準備金―準備金の額の減少（準備金の減少・資本準備金の減少・利益準備金の減少）

準備金の額の減少とは

準備金の額の減少の定義・意味など

準備金の額の減少とは、株式会社の準備金（法定準備金）の額を減少することをいう。

100パーセントの減少も可能である。

会社法
（準備金の額の減少）
第四百四十八条 　株式会社は、準備金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一　減少する準備金の額
二　減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額
三　準備金の額の減少がその効力を生ずる日

準備金の額の減少の分類・種類

準備金（法定準備金）には資本準備金と利益準備金がある（会社法445条4項）ので、準備金の額の減少には次の2つがあることになる。

資本準備金の額の減少（資本準備金の減少）
利益準備金の額の減少（利益準備金の減少）

準備金の額の減少の目的・役割・意義・機能・作用など

準備金の額の減少は次の目的のために行われる。

資本の欠損のてん補
資本金組入れ
剰余金組入れ
剰余金の配当

1．資本の欠損のてん補

準備金の額の減少は、資本金の額の減少とともに、資本の欠損のてん補のために行われる。

2．資本金組入れ

準備金の額の減少は、資本金組入れのためにも行われる。

3．剰余金組入れ

資本準備金は資本剰余金に、利益準備金は利益剰余金に組み入れることができる。

こうして剰余金にすることで、株式会社はこれを自由に使用できるようになる。

資本準備金（準備金）→ 資本剰余金
利益準備金（準備金）→ 利益剰余金

参考：野村證券 | 法定準備金（証券用語解説集） https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ho/h_junbikin.html

4．剰余金の配当

会社経営は黒字だが、事業の縮小整理などのために株主に会社財産の一部を払い戻すために、準備金の額の減少を剰余金の配当にあてる（同法446条4号）（旧商法の有償減資に相当）。

なお、会社法は、準備金の減少に伴う払戻しについても、剰余金の配当として位置づけている（会社法446条）。

会社法
第四百四十六条 　株式会社の剰余金の額は、第一号から第四号までに掲げる額の合計額から第五号から第七号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。
…
四　最終事業年度の末日後に準備金の額の減少をした場合における当該減少額（第四百四十八条第一項第二号の額を除く。）
…

準備金の額の減少の会計・簿記・経理上の取り扱い

会計処理方法

使用する勘定科目・記帳の仕方等

資本の欠損のてん補

繰越利益剰余金

資本準備金または利益準備金の額を減少して（資本準備金または利益準備金を取り崩して）欠損をてん補した場合は、資本準備金または利益準備金の減少分を資本準備金または利益準備金勘定の借方に記帳するとともに、繰越利益剰余金勘定の貸方に記帳する。

資本金組入れ

資本金

資本準備金または利益準備金の額を減少して（資本準備金または利益準備金を取り崩して）資本金に組み入れた場合は、資本準備金または利益準備金の減少分を資本準備金または利益準備金勘定の借方に記帳するとともに、資本金勘定の貸方に記帳する。

剰余金組入れ

その他資本剰余金・その他利益剰余金

資本準備金の額を減少して（資本準備金を取り崩して）剰余金に組み入れた場合はその他資本剰余金に、利益準備金の額を減少して（利益準備金を取り崩して）剰余金に組み入れた場合はその他利益剰余金に計上する。

企業会計基準第1号　自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
資本金及び資本準備金の額の減少によって生ずる剰余金
20. 資本金及び資本準備金の額の減少によって生ずる剰余金は、減少の法的効力が発生したとき（会社法第447条から第449条）に、その他資本剰余金に計上する。
利益準備金の額の減少によって生ずる剰余金
21. 利益準備金の額の減少によって生ずる剰余金は、減少の法的効力が発生したとき（会社法第448条及び第449条）に、その他利益剰余金（繰越利益剰余金）に計上する。