剰余金の配当
剰余金の配当とは
剰余金の配当の定義・意味など
剰余金の配当(じょうよきんのはいとう)とは、株式会社が、法人税等を控除したあとの分配可能額の範囲内で、株主に対して金銭等を交付することをいう。
会社法
(株主に対する剰余金の配当)
第四百五十三条 株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。
剰余金の配当の目的・役割・意義・機能・作用など
株主への利益の還元
ただし、会社法では、資本取引から発生した利益ではない剰余金についても配当できるものとし(後述)、また、赤字であっても、分配可能額の範囲内であれば剰余金の配当を行うことができる。
剰余金の配当の範囲・具体例
株主に対する金銭等の交付
株主に対する金銭等の交付が行われる場合としては、次のようなものがある。
上記はいずれも株主に対する金銭等の交付という点で共通しているので、会社法ではこれらすべてを剰余金の配当と考えて(会社法446条)、統一的に財源規制(→分配可能額)をかけている(同法461条。後述)。
なお、このように会社法では、資本金の額の減少分・資本準備金の額の減少分・自己株式の帳簿価額といった、損益取引ではなく資本取引から生じた剰余金についても配当できることとされていることに注意。
現物配当
会社法では従来争いのあった金銭以外の財産である現物配当についても明文で承認している(会社法454条4項)。
会社法
(剰余金の配当に関する事項の決定)
第四百五十四条 …
4 配当財産が金銭以外の財産であるときは、株式会社は、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めることができる。
剰余金の配当の規制
旧商法では、剰余金の配当は利益の配当と呼ばれていた。
そして、利益を配当するには、定時株主総会で、確定した決算に基づいて、当期の利益処分の内容を利益処分案(または損失処理案)というかたちで一括して決定するものとされていた。
しかし、会社法では、利益処分は決算の確定とは無関係となり、したがってこの利益処分案(または損失処理案)という制度は廃止された。
そして、旧商法における利益処分の項目も含め、純資産の部の計数(純資産の部の内訳)は、原則としていつでも株主総会の決議で(つまり、臨時株主総会でも)、個々に個別議案として自由に変えることができるようになった。
たとえば、配当を行う場合は利益処分案という議案ではなく、株主総会で「剰余金の配当に関する件」といった個別議案として決議されることになる。
つまり、これはいつでも株主総会を開いて配当できるようになったということを意味し、会社法では、株式会社は事業年度中、株主総会の決議があれば何度でも剰余金の配当を行うことができる(会社法454条)。
会社法
(剰余金の配当に関する事項の決定)
第四百五十四条 株式会社は、前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
…
さらに、中間配当として取締役会の決議により剰余金の配当を行うこともできる(会社法454条5項)。
また、前述したように、赤字であっても剰余金の配当は可能である。
ただし、剰余金の配当には財源規制がかけられている。
財源規制
分配可能額
剰余金の配当は、分配可能額がその上限とされている。
分配可能額は、単純化すれば、次の計算式により、算定・算出される(会社法461条)。
分配可能額 = その他資本剰余金 + その他利益剰余金 ー 自己株式
剰余金の配当の原資
上記計算式から、剰余金の配当の原資としては、次の2つがあることになる。
逆に言えば、次については、会社債権者保護の見地から、剰余金の配当の原資とすることはできない。
1.その他資本剰余金
その他資本剰余金は資本取引から生じた剰余金であり、本来は配当不可であるが、会社法ではその他利益剰余金とともに剰余金の配当の原資とされている。
2.その他利益剰余金(繰越利益剰余金)
その他利益剰余金(繰越利益剰余金)を原資にできるということは、当期の利益だけではなく、過去の利益の留保額(いわゆる内部留保)も原資にできることを意味する。
剰余金の配当の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
未払配当金
剰余金の配当は株主総会(利益配当の場合)または取締役会(中間配当の場合)で決議されるが、実際に配当金が支払われるのは後日となるため、決議時は未払配当金勘定(負債)で処理をする。
取引の具体例と仕訳の仕方
利益配当・中間配当
株主総会の決議により、繰越利益剰余金を原資として1000万円の剰余金の配当を決議した。また、それに伴い、その1/10を利益準備金に繰り入れた。
繰越利益剰余金 | 1100万円 | 未払配当金 | 1000万円 |
利益準備金 | 100万円 |
剰余金の配当の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、剰余金の配当は不課税取引として消費税の課税対象外である。
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