創立費
創立費とは 【inaugural expenses / promotion expense】
創立費の定義・意味など
創立費(そうりつひ)とは、法人の設立登記までに法人の設立のために支出する諸費用を費用計上する費用勘定、または繰延資産に計上する資産勘定をいう。
法人税法施行令
(繰延資産の範囲)
第十四条 …
一 創立費(発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。)
法人・個人の別
法人
創立費は法人特有の勘定科目である。
創立費の範囲・具体例
会計上の範囲
創立費として処理をするものとしては、具体的には、たとえば、次のようなものがある。
- 発起人が受ける報酬で定款に記載して創立総会の承認を受けた金額
- 定款作成費用
- その他諸規則作成費用
- 設立時の登記費用
- 株式募集のための広告費
- 株券・目論見書などの印刷費
- 創立事務所の賃借料
- 設立事務に使用する使用人の給料
- 金融機関の取扱手数料
- 証券会社の取扱手数料
- 創立総会に関する費用
- その他会社設立事務に関する必要な費用
参考:企業会計基準委員会「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第19号)
税法上の範囲
税法上は、会計上より創立費の範囲が広く、会社設立のために通常必要と認められる支出に限り、その負担が定款に定められていない場合、あるいは定款に規定されている額を超えて支出した場合であっても、設立会社の負担とすることが認められており、実務上もこれにしたがっている。
法人税基本通達
(定款記載を欠く設立費用)
8-1-1 法人がその設立のために通常必要と認められる費用を支出した場合において、当該費用を当該法人の負担とすべきことがその定款等で定められていないときであっても、当該費用は令第14条第1項第1号《創立費》に規定する「法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきもの」に該当するものとする。
創立費の位置づけ・体系(上位概念等)
繰延資産
創立費は繰延資産のひとつである。
なお、会計上の繰延資産の範囲と税法上の繰延資産の範囲は異なる。
税法上の繰延資産から、会計上の繰延資産に該当するものを除いたものが税法独自の繰延資産ということになる。
創立費の決算等における位置づけ等
創立費の財務諸表における区分表示と表示科目
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業外損益の部 > 営業外費用 > 創立費
または
区分表示
営業外費用または繰延資産
創立費は費用計上した場合には営業外費用に属するものとして、また、資産計上した場合には繰延資産に属するものとしてそれぞれ表示する(後述)。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
四 …
(一)資 産
…
C 創立費、開業費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、開発費、試験研究費及び建設利息は、繰延資産に属するものとする。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(繰延資産の範囲)
第三十六条 創立費、開業費、株式交付費、社債発行費及び開発費は、繰延資産に属するものとする。
表示方法
直説法(直接控除法)
創立費を償却の対象となる繰延資産に計上した場合、繰延資産は直接法(直接控除法)しか認められていないので、有形固定資産とは異なり、帳簿価額だけを表示し、また、減価償却累計額の注記も不要である。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
四 …
(一)資 産
…
C 創立費、開業費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、開発費、試験研究費及び建設利息は、繰延資産に属するものとする。これらの資産については、償却額を控除した未償却残高を記載する。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
第三十八条 各繰延資産に対する償却累計額は、当該繰延資産の金額から直接控除し、その控除残高を各繰延資産の金額として表示しなければならない。
創立費の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
創立費
法人の設立のために支出する諸費用は、株主との間の資本取引によって発生するものではないことから、原則として、支出時に創立費勘定(費用)を用いて費用計上したうえ、営業外費用として処理する。
ただし、同じく創立費勘定(資産)を用いて繰延資産に計上することもできる。
実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い
(3) 創立費の会計処理
創立費は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理する。ただし、創立費を繰延資産に計上することができる。
なお、会社は設立により資金を調達できたことで設立以後数期にわたり収益を上げることができるので、繰延資産として取り扱われるほうが望ましいといえる。
繰延資産の計上
資産計上の日付
創立費勘定で繰延資産に計上する場合、帳簿上の日付は設立の日付(会社設立の登記申請日)とする。
繰延資産の償却
繰延資産とした場合は、期末(決算時)に決算整理のひとつとして繰延資産の償却を行う必要がある。
すなわち、その償却額を創立費償却または繰延資産償却費勘定(営業外費用)の借方に記帳して費用計上するとともに創立費勘定の貸方に記入して減少させる(振替仕訳)。
なお、e-Taxの確定申告等作成コーナーで確定申告書を作成する場合は、減価償却費として計上する。
ただし、この場合、e-Taxの確定申告等作成コーナーの決算書・収支内訳書を作成するページが任意償却に対応していないため、内訳書(「減価償却費の計算」)は別途会計ソフトなどで作成する必要がある。
本来は営業外費用として計上すべきであるが、e-Taxヘルプデスクでは、繰延資産償却額についても減価償却費として計上するよう案内している。
もちろん、原則どおり、繰延資産償却といった項目を新たに設定して処理をしてもよい。
e-Taxや確定申告等作成コーナーについては、次のサイトのページなどを参照。
e-Tax - 手続き・申請・届出・内容証明郵便など法律問題その他事務手順
確定申告―手続き―必要書類―確定申告書の書き方・作成方法・作り方―確定申告等作成コーナー - 税金―所得税法
(償却方法・償却期間)
繰延資産の償却方法と償却期間については、会計上は企業会計基準委員会が定めた「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第19号)が基準となる。
これによれば、創立費は会社の成立のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をしなければならないとされている。
実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い
(3) 創立費の会計処理
…、創立費を繰延資産に計上することができる。この場合には、会社の成立のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をしなければならない。
しかし、税法上(法人税法)は任意償却とされている(法人税法32条)。
任意償却による場合には、支出の年に全額償却してもよく、あるいは、まったく償却しなくてもよい。
また、いつでも償却費として必要経費または損金に算入することもできる。
(記帳方法)
創立費など繰延資産の記帳方法は直接法(直接控除法)によるものとされている。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
四 …
(一)資 産
…
C 創立費、開業費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、開発費、試験研究費及び建設利息は、繰延資産に属するものとする。これらの資産については、償却額を控除した未償却残高を記載する。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
第三十八条 各繰延資産に対する償却累計額は、当該繰延資産の金額から直接控除し、その控除残高を各繰延資産の金額として表示しなければならない。
取引の具体例と仕訳の仕方
期中
繰延資産に資産計上したとき
会社設立にあたり、定款作成費用・設立時の登記費用(司法書士報酬・設立登記の登録免許税など)など50万円を現金で支払い、繰延資産に計上した。
創立費 | 50万 | 現金 | 50万 |
期末(決算時)
繰延資産の償却
(定額法で償却するとき)
決算にあたり、当期分の償却費10万円を計上した。
繰延資産償却費(または創立費償却) | 10万 | 創立費 | 10万 |
(一括償却するとき)
決算で、創立費50万円を一括して償却する。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延資産償却費(または開業費償却) | 50万 | 創立費 | 50万 |
創立費の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
課税取引
消費税法上、創立費は課税取引に該当し、仕入税額控除の対象となる。
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