仕入れ―会計処理―期中―購入・取得と払出―②棚卸資産の評価方法―原価法―個別法
(" 棚卸資産(たな卸資産)―会計処理―棚卸資産の評価―①棚卸資産の評価方法―原価法―個別法 "から複製)
個別法とは
個別法の定義・意味など
個別法(こべつほう)とは、棚卸資産の評価方法のうち原価法のひとつで、期末棚卸資産の全部について、その個々の取得価額をその取得価額とする方法をいう。
法人税法施行令
(棚卸資産の評価の方法)
第二十八条 法第二十九条第一項 (棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法)の規定による当該事業年度終了の時において有する棚卸資産の評価額の計算上選定をすることができる同項 に規定する政令で定める評価の方法は、次に掲げる方法とする。
一 原価法(当該事業年度終了の時において有する棚卸資産(以下この項において「期末棚卸資産」という。)につき次に掲げる方法のうちいずれかの方法によつてその取得価額を算出し、その算出した取得価額をもつて当該期末棚卸資産の評価額とする方法をいう。)
イ 個別法(期末棚卸資産の全部について、その個々の取得価額をその取得価額とする方法をいう。)
…
個別法の目的・役割・意義・機能・作用など
単品管理
個別法は、期中は商品有高帳などに個々の棚卸資産ごとにその取得価額を記録し、その価額で払い出す(←払出単価の決定)とともに、当該取得価額をもって期末の棚卸資産の評価額とする(当該取得価額をそのまま用いて棚卸資産の価値を確定する)方法である。
いわば、単品管理といえる。
個別法の性格・性質
個別法をはじめとする棚卸資産の評価方法は、総平均法・単純平均法・売価還元法を除き、期中にあっては棚卸資産(商品等)の払出単価の決定方法として、期末にあっては期末棚卸資産の評価額の決定方法(→棚卸資産の評価方法)としての2つの性格を有していることに注意。
個別法の位置づけ・体系(上位概念等)
原価法
その売上原価等の算定のためには、費用収益対応の原則から、いつ(日付)、いくらで(単価)、どれだけ(数量)仕入れた棚卸資産(商品等)が、いつ、いくらで、どれだけ売れたのか(期中)、そして、その結果、いつ、いくらで仕入れた棚卸資産がどれだけ売れ残ったのか(期末)を確定しておく必要がある。
しかし、通常の大量生産品にあっては、同じ棚卸資産であっても仕入ごとに購入単価が異なることがあるため、費用と収益の関係が明確ではなく、この作業は簡単にはいかない。
そこで、期中・期末の棚卸資産の評価方法としては、取得原価主義に基づく原価法が採用されている。
法人税法上、原価法として、次の方法が認められている(法人税法施行令28条1項1号)。
※単純平均法と後入先出法は、2010年4月1日以後開始する事業年度から廃止され、使用できなくなった。
なお、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」では、棚卸資産の評価方法として、次の4つを規定している。
また、「中小企業の会計に関する指針」では、棚卸資産の評価方法につき、次のように規定している。
棚卸資産の評価方法は、個別法、先入先出法、後入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法等、一般に認められる方法によるものとしている。
なお、期間損益の計算上著しい弊害がない場合には、最終仕入原価法を用いることもできる。
個別法の特色・特徴
個別法は、個々の棚卸資産(商品等)の実際の動き(受入・払出・残高)をその事実どおりに計算する方法である。
個別法以外の他のすべての原価法は、棚卸資産を個々に(単品)ではなく集合的にとらえて、そして、事実どおりにではなく一定の仮説(たとえば、先入先出法にあっては「先に仕入れた商品から順番に売れていく」など)をたてることで棚卸資産の動きを仮定して計算する方法である。
なお、個別法は、比較的高価で個別性が高い棚卸資産のため、仕入と在庫との個別の対応関係が明確な宝飾品・宝石・貴金属などの評価に適しているとされる。
個別法の適用対象
税務上、個別法により評価できる棚卸資産の範囲について、次のような規定がある。
- 商品 … 商品の取得から販売に至るまでの過程を通じて具体的に個品管理が行われている場合において、その個品管理を行うことに合理性があると認められるとき
- 製品・半製品・仕掛品 … 製品等の取得から販売または消費までの過程を通じて具体的に個品管理が行われ、かつ、個別原価計算が実施されている場合において、その個別原価計算を実施することに合理性があると認められるとき
- 原材料 … その性質上もっぱら「2.」の製品・半製品の製造等の用に供されるものとして保有されているもの
法人税基本通達
(個別法を選定することができる棚卸資産)
5-2-1 棚卸資産のうち、次に掲げるものについては、個別法(その評価額を基礎とする低価法を含む。)によりその評価額を計算することができるものとする。
(1) 商品の取得から販売に至るまでの過程を通じて具体的に個品管理が行われている場合又は製品、半製品若しくは仕掛品の取得から販売若しくは消費までの過程を通じて具体的に個品管理が行われ、かつ、個別原価計算が実施されている場合において、その個品管理を行うこと又は個別原価計算を実施することに合理性があると認められるときにおけるその商品又は製品、半製品若しくは仕掛品
(2) その性質上専ら(1)の製品又は半製品の製造等の用に供されるものとして保有されている原材料
個別法のメリットとデメリット
個別法のメリット
個別法は、実際の商品の動きに忠実で、もっとも基本的な方法である。
そして、当該資産が売れたときに、その取得価額(+付随費用)=仕入=売上原価として、そのまま必要経費とされるので、費用収益対応の原則の適用においても事実にかなっているといえる。
個別法のデメリット
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