経過勘定項目―費用の繰延
費用の繰延とは
費用の繰延の定義・意味など
費用の繰延(ひようのくりのべ)とは、当期に費用として支払った金額に次期以降の期間に対する費用が含まれている場合において費用法で会計処理をするとき、経過勘定項目(前払費用。資産)などを用いて当該費用を当期の費用から控除して次期以降に繰り延べる会計処理をいう。
費用の繰延の目的・役割・意義・機能・作用など
発生主義
費用の繰延は発生主義の現れである。
費用の繰延の位置づけ・体系(上位概念等)
経過勘定項目
費用は発生したものを、収益は実現したものを損益として計上する必要がある。
しかし、期中の取引については、費用は支払ったときにその支払額を、収益は受け取ったときにその受取額をそれぞれの勘定に記帳する。
したがって、その支払額や受取額がそのまま当期の費用・収益の金額になるとは限らない。
当期の支払額・受取額のうちに、次期以降の費用・収益となるべき金額が含まれていたり、逆に、当期の費用・収益となるべき金額であるにもかかわらず、その支払いや受け取りが次期以降に行われる場合があるからである。
そこで、費用収益対応の原則から(期間損益計算の適正化のために)、費用・収益を見越して計上したり、次期以降の費用・収益として繰り延べたりする処理が行われる。
企業会計原則の「〔注5〕経過勘定項目について」では、次の4つの経過勘定項目が規定されている。
経経過勘定項目 | 資産・負債の別 | 見越・繰延の別 |
---|---|---|
前払費用 | 資産 | 繰延 |
未払費用 | 負債 | 見越 |
前受収益 | 負債 | 繰延 |
未収収益 | 資産 | 見越 |
費用の繰延と関係する概念
類似概念・類義語
減価償却
両者ともに費用収益対応の原則にもとづくが、費用の繰延は本来であれば費用処理すべきものを経過勘定項目を用いて資産計上したものについて行われるのに対して、減価償却は固定資産(有形固定資産(土地・建設仮勘定を除く)と無形固定資産)について行われる、という違いがある。
繰延資産の償却
費用の繰延と似た概念に繰延資産の償却がある。
両者とも本来であれば費用処理すべきものを、費用収益対応の原則にもとづき当期の費用から次期以降の費用を控除するために資産計上する会計処理であり、その違いは役務(サービス)の提供を受け終わっているか否かにすぎない。
つまり、費用の繰延はいまだ提供されていない役務に対して支払われた費用について行われるものであるのに対して、繰延資産の償却は代価の支払が完了して役務の提供も受けている費用について行われる、という違いである。
また、繰延資産として資産計上できるものは創立費・開業費・開発費・株式交付費・社債発行費・新株予約権発行費といった一定の費用に限られているという違いもある。
会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
期末(決算時)等
決算整理仕訳
当期の費用から控除して次期以降の費用とするため、決算時に前払費用勘定を用いて資産として処理する。
具体的には、次期以降の期間に対する費用を費用勘定の貸方に記帳する(←当期の費用から控除)とともに、前払費用勘定(資産)の借方に記帳する(←資産として費用を次期以降に繰り延べる)。
なお、具体的な前払費用勘定としては、前払地代家賃・前払保険料・前払利息勘定などがある。
翌期首
再振替仕訳
翌期首に、資産として次期以降に繰り延べられた金額を費用に戻すために再振替仕訳をする。
再振替仕訳では、決算で行った仕訳の反対仕訳(逆仕訳)を行う。
具体的には、費用勘定の借方に記帳するとともに、前払費用勘定(資産)の貸方に記帳する。
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