[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

勘定科目を体系的に分類し、仕訳の仕方等を解説した会計の実務的マニュアルです。


社債発行費(社債発行費等)


社債発行費とは 【bond expense / bond issue cost

社債発行費の定義・意味など

社債発行費(しゃさいはっこうひ)とは、社債発行に要した諸費用費用計上する費用勘定、または繰延資産に計上する資産勘定をいう。

法人税法施行令
繰延資産の範囲)
第十四条  …
 社債等発行費(社債券等の印刷費その他債券新株予約権を含む。)の発行のために支出する費用をいう。)

法人・個人の別

法人

社債発行費は法人特有の勘定科目である。

社債発行費の別名・別称・通称など

社債発行費等

繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第19号)では、社債発行費は新株予約権発行費も含めて社債発行費等と呼ばれている。

新株予約権発行費は社債発行費と同様の会計処理することができるものとされている。

社債発行費の範囲・具体例

社債発行費として処理をするものとしては、具体的には、次のようなものがある。

企業会計基準委員会繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第19号

社債発行費と関係する概念

類似概念・類義語
株式交付費

株式交付費と社債発行費はともに資金調達のための支出という点で共通するが、前者が償還期限のない無期限の資金調達のための支出であるのに対し、後者は償還期限のある資金調達のための支出であるという点で異なる。

社債発行費に関する会計基準制度会計

会計基準
繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い

繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第19号)が社債発行費の会計処理について規定している。

社債発行費の位置づけ・体系(上位概念等)

繰延資産

繰延資産は、会計上の繰延資産税法上の繰延資産とがある。

  1. 会計上の繰延資産会社法上の繰延資産
  2. 税法上の繰延資産
    1. 所得税法上の繰延資産
    2. 法人税法上の繰延資産

なお、会計上の繰延資産の範囲と税法上の繰延資産の範囲は異なる。

税法上の繰延資産から、会計上の繰延資産に該当するものを除いたものが税法独自の繰延資産ということになる。

社債発行費の決算等における位置づけ等

社債発行費の財務諸表における区分表示表示科目

損益計算書経常損益の部 > 営業外損益の部 > 営業外費用 > 社債発行費

または

貸借対照表資産繰延資産 > 社債発行費

区分表示
営業外費用または繰延資産

社債発行費は費用計上した場合には営業外費用に属するものとして、また、資産計上した場合には繰延資産に属するものとしてそれぞれ表示する(後述)。

企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
四 …
(一)資 産

C 創立費開業費新株発行費、社債発行費、社債発行差金開発費試験研究費及び建設利息は、繰延資産に属するものとする。

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
繰延資産の範囲)
第三十六条  創立費開業費株式交付費、社債発行費及び開発費は、繰延資産に属するものとする。

表示方法
直説法(直接控除法

社債発行費を償却の対象となる繰延資産に計上した場合、繰延資産直接法直接控除法)しか認められていないので、有形固定資産とは異なり、帳簿価額だけを表示し、また、減価償却累計額の注記も不要である。

企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
四 …
(一)資 産

C 創立費開業費新株発行費、社債発行費、社債発行差金開発費試験研究費及び建設利息は、繰延資産に属するものとする。これらの資産については、償却額を控除した未償却残高を記載する。

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
第三十八条  各繰延資産に対する償却累計額は、当該繰延資産額から直接控除し、その控除残高を各繰延資産額として表示しなければならない。

社債発行費の会計簿記経理上の取り扱い

会計処理方法

使用する勘定科目・記帳の仕方等
社債発行費

社債発行に要した諸費用は、原則として、支出時に社債発行費勘定費用)を用いて費用計上したうえ、営業外費用として処理する。

ただし、同じく社債発行費勘定資産)を用いて繰延資産に計上することもできる。

実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い
(2) 社債発行費等の会計処理
社債発行費は、原則として、支出時に費用営業外費用)として処理する。ただし、社債発行費を繰延資産に計上することができる。

繰延資産の計上

繰延資産とした場合は、期末決算時)に決算整理のひとつとして繰延資産の償却を行う必要がある。

すなわち、その償却額を社債発行費償却または繰延資産償却費勘定営業外費用)の借方に記帳して費用計上するとともに社債発行費勘定貸方に記入して減少させる(振替仕訳)。

なお、e-Taxの確定申告等作成コーナーで確定申告書を作成する場合は、減価償却費として計上する。

ただし、この場合、e-Taxの確定申告等作成コーナーの決算書・収支内訳書を作成するページが任意償却に対応していないため、内訳書(「減価償却費の計算」)は別途会計ソフトなどで作成する必要がある。

本来は営業外費用として計上すべきであるが、e-Taxヘルプデスクでは、繰延資産償却額についても減価償却費として計上するよう案内している。
もちろん、原則どおり、繰延資産償却といった項目を新たに設定して処理をしてもよい。

e-Taxや確定申告等作成コーナーについては、次のサイトのページなどを参照。

e-Tax - 手続き・申請・届出・内容証明郵便など法律問題その他事務手順

確定申告―手続き―必要書類―確定申告書の書き方・作成方法・作り方―確定申告等作成コーナー - 税金―所得税法

償却方法・償却期間)

利息法または定額法

繰延資産の償却方法と償却期間については、会計上は企業会計基準委員会が定めた「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第19号)が基準となる。

これによれば、社債発行費は社債の償還期間にわたり、利息法により償却をしなければならない。

ただし、償却方法については、継続適用を条件として、定額法を採用することもできる。

実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い
(2) 社債発行費等の会計処理
…社債発行費を繰延資産に計上することができる。この場合には、社債の償還までの期間にわたり利息法により償却をしなければならない。なお、償却方法については、継続適用を条件として、定額法を採用することができる。

しかし、法上(法人税法)は任意償却とされている(法人税法32条)。

任意償却による場合には、支出の年に全額償却してもよく、あるいは、まったく償却しなくてもよい。

また、いつでも償却費として必要経費または損金に算入することもできる。

(記帳方法)

直接法直接控除法

社債発行費など繰延資産の記帳方法は直接法直接控除法)によるものとされている。

企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
四 …
(一)資 産

C 創立費開業費新株発行費、社債発行費、社債発行差金開発費試験研究費及び建設利息は、繰延資産に属するものとする。これらの資産については、償却額を控除した未償却残高を記載する。

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
第三十八条  各繰延資産に対する償却累計額は、当該繰延資産額から直接控除し、その控除残高を各繰延資産額として表示しなければならない。

取引の具体例と仕訳の仕方

期中
繰延資産資産計上したとき

取引

社債の発行のための費用(広告費用・印刷費用など)30万円を現金で支払い、繰延資産に計上した。

仕訳

借方科目
貸方科目
社債発行費 30万 現金 30万

期末決算時)
繰延資産の償却

定額法で償却するとき)

取引

決算にあたり、社債発行費を3年間で均等償却した。

仕訳

借方科目
貸方科目
繰延資産償却費(または社債発行費償却 10万 社債発行費 10万

社債発行費の務・法・制上の取り扱い

消費税の課・非課・免・不課(対象外)の区分

課税取引

消費税法上、社債発行費は課税取引に該当し、仕入税額控除の対象となる。



現在のページのサイトにおける位置づけ

 現在のページが属するカテゴリ内のページ一覧[全 12 ページ]

  1. 創立費
  2. 開業費
  3. 開業費―範囲・具体例
  4. 開業費―会計処理
  5. 試験研究費
  6. 開発費
  7. 新株発行費
  8. 株式交付費
  9. 社債発行費(社債発行費等)
  10. 社債発行差金
  11. 新株予約権発行費
  12. 長期前払費用(税法上の繰延資産)

 現在のページが属するカテゴリのサイトにおける位置づけ



プライバシーポリシー