貸借対照表―負債―流動負債―未払費用(未払経費)
未払費用とは
未払費用の定義・意味など
未払費用(みばらいひよう)とは、貸借対照表の流動負債に属する表示科目として、一定の契約にしたがって継続して役務(サービス)の提供を受ける場合、すでに提供された役務に対して、いまだ代金を支払っていないものをいう。なお、勘定科目として用いることもできる。
企業会計原則
〔注5〕経過勘定項目について
(3) 未払費用
未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、既に提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないものをいう。
法人・個人の別
法人・個人
未払費用の会計基準と制度会計
企業会計原則・会社計算規則・財務諸表等規則
未払費用については、企業会計原則や会社計算規則・財務諸表等規則で定められている。
未払費用の別名・別称・通称など
未払経費
未払費用は未払経費(みばらいけいひ)ともいう。
未払費用の位置づけ・体系(上位概念等)
貸借対照表の表示科目
通常、個別的に未払地代家賃・未払保険料・未払利息などの勘定科目(負債)で処理されるが、貸借対照表ではこれらが未払費用というひとつの表示科目にまとめられる。
経過勘定項目
経過勘定項目とは、費用収益対応の原則から(後述)、現金の収支の時期と損益計算上の損益認識の時期のずれを処理するための勘定科目(貸借対照表科目)をいう。
この経過勘定項目には、未払費用も含めて、次の4つがある。
未払費用の目的・役割・意義・機能・作用など
費用収益対応の原則
費用の見越
当期の費用として計上すべきであるが、次期以降にその支払を行うため当期の費用として計上されない場合(未払いの場合)がある。
この場合、費用収益対応の原則から、決算整理事項のひとつとして、当期に計上すべき費用を、次期以降に支払うことを見越して当期の費用に計上する会計処理=費用の見越が行われる。
未払地代家賃などの未払費用勘定はこの費用の見越で用いられる負債勘定である。
参考:『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、251項。
他の勘定科目との関係
未払金
未払費用と未払金との違い
取引の継続性・債務の確定の有無
未払費用とは、経過勘定項目のひとつであるが、企業会計原則では、次のように定義されている。
企業会計原則
〔注5〕経過勘定項目について
(3) 未払費用
未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供された役務に対して、いまだその対価の支払が終らないものをいう。
したがって、このような役務に対する対価は、時間の経過に伴いすでに当期の費用として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。
また、未払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による未払金とは区別しなければならない。
つまり、会計上の原則からは、取引の継続性により、未払費用と未払金を区別する。
また、税法上、確定債務であれば経費にできる(必要経費算入または損金算入できる)(所得税法37条・法人税法22条3項2号)(→債務確定主義)ので、債務の確定の有無(支払期日の到来の有無)により、未払費用と未払金を区別する場合もある。
参考:中野智之 『最新版 仕訳がすぐわかる 経理・勘定科目事典』 ナツメ社、2007年、128項など。
ただし、税務上は債務が確定しているかどうかが重要であって、両者は特に区別されていない。
したがって、実務では、未払いの費用はすべて未払費用勘定で処理するようなことも行われている。
ただし、この処理は本来は適切な処理とはいえない。
未払費用の範囲・具体例
未払費用の範囲
未払費用は、単発の経費ではなく、契約によって毎月発生する経費(継続的な役務提供)に使用するのが原則である。
なお、いったんは未払費用として計上したものの、その支払期日をすぎても未払いのものがある場合は未払金に振り替える。
確定債務
前述したように、税務上(したがって、実務上)では、未払費用と未払金の区別より、債務が確定しているかどうかが重要となる。
つまり、債務が確定しているのであれば、必要経費算入または損金算入できるという結果に違いはない。
未払費用の具体例
未払費用として処理をするものとしては、具体的には、次のようなものがある。
租税公課の未納税額
租税公課を損金経理により未払計上する場合、必要経費または損金に算入できる租税公課の未納税額は未払税金勘定で処理する。
ただし、未払税金の代わりにより一般的な勘定科目である未払金勘定で処理することもある。
また、先述したように、税務上、未払金と未払費用は特に区別されていないので、租税公課の未納税額についても未払費用勘定で処理することが考えられる。
未払費用の決算等における位置づけ等
未払費用の財務諸表における区分表示と表示科目
区分表示
流動負債
未払費用は、1年基準(ワン・イヤー・ルール)の適用を受け、通常は流動負債に属するものとして表示する。
企業会計原則注解
[注16] 流動資産又は流動負債と固定資産又は固定負債とを区別する基準について
…、未払費用…は、流動負債に属するものとする。
会社計算規則
(負債の部の区分)
第七十五条 …
2 次の各号に掲げる負債は、当該各号に定めるものに属するものとする。
一 次に掲げる負債 流動負債
…
ヘ 未払費用
表示科目
未払費用
仕訳上の勘定科目(未払地代家賃・未払保険料・未払利息など)をそのまま貸借対照表の表示科目として用いるのではなく、未払費用としてまとめて表示する。
これは外部へ報告するにはそのほうがわかりやすいからである。
このように仕訳上の勘定科目と貸借対照表上の表示科目とが異なるので注意。
未払費用の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
期末(決算時)等
決算整理仕訳
前述したように、当期の費用として計上すべきであるが、次期以降にその支払を行うため当期の費用として計上されない場合、費用収益対応の原則から、当期に計上すべき費用を、次期以降に支払うことを見越して当期の費用に計上する会計処理(費用の見越)を行う。
具体的には、該当する費用の勘定の借方に記帳して当期の損益計算に計上するとともに、未払地代家賃・未払保険料・未払利息などの未収費用勘定(負債)の貸方に記帳して貸借対照表の負債の部に計上する。
企業会計原則
(3) 未払費用
…、このような役務に対する対価は、時間の経過に伴い既に当期の費用として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。
翌期首
再振替仕訳
翌期首には、負債として見越された金額を費用から控除する会計処理(再振替仕訳)を行う。
具体的には、費用の勘定の貸方に記帳するとともに、未払費用勘定(負債)の借方に記帳する。
例外
重要性の原則
重要性の原則から、重要性の乏しいものについては、継続適用を前提にして、負債に計上しなくてもよいとされている(つまり、わざわざ未払費用に振り替える必要はない)。
企業会計原則
重要性の原則は、財務諸表の表示に関しても適用される。
重要性の原則の適用例としては、次のようなものがある。
…
(2) 前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。
実務上の取り扱い
未払費用勘定
前述したとおり、通常は個別的に未払地代家賃・未払保険料・未払利息などの勘定科目で処理をし、貸借対照表でこれらが未未払費用というひとつの表示科目にまとめられる。
しかし、未払地代家賃勘定などで個別的に処理をするのはあくまで内部的な管理のためにすぎない。
したがって、これらを貸借対照表にまとめあげることが面倒であれば、最初から未払費用勘定で処理をしてもよい。
ただし、この場合、補助科目を使って未払地代家賃・未払保険料・未払利息などを区別して管理する。
取引の具体例と仕訳の仕方
4月1日に銀行から10万円を借り入れた。利率は年4%で、利払日は9月末日と3月末日である。なお、会計期間は1月1日から12月31日の1年間である。
以下、『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、252項の仕訳の具体例を参考。
期中
9月30日に半年分の利息2000円(100,000円✕4%✕6カ月/12カ月)で支払った。
支払利息 | 2,000 | 普通預金 | 2,000 |
期末(決算時)
期末(12月31日)に決算整理仕訳のひとつとして当期に計上すべき費用1,000円(100,000円✕4%✕3カ月/12カ月)を見越して当期の費用に計上した。
支払利息 | 1,000 | 未払利息(または未払費用) | 1,000 |
翌期首
翌期首(1月1日)に負債として見越された金額を費用から控除するため、再振替仕訳を行った。
未払利息(または未払費用) | 1,000 | 支払利息 | 1,000 |
未払費用の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、未払費用は不課税取引として消費税の課税対象外である。
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