損害保険―火災保険―地震保険
地震保険とは
地震保険の定義・意味など
地震保険(じしんほけん)とは、「地震保険に関する法律」にもとづき、住宅または生活用動産のみを保険の目的とし、地震・噴火・津波を直接または間接の原因とする火災、損壊、埋没、流失による損害を政令(「地震保険に関する法律施行令」)で定める金額によりてん補する損害保険をいう。
地震保険に関する法律
(定義)
第二条
2 この法律において「地震保険契約」とは、次に掲げる要件を備える損害保険契約(火災に係る共済契約を含む。以下同じ。)をいう。
一 居住の用に供する建物又は生活用動産のみを保険の目的とすること。
二 地震若しくは噴火又はこれらによる津波(以下「地震等」という。)を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失による損害(政令で定めるものに限る。)を政令で定める金額によりてん補すること。
三 特定の損害保険契約に附帯して締結されること。
四 附帯される損害保険契約の保険金額の百分の三十以上百分の五十以下の額に相当する金額(その金額が政令で定める金額を超えるときは、当該政令で定める金額)を保険金額とすること。
地震保険の目的・役割・意義・機能・作用など
被災者の生活の安定
地震保険は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的としている。
住宅の再建を目的とするものではないため、その修理費用の全額が支払われるわけではないが、被災者の生活再建に重要な役割を果たすものといえる。
地震保険に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、保険会社等が負う地震保険責任を政府が再保険することにより、地震保険の普及を図り、もつて地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的とする。
地震保険の特色・特徴
火災保険の付帯保険(オプション)
地震保険は火災保険の付帯保険(オプション)とされており、単独で加入することはできない(地震保険に関する法律第2条2項3号)。
つまり、地震保険は火災保険といっしょに入る必要がある。
地震保険の内容
地震保険の保険対象
住宅と生活用動産
地震保険の保険対象は住宅と生活用動産である。
なお、賃貸住宅の場合は生活用動産のみが対象になる。
地震保険の保険料
地震保険の保険料の目安としては、火災保険に地震保険を付けると、火災保険だけの場合のおよそ倍になる。
ただし、地震保険の保険料は、公的機関である損害保険料率算定機構※1が都道府県ごとの地震リスクにもとづき地震保険基準料率を算出するため、都道府県により大きく異なる※2。
※1「損害保険料率算出団体に関する法律」にもとづく。
※23倍くらいの差が生じる場合もある。
地震保険の保険金額(給付の最高限度額)
火災保険の30~50%
地震保険の目的はあくまで「被災者の生活の安定に寄与すること」であるため、保険金額(給付の最高限度額)は火災保険(主契約)の30~50%に設定されている(地震保険に関する法律第2条2項4号)。
たとえば、住宅の評価額が2000万円の場合、火災保険では最大で2000万円補償されるが、地震保険では1000万円までしか補償されない。
ただし、後述するように地震保険でも特約で住宅の評価額の100%を補償する設定もできる。
地震保険の保険金(現実に支払われる金額)
地震保険の保険金(現実に支払われる金額)は、全損・半損・一部損の別により、以下のとおり定められている。
地震により損害が発生すると、損害保険会社の調査員が被災地に赴き、住宅の損傷の程度を上記3段階で査定する。
そして、その結果、たとえば、全損と査定されると、保険金額の100%が支払われる(ただし、それでも住宅の評価額の30~50%にすぎない)。
地震保険の特約
上乗せ保険
地震保険は特約で住宅の評価額の100%を補償する設定もできる。
大手の損害保険会社では損害保険ジャパン日本興亜、東京海上日動火災保険で取り扱っている。
ただし、もちろん保険料も高くなり、通常の地震保険の保険料の2~3倍となる。
地震保険の運営主体
国と損害保険会社の共同運営
地震保険は、甚大な被害に対応する(保険金の支払いを確実に担保する)ため、国と損害保険会社が共同で運営する。
地震保険の加入率
日本損害保険協会の調べでは、2014年度における地震保険の加入率は全国平均で28.8%とあまり高くない。
地震保険と関係する概念
被災者生活再建支援制度
震災があった場合、地震保険のほか、被災者生活再建支援法にもとづき、住宅の被害状況などに応じて一世帯あたり最大300万円が支給される。
地震保険の税務・税法・税制上の取り扱い
地震保険料控除
所得税法上、地震保険料は一定の金額の所得控除を受けることができるとされている(地震保険料控除)。
地震保険の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
個人事業主の場合、地震保険料は原則として事業上の必要経費とはならないので、会計処理は不要である。
ただし、家事按分している場合や事務所等を賃借している場合は必要経費に算入できる。
なお、個人の地震保険料については、所得税法上、租税優遇措置として地震保険料控除の制度が設けられている。
使用する勘定科目・記帳の仕方等
保険料(支払保険料)・前払費用・長期前払費用
保険期間が1年以内の地震保険料は、保険料(支払保険料)勘定で費用処理をする。
しかし、支払った保険料のうち、期末の未経過分は原則として前払費用に計上する。
ただし、支払った日から1年以内のものは、継続を条件に支払った日の属する事業年度の損金算入も認められている。
これに対して、1年を超える保険期間の保険料を一括して支払った場合には、当期の事業年度に対応する金額だけが保険料(支払保険料)勘定で費用処理ができ、それ以外の金額はいったん長期前払費用勘定で資産計上したうえ、その後期間按分して保険料(支払保険料)勘定へと振り替えて費用処理を行う。
地震保険の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
非課税取引
消費税法上、地震保険料は非課税取引として、仕入税額控除の対象とならない(消費税法別表第一)。
No.6201 非課税となる取引|消費税|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6201.htm
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