益・利潤という明確に数字化された、たった一つの目標に向かって行動する経済システムである。
資本主義社会で生きているということは、所有している資本(金融資本・物的資本・人的資本)を市場に投資して、利益・利潤を獲得・追及していくことである。
したがって、資本主義の社会では、いかに効率的に利潤を獲得するかという価値観に支配される。
個人、会社の価値も、投下した資本(労働者の場合は人的資本)からどれだけの貨幣を産出したかで評価されることになる。
身分などに関係なく、すべて貨幣に還元して評価されるという意味では平等な社会経済システムといえる。
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