簿記の分類1―複式簿記―①取引の二重性―借方 - [経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

勘定科目を体系的に分類し、仕訳の仕方等を解説した会計の実務的マニュアルです。



簿記の分類1―複式簿記―①取引の二重性―借方

借方とは 【debt; debit

借方の定義・意味など

借方(かりかた)とは、複式簿記における帳簿の左側の記入欄をいう。

参考:岩波書店 『広辞苑 第六版』

借方と関係する概念

反対概念・対概念
貸方

借方の内容

複式簿記の左右のルールは、資産負債資本収益費用という5つのグループごとに決まっている。

そのうち、借方については、資産の増加、負債資本の減少収益の減少、費用の増加を記録する。

借方貸方
資産 増加 減少
負債 減少 増加
資本 減少 増加
収益 減少 増加
費用 増加 減少

このルールは覚えておく必要があるが、覚え方のコツとして、まず、資産の左側(借方)が増加と覚えておくと、あとはこの関係で推測することができる。

村形聡 『スラスラ読める 簿記の本』 新星出版社、2004年、68項。

借方の目的・役割・意義・機能・作用など

複式簿記の目的は、1会計期間における利益資本の増加部分(正確には自己資本の増加部分)を、投資の成果である利益とそれを生み出した資本とに区別して記録し(→資本利益区別の原則)、報告すること、すなわち、損益計算書による利益計算期間損益計算にある。

したがって、複式簿記で記録すべきものは、まずは資本の増減である。

また、貸借対照表では資産から負債を差し引くことでも資本が計算されるしくみになっているので、資本の増減だけでなく、資産負債の増減も記録する必要がある。

ただし、これだけでは資本の増加部分(いくら資本が増えたのか)はわかっても、どうやって資本が増えたのか、その理由はわからない。

外部の利害関係者は資本が増えた理由も知りたいので、貸借対照表資本の状態(政状態)だけを報告しても不十分である。

以上、参考:村形聡 『スラスラ読める 簿記の本』 新星出版社、2004年、41項。

そこで、複式簿記では、1つの取引をつねに結果とその原因の2つの側面に分けて考え(→取引の二重性)、資本等(=ストック)とお金の流れ(=フロー)を統合的に管理する。

つまり、まずは資本資産負債の増減に着目するが、次にその増減原因についても同時に記録するということである。

たとえば、現金などの資産ストックが増えたら、その原因となったお金の流れ=フロー収益費用)は何か(つまり、資産が増えた原因は何か)についても考えるということである。

ただし、ストックの増減の原因はフローとは限らない。別のストックの増減が原因となることもある。たとえば、借をして現金が増えたのであれば、現金というストックの増加の原因は、借という負債の増加になる。

したがって、実際に取引を記録するうえでも、1つ1つの取引について、これをストックの増減という結果とその原因の2つの要素に分解する。

そして、この分解した2つの要素を、2行にわたって記録するのではなく、それぞれ左右に分けて1行で記録する。

なお、この記録する作業を仕訳という。仕訳で記録する主な内容は取引の内容と額である。このうち取引の内容については、個別具体的な取引内容ではなく、勘定科目と呼ばれる取引のカテゴリ(取引を分類したもの)を記載する。また、額については、そもそも1つの取引を2つに分解したにすぎないので左側も右側も同一額となる(→貸借平均の原則)。

複式簿記では、このうち左側のことを借方と呼び、右側のことを貸方と呼ぶ。

借方と貸方の位置の覚え方としては、「かり」の「り」、「かし」の「し」の方向で覚えるとよい。

借方の歴史・沿革・由来・起源・経緯など

「借方」と「貸方」という用語自体には特別な意味はなく、単に左と右を表しているだけのものとよく説明されている。

しかし、まったく意味がなかったというわけではなく、歴史的には、借方はお金を借りた人のほう=自分のほう、貸方お金を貸した人のほう=他人のほうを意味するものであった。

山田真哉 『世界一感動する会計の本です【簿記経理入門】』 日本実業出版社、2004年、118項。

つまり、仕訳では、自分の側だけではなく、取引の相手の側の、2つの情報を記録しているわけである(→取引の二重性)。

また、貸借対照表でいえば、その借方には自分の側の資の使い方(資運用)を、そして、貸方にはその資の出所(資産調達)が表現されるということになる。

なお、勘定科目は、複式簿記の発展過程からは①人名勘定と非人名勘定(②実在勘定名目勘定)の3つに大別されるが、歴史的には人名勘定の表現は、借方が「支払うべし」「与えるべし」か「借方である」、貸方が「受け取るべし」「持つべし」か「貸方である」に徐々に統一されていったという。

人名勘定は、1211年のフィレンツェ一銀行家の帳簿に見られるように、最初は非定型的な文章で表現され、銭貸借の事実関係、返済期日、利子条項、利率保証人、立会人等を記載事項として、一定の文章形式で記録されていた。そうした文章形式は13世紀末まで続くが、泉谷によれば、勘定形式の改善や簡略化が進まなかったのは、人名勘定の証拠機能・証拠保全機能について社会からの信頼性を獲得することが先決で、形式の簡略化はまだ認められる状況にはなかったとされる。
しかしそうした過程を経て、人名勘定の改善、簡略化が行われるようになり、次第に定型的なものとなっていく。当初の債権債務を表わす表現は、借方が「支払うべし」「与えるべし」か「借方である」に、貸方が「受け取るべし」「持つべし」か「貸方である」に徐々に統一されていった。額も文章中にあったものを額欄を設けて別に記入するようになった。また勘定形式も、債権債務をページの前半に決済を後半に書いたり、債権をページの前半に債務を後半に書いたりする上下連続形式から、次第に左右の見開きページに書く左右対称形式に発展し、やがて同じページを左右に二分する形式へと統一されていった。そしてさらに文章表現が省略され、借方貸方が記号化されるに至り、左右二分方式がT字型形式となることで、今日のT字型勘定形式が形成されたと考えられる。

小栗崇資 「複式簿記の構造と会計 ― 2つの二重性の視座から ―」 駒澤大学経済学論集第42巻第1号、56項。



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