企業―分類―持分会社―合同会社―特色
合同会社の特色・特徴
合同会社とは、持分会社の一種とされながらも、有限責任社員だけから構成される企業形態であるが、次のような特色がある。
会社企業としての一般的な特色・特徴
決算書の作成
合同会社も、会社企業として、決算書(=貸借対照表・損益計算書・社員資本等変動計算書)の作成は必要である。
なお、合同会社では、社員総会等の機関の設置や議事録の作成が義務づけられていない(後述)。
また、所有と経営が一致していて、社員(所有者)の利益を保護する必要がないので、そもそも株式会社におけるような決算書の定時株主総会への提出・承認に相当する手続きが要求されていない。
したがって、法的には議事録の作成は不要である(義務づけられていない)。
ただし、決算書を確定したことを証するための書面を、同意書ないしは決定書というかたちで残しておくべきではあろう。
合同会社の議事録 - 手続き・申請・届出・内容証明郵便など法律問題その他事務手順
持分会社としての一般的な特色・特徴
社員(所有者)が業務執行(経営)をする―所有と経営の一致
合同会社では、社員が業務執行をする権利を有している。
株式会社のように、取締役が業務執行をするという「所有と経営の分離」はない。
会社法
(業務の執行)
第五百九十条 社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
社員の任期
株式会社であれば、取締役等は最大10年という任期があるが、合同会社の社員には任期はない。
内部自治・定款自治―組合的内部関係
合同会社は、持分会社として、所有と経営が一致しており、所有者(出資者)をあえて法律で保護する必要がないため、株式会社的規律にではなく、組合的規律に服する。
具体的には、会社の内部関係については、法律の制約が少く、広く定款自治に委ねられており、簡易迅速で自由な会社運営が可能となる。
これを定款自治という。
条文上は、「定款に別段の定めがある場合を除き」と規定されている。
たとえば、出資額によらずに議決権や利益配分を決めることができる。
そして、定款に別段の定めがない場合、合同会社の意思決定は、社員全員で話し合いを行い、その過半数で決する。
会社法
(業務の執行)
第五百九十条 …
2 社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。
ただし、定款自体を変更する場合は、「定款に別段の定めがある場合を除き」、総社員の同意で決することになる。
会社法
(定款の変更)
第六百三十七条 持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができる。
自由な機関設計
合同会社では、株式会社の株主総会や取締役会等といった必要的設置機関はない。
したがって、その議事録の作成も義務づけられていない。
次のページを参照。
合同会社の機関 - 手続き・申請・届出・内容証明郵便など法律問題その他事務手順
一人会社の可否
しかし、合同会社についても、合名会社や合資会社と同じく、社員一人のみの会社の設立・存続が認められている。
合同会社としての固有の特色・特徴
有限責任
合同会社の最大の特色は、持分会社としてその内部関係は民法上に組合に類似しながらも、有限責任の特権が認められているということである。
会社法
(定款の記載又は記録事項)
第五百七十六条 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
…
4 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
パススルー課税の不適用
アメリカや日本など多くの国では、会社の利益に対して法人税が課せられたあと、株主に配当された配当金などにも所得税が課せられる。
しかし、株主配当金は税引き後の純利益から支払われるので、これは二重課税となる。
この点、たとえば、組合については、組合の利益には課税されず、その構成員たる組合員の所得にのみ課税される。
アメリカのLLCではこのパススルー課税が認められているが、日本の合同会社では認められておらず、他の企業形態と同様に法人税が課せられる。
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