[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

勘定科目を体系的に分類し、仕訳の仕方等を解説した会計の実務的マニュアルです。


貸借対照表―資産


資産とは 【asset

資産の定義・意味など

資産(しさん)とは、簿記会計では貸借対照表上、企業会社・法人)・個人が経営活動を行うために所有している産(財貨お金モノ)と権利)の総称をいう。

資産の位置づけ・体系(上位概念等)

貸借対照表区分表示

資産は、貸借対照表区分表示のひとつである。

貸借対照表は、資産も含めて、次の3つの部から構成される。

  1. 資産の部
  2. 負債の部
  3. 純資産の部(資本の部)

企業会計原則
貸借対照表の区分)
 貸借対照表は、資産の部、負債の部及び資本の部の三区分に分ち、…

企業会計基準第5号
貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準
純資産の部の表示
4. 貸借対照表は、資産の部、負債の部及び純資産の部に区分し、…

資産の目的・役割・意義・機能・作用など

の運用状況

会計は、投資家・債権者(銀行などの金融機関取引先)・務署などの利害関係者に、一定期間(通常は1年)における企業等の財政状態と経営成績を報告することを目的のひとつとする。

この目的のために、決算により作成される報告書のことを一般的に決算書というが、なかでも次の2つの資料が重要である。

  1. 貸借対照表
  2. 損益計算書

上記のうち、貸借対照表ストックの見地から企業等の財政状態を表し、損益計算書フローの見地から企業等の経営成績を表す。

そして、貸借対照表のうち、負債純資産は資の調達方法をあらわすものとして右側に、資産は資の運用状況(つまり、お金の使い道)をあらわすものとして左側に記載され、左右は一致する。

なお、負債は(その定義は異なるものの)他人資本純資産は少数株主持分と新株予約権がない場合は(その定義は異なるものの)自己資本とそれぞれその範囲が一致する。

貸借対照表の資産には、その会社が「どんな投資をしているか」が表れる。どんな投資をしているかイコールどんな資産を持っているか、これはその会社のビジネスそのものである(『経営が見える会計』 田中靖浩著より)。

投資資産

会計に関する知識は持ちになるために最も役に立つと主張する、ベストセラー『持ち父さん 貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキ氏は、資産を、通常の資産の定義とは異なり、「私のポケットにお金を入れてくれる」もの、つまり、収入を生み出してくれるものと定義する。

この定義からすれば、持ち家や自動車などは資産ではなく、逆に「私のポケットからお金をとっていく」負債ということになる。

この定義は、資産を投資資産として捉えているともいえるかもしれない。

そして、持ちになりたいのなら、「(収入を生み出す)資産を買うこと」に注意を注ぐべきであることを力説している。

中流以下の「持たざる者」は、世間的には資産とみなされている我が家や自動車といった負債を買うことばかりに力を注いでいるから、逆にお金に縛られるのだと。

また、持ちは、(貸借対照表の)資産に常に注目し、そうではないサラリーマンなどの一般の人は、(損益計算書の収入にあたる)給与明細書ばかりに注目するとも述べている。

つまり、「収入」→「支出あるいは負債」というお金の流れではなく、「資産」→「収入」という流れを生み出しなさいと主張しているわけである。

持ち父さん 貧乏父さん』は、会計の知識を実生活に応用させるために大変に面白いし、役に立つ。

簿記会計の世界を、より日常的・常識的な感覚に基づいた家計簿的な世界へと近づけてくれる。

どうして、キャッシュフロー会計減損会計などの考え方が必要とされるのかもよくわかる。

資産の範囲・具体例

資産の範囲
産的価値を有しているもの

資産は、原則として、産的価値(銭または銭的価値)を有しているものをいう。

ただし、例外的に、繰延資産は、期間損益計算を正しく行うために資産として計上するものであって、産的価値はない。

また、逆に、産的価値があるものであっても、資産として計上されないものもある(ノウハウや時間など)。

資産の具体例

資産は現金預金商品・債権(売掛金貸付金)・備品・建物土地などの積極産である。

営業活動に使用する資産を営業資産(または、事業用資産)、土地建物や株や債権などの有価証券のように投資の対象となる資産を投資資産減価償却の対象となる資産を減価償却資産と呼ぶ場合もある。

資産の分類・種類

流動資産固定資産

貸借対照表上の資産は、一般に流動資産固定資産に大別される。

この区別基準として、企業会計原則企業会計原則注解・注16)は次の2つを規定している。

  1. 正常営業循環基準営業循環基準
  2. 1年基準ワン・イヤー・ルール

企業会計原則注解
〔注16〕流動資産又は流動負債固定資産又は固定負債とを区別する基準について
受取手形売掛金前払金支払手形買掛金前受金等の当該企業の主目的たる営業取引により発生した債権及び債務は、流動資産又は流動負債に属するものとする。ただし、これらの債権のうち、破産債権、更正債権及びこれに準ずる債権で一年以内に回収されないことが明らかなものは、固定資産たる投資その他の資産に属するものとする。

ただし、期間損益計算を正しく行うためには、さらに繰延資産も考慮する必要がある。

そこで、企業会計原則などでは、資産を流動資産固定資産繰延資産の3つに分類し、さらにそれぞれを細分化している。

  1. 流動資産
  2. 固定資産
    1. 有形固定資産
    2. 無形固定資産
    3. 投資その他の資産
  3. 繰延資産

企業会計原則
貸借対照表の区分)
 貸借対照表は、…、さらに資産の部を流動資産固定資産及び繰延資産に、…区分しなければならない。

資産の目的・役割・意義・機能・作用など

資産はビジネスに必要なお金モノ・債権など、一言でいうと、たくさんあるとうれしいのが資産のイメージである

NHK高校講座 簿記「はじめよう 簿記!~資産・負債純資産~」 2016年3月30日放送

資産の注意点・注意事項

資産の評価
資産の過大評価(収入を生まない資産)

貸借対照表上では、多額の資産の額が計上されていても、実際には遊休資産や不良資産であれば、資産はお金を生み出すことはできない。

さらに、時価主義が採用されている有価証券とは異なり、土地有形固定資産評価においては、取得原価主義が採用されているため、いわゆる含み損の問題が生じる。

含み損(評価損)とは、時価主義を適用して算出した資産価値が簿価上の資産価値を下回っている場合の、その差額分をいう。なお、こうした含み損も計上できるようになるための会計手法が減損会計である。

資産に計上されない資産

これとは逆に、情報化社会であるにもかかわらず、知識・ノウハウについては貸借対照表にはまったく計上されることがない。

こうした知識、そして、時間は最大の資産(正確には、資本)といえるのではないかと思う。

資産の決算等における位置づけ等

資産の財務諸表における区分表示表示科目

貸借対照表 > 資産の部



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