出向
出向とは
出向の定義・意味など
出向(しゅっこう)とは、命令で他の会社の仕事につくことをいう。
岩波書店『広辞苑第六版』
出向の分類・種類
出向には、在籍のまま相当長期間他企業で労働する在籍出向と、他企業に労働者としての地位も移す移籍出向(転籍)とがある。
- 在籍出向
- 移籍出向(転籍)
有斐閣『法律学小辞典』
ただし、出向は狭義では在籍出向を指し、移籍出向は転籍としてこれと区別される。
出向の位置づけ・体系(上位概念等)
人事異動
出向は企業間の人事異動である。
出向と関係する概念
類似概念・類義語
配置転換
出向が企業間の人事異動であるのに対して、配置転換は企業内の人事異動である。
間違いやすい概念
派遣
出向と派遣との違いがよく議論になるが、出向そのものを業としている場合は、派遣とみなされる場合がある。
派遣とみなされないようにするには出向契約書などを締結し、書類をそろえておく必要がある。
『すぐに使える! 会社が得する人事書式&労働契約書』 株式会社九天社、202頁。
出向の法的根拠・法律など
出向について定義した法律はないが、労働契約法が出向について一定の規制をしている。
労働契約法
(出向)
第十四条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。
出向の要件・条件
就業規則
判例は、出向を命ずるには、当該労働者の承諾その他これを法律上正当づける特段の根拠
が必要であるとする。
そして、出向を「法律上正当づける特段の根拠」として、当該企業の従業員が一般に当然のこととして異議をとどめず、企業内においてそれが事実上の制度として確立しているほどの
慣行や出向義務について直接規定している
就業規則があげられている。
日立電子事件
したがって、就業規則に出向について直接的で明白な定めがある場合は、労働者の個別的な承諾・同意は不要であり、労働者は出向の命令があれば出向しなければならない。
参考:小学館『日本大百科全書』
労働条件通知書
出向は他の会社の仕事につくため、労働条件が大幅に変更する可能性がある。
したがって、労働者の不安を取り除くためにも、出向にあたっては新たな労働条件通知書を作成し、労働者に労働条件について説明をする必要がある。
『すぐに使える! 会社が得する人事書式&労働契約書』 株式会社九天社、203頁。
出向に関するテンプレート
出向に関するテンプレートは次のサイトのページにあります。
出向辞令
労働条件通知書
[文書]テンプレートの無料ダウンロード: 労働関係の通知書―労働条件通知書(雇入通知書・雇用通知書)
出向の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計経理処理方法・簿記の記帳の仕方・使用する勘定科目等
出向者の給料の取り扱い
出向者を受け入れた場合も、自社の社員を出向させている場合にも、その社員に対する給料の自社負担部分については、給料手当(給与手当)勘定を用いるのが一般である。
なお、出向者の数などが多く、別途管理したい場合には、たとえば給与負担金、出向者給与負担金、出向負担金といった名称の新しい勘定科目を設けるという方法もある。
社会保険料の負担
在籍出向の場合には、出向元と出向先の二重の雇用関係が生じることになるが、この場合社会保険料と労働保険料をどちらが負担するのかが問題となる。
社会保険料
例えば、出向元から給与が支払われている場合には、社会保険料(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険料は出向元が負担する。
労働保険料
これに対し、労働保険料の場合は実際に労務が提供されている出向先が負担する。
出向者の源泉徴収
出向者に対する給与の源泉徴収義務者は、給与の実質的な負担者ではなく、給与を支払う者となるので、出向元から給与が支払われている場合には、出向元が源泉徴収をし、源泉徴収票を発行する。
出向の税務・税法・税制上の取り扱い
損金算入の可否(法人税法)
出向者を受け入れた場合
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
出向者を受け入れた場合の給与の支払いを手数料勘定など他の勘定科目を使って処理をすると消費税がかかる場合があるが、給料手当(給与手当)勘定ならば消費税は不課税。
現在のページが属するカテゴリ内のページ一覧[全 10 ページ]
現在のページが属するカテゴリのサイトにおける位置づけ