企業会計原則―一般原則―資本利益区別の原則
資本利益区別の原則とは
資本利益区別の原則の定義・意味など
資本利益区別の原則(しほんりえきくべつのげんそく)とは、事業の元手としての資本と事業のもうけとしての利益を明瞭に区別する原則をいう。
企業会計原則
第一 一般原則
…
三 資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。
資本利益区別の原則の位置づけ・体系(上位概念等)
企業会計原則の一般原則
資本利益区別の原則は企業会計原則の一般原則の第三原則になる。
企業会計原則の一般原則は次の7つの原則からなる。
なお、企業会計原則注解1で、一般原則ではないが、それに準ずる原則として、さらに「重要性の原則」があげられている。
資本利益区別の原則の理論的根拠
継続企業の前提
1回の航海のためにお金を集めて貿易で稼ぎ、帰ってきたら解散して、お金を山分けする
(『スラスラ読める簿記の本』(村形聡著)より引用)のではなく、将来にわたって事業を継続する継続企業においては、出資を払い戻す(出資の払戻し)のではなく、配当金というかたちで定期的に利益を分配する。
このように継続企業が前提とされている場合(→継続企業の前提)、利益計算を行うためには、①人為的に期間を区切ったうえ(→会計期間)②資本と資本の増加部分である利益を区別し(→資本利益区別の原則)、そのうえでその期間における利益(=期間損益)を計算する(→期間損益計算。決算)よりほかはない。
資本利益区別の原則の分類・種類
資本利益区別の原則には、次の2つの区別がある。
1.資本取引と損益取引の区別
資本と利益それぞれを生み出す取引の段階で区別することが要請される。
2.資本剰余金と利益剰余金の区別
資本と利益がストックとして蓄積されている段階で区別することが要請される。
資本利益区別の原則の目的・役割・意義・機能・作用など
適正な期間損益計算
性格が異なる資本取引と損益取引を区別することは、適正な期間損益計算のために不可欠である。
たとえば、増資のような資本取引を行った場合、これにより増加した資本の金額までも利益として計上すると、正しい期間損益計算ができなくなる。
つまり、資本を利益として食いつぶすタコ配や、逆に、利益隠しといった不健全な経理操作を防ぎ、企業財務の健全性を保つために要請される原則である。
企業の財政状態と経営成績の適正な表示
資本剰余金と利益剰余金が混同されると、企業の財政状態と経営成績が適正に表示されない。
企業会計原則注解
〔注2〕資本取引と損益取引との区別について(一般原則三)
(1) 資本剰余金は、資本取引から生じた剰余金であり、利益剰余金は損益取引から生じた剰余金、すなわち利益の留保額であるから、両者が混同されると、企業の財政状態及び経営成績が適正に示されないことになる。
さらに、税法上もこの区別は重要となる。
けだし、法人税は利益(正確には所得)に対して課税するものであり、元手に対しては非課税(つまり、資本課税ではない)だからである。
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