株式―自己株式―取得(自己株式の取得)
自己株式の取得とは
自己株式の取得の定義・意味など
自己株式の取得(じこかぶしきのしょぶん)とは、当該株式会社の株式を取得することをいう。
会社法
第百五十五条 株式会社は、次に掲げる場合に限り、当該株式会社の株式を取得することができる。
…
自己株式の取得の歴史・沿革・由来・起源・経緯など
自己株式の取得は、資本維持の原則や株主平等の原則から原則として禁止されていた。
しかし、2001年(平成13年)の商法改正により、原則として認められた(会社法155条以下)。
自己株式の取得の法的性格・性質
資本取引
会社法では、自己株式の取得は、株主との損益取引ではなく、資本取引と考えられている。
自己株式の取得の分類・種類
自己株式の取得は次の2つに大別できる。
- 自己株式の有償取得
- 自己株式の無償取得
自己株式の取得に関する会計基準と制度会計
自己株式の取得に関する会計処理等を定めた会計基準や制度会計としては、次のようなものがある。
会計基準
制度会計
会社法会計
自己株式の取得の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
自己株式の有償取得
自己株式の取得は出資の払戻し(会社財産の払戻し)としての性格を有する。
そのため、自己株式を他の株式会社が発行した株式(=有価証券)と同様の扱いをすると、債権者や投資家などの企業の財政状態に関する適正な判断を損ねる可能性があり、これとは異なる取り扱いが必要になる。
そこで、会計上(税務上も)、自己株式は資産ではなく、純資産の部の株主資本の控除項目として扱われ、株主資本のマイナス勘定としての性格を有するものとされる。
すなわち、取得した自己株式は、取得原価をもって評価し、株主資本から控除する。
企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
7. 取得した自己株式は、取得原価をもって純資産の部の株主資本から控除する。
期中(購入・取得時)
期中、自己株式を取得したときは、その取得原価を自己株式勘定の借方に記帳する。
会社計算規則
第二十四条 株式会社が当該株式会社の株式を取得する場合には、その取得価額を、増加すべき自己株式の額とする。
なお、自己株式の取得に要した手数料などの付随費用は、支出時に支払手数料などの費用勘定の借方に記帳して費用処理をし、損益計算書では営業外費用として計上する。
企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用
14. 自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用は、損益計算書の営業外費用に計上する。
決算時には、期末に保有する自己株式は、貸借対照表の純資産の部の株主資本に対する控除項目として、利益剰余金の次に(つまり、株主資本の末尾に)自己株式の科目をもつて一括して控除する形式で表示する。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(自己株式の表示)
第六十六条 自己株式は、株主資本に対する控除項目として利益剰余金の次に自己株式の科目をもつて掲記しなければならない。
自己株式の無償取得
次のページを参照。
取引の具体例と仕訳の仕方
自己株式の有償取得
期中(購入・取得時)
自己株式を取得したとき
自己株式を1000万円で取得し、普通預金から支払った。なお、取得には手数料として10万円を要した。
自己株式 | 10,000,000 | 普通預金 | 9,900,000 |
支払手数料 | 100,000 |
自己株式の無償取得
仕訳なし。
自己株式の取得の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、自己株式の取得は不課税取引として消費税の課税対象外である。
消費税法基本通達
(自己株式の取扱い)
5-2-9 法人が自己株式を取得する場合(証券市場での買入れによる取得を除く。)における株主から当該法人への株式の引渡し及び法人が自己株式を処分する場合における他の者への株式の引渡しは、いずれも資産の譲渡等に該当しない。
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