貨幣・通貨(お金・カネ・マネー)―機能―②交換手段(流通手段)
交換手段とは
交換手段の定義・意味・意義
交換手段とは、貨幣の機能の一つで、商品(財・サービス)の交換を仲立ち・媒介する機能をいう。
流通手段ともいう。
交換手段の位置づけ・体系
貨幣の機能
貨幣には、次の3つの機能があるとされる。
基本的機能 | 価値尺度手段 | 商品の価値を測定する基準となる機能 |
交換手段 | 商品の交換を仲立ち・媒介する機能 | |
派生的機能 | 価値貯蔵手段 | 富を蓄える機能 |
そして、これに貨幣の派生的機能として、交換手段と区別された支払手段(決済手段)や世界貨幣の機能があるとする場合などもある。
『理解しやすい政治・経済』 文英堂、179頁。
交換手段の趣旨・目的・役割・機能
市場経済の成立
貨幣は、歴史的には商品の交換(モノとモノの交換)の仲立ちをするものとして発生した。
すなわち、商品という定性的なものを、すべて価格という数字で定量的に評価したうえ(←価値尺度手段としての貨幣)、これを市場でお金を出して買うことができる(←交換手段としての貨幣)という経済システムが市場経済である。
紀元前4千年、今から6千年以上前、世界最古の都市であるテル・ブラクがメソポタミアの地に誕生した。
その原動力が「お金」であり、この古代都市には、すでに現代社会を生み出した市場経済の原型があった。
メソポタミア文明においては、さまざまなものが麦を単位に(←貨幣の価値尺度手段としての機能)、交換されていた(←貨幣の交換手段としての機能)。
この麦というお金の登場により、人々の間で一気に交換が加速し、多くの人間同士が深く結びつくことができるようになり、社会が発展した。
そもそも交換という行動自体が人間にしかできない行動であると言う。
交換は、お互いの信頼(→信用)によって成り立つ(信頼なくして交換はありえない)が、相手を「信頼」することができるのは人間だけなのである。
交換できるということが、人間を他の動物と分けた決定的要因であった。
人間だけができる「交換」、これを盛んにしたのが麦というお金であったが、お金による「交換」はまた人間の社会だけが持つ仕組み=職業も生み出した。
こうして、交換が盛んになった都市では、さまざまな職業が生まれていった。
この職業=分業による交換の効果は絶大で、一説によると、これにより食料生産は3倍に伸びたと言い、また、人口も急激に増えていった。
なお、麦以外にもお金の役割を果たしたものとして、米、塩、ヤギがあった。
そして、紀元前6世紀にはギリシャのアテナイで、いよいよお金の主役であるコインが登場する(鋳造貨幣)。
コインとそれ以外のお金では、交換の範囲(商品流通の範囲)が全く異なってくる。
たとえば、お金としてヤギが使われている場合、不健康なヤギを持っている人と商品の交換をすると、その翌日には死んでしまうかもしれない。
したがって、信頼できる見知った人でないと、交換は困難となる。
しかし、お金がヤギではなくてコインである場合、相手がたとえ見知らぬ人であっても、その人がコインさえ持っていればこれを信頼して、自分の持っている商品と交換することが可能となる。
こうして、コインは、交換に必要な信頼を保証するものとして、一気に広がっていった。
これにより、物品貨幣の時代とは桁違いの人々がコインを通じてつながることができるようになっていった。
NHKスペシャル ヒューマン なぜ人間になれたのか(4)そしてお金が生まれた 2012年02月26日放送
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