貸借対照表原則―評価―資産の評価基準―取得原価―取得原価主義会計(簿価会計・簿価主義会計)
取得原価主義会計とは
取得原価主義会計の定義・意味
取得原価主義会計とは、原価(=取得時の価格 簿価 帳簿価額)を基準として、資産や負債を評価し、時価による再評価は行わない会計手法をいう。
したがって、資産・負債の評価額は売却時まで取得時の価格のまま変動しないことになる。
取得原価主義会計では、資産・負債の再評価は行わないので、評価差額(取得原価と時価評価額の差)という未実現損益が発生せず、損益計算書には、本業による損益(実現損益)のみが計上されることになる。
簿価会計あるいは簿価主義会計ともいう。
取得原価主義会計の反対概念
取得原価主義会計の反対概念は時価主義会計である。
取得原価主義会計の趣旨・目的・機能
取得原価主義会計は、会社や事業が長期間継続することを前提とした会計手法である。
つまり、会社・事業が長期間継続し、土地や建物を保有し続けるのであれば、そもそもそれを売る予定がないのであるから、わざわざ時価評価をする必要はない(時価評価を毎年繰り返して、保有資産を再評価しても意味がない)。
したがって、資産は貸借対照表にその取得時の価格(簿価)で一度記載されれば、その後、時価による再評価は行わない取得原価主義会計が主流となる。
しかし、M&A(合併や買収)などが一般的になってくると、会社が保有する資産の時価評価が必要となるため、時価主義会計が求められる。
そこで、有価証券など市場性がある資産については時価評価を行い、不動産のような固定資産でも著しい資産価値の下落があった場合には、減損額を控除するようになった(→減損会計)。
取得原価主義会計の特色・特徴
取得原価主義会計は、貸借対照表より、損益計算書の正確さを重視する会計手法である。
・損益計算書→企業の経営成績を明らかにする
・貸借対照表→企業の財政状態を明らかにする
取得原価主義会計の長所と短所
取得原価主義会計の長所・メリット・利点
取得原価主義会計のメリットは、時価主義会計のデメリットというこうとでもある。
計算の客観性・確実性
時価の算定は困難である。
これに対して、取得原価主義会計で計上される取得時の価格は実際の取引額なので、客観的に明らかな数字であり、信頼性がある。
配当や課税金額に関心がある株主や課税当局は、確実な損益計算ができる取得原価主義会計を重要視する。
処分可能性
有価証券のように市場性がない不動産などの資産では、これを時価で評価しても、その価格で実際に処分できるかという問題がある。
取得原価主義会計の短所・デメリット・弱点
取得原価主義会計では、資産・負債の評価額は売却時まで取得時の価格のままで変動しない(時価主義会計のように時価で再評価されない)。
したがって、貸借対照表上に含み益や含み損が反映されないので、企業の正確な財政状態を把握できない。
財政状態に関する正確な情報がないと、適切なリスク管理をとることはできないが、反面、日本の企業はこの含み益を利用することで安定した経営を続けることができたともいえる。
また、このことに関連して、本業が不振の場合に、含み益がある資産を売却することで利益を捻出するという利益操作(益出し)を招きやすいという問題もある。
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