繰延税金資産―計上の要件―回収可能性
繰延税金資産の計上の要件
計上金額―回収可能性の範囲内
一時差異(会計上の利益と税法上の所得との差額)がある場合は、税効果会計を適用して、資産または負債に計上するのが原則である
しかし、繰延税金資産は、会計上、費用として当期にすでに計上しているが、税務上の損金算入が翌期以降にずれる場合(将来減算一時差異)等に、翌期以降に税務上の損金算入が実現すると、会計上の利益より税金が減少するため、その減税効果を先に見込んで計上するものである。
つまり、法人税等の前払額である繰延税金資産の計上は、将来、減算一時差異等の解消によって減額効果があること、すなわち前払額が将来の課税所得から回収できることを根拠としている。
そこで、「中小企業の会計に関する指針」は、繰延税金資産については、将来減算一時差異等が将来の税金負担額を軽減する効果を有していると見込まれる、すなわち、回収可能性があると判断できる金額を計上しなければならないとしている。
回収可能性の判断基準
そこで、繰延税金資産の回収可能性の判断が問題となる。
「中小企業の会計に関する指針」は、回収可能性の判断基準について、次のように定めている。
63.回収可能性についての判断基準
繰延税金資産の回収可能性については、会社の過去の業績等を主たる判断基準として、将来の収益力を見積り、将来減算一時差異等がどの程度回収されるのかを、以下のそれぞれの例示区分に応じて判定することになる。
(1) 期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を当期及び過去3年以上計上している場合は、回収可能性があると判断する。
(2) 過去の業績が安定(当期及び過去3年経常的な利益を計上)していることから、将来も安定的な経常利益の計上が見込まれるが、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない場合には、将来減算一時差異の合計額が過去3年間の課税所得の合計額の範囲内であれば、回収可能性があると判断する。
(3) 業績が不安定であり、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない場合又は税務上の繰越欠損金が存在する場合であっても将来の合理的な見積可能期間(最長5年)内の課税所得の見積額を限度として、一時差異等の将来解消の見込みについて取締役会等による合理的な計画(スケジューリング)に基づくものであれば、回収可能性があるものと判断する。スケジューリングを行うことができない場合又は行っていない場合には、回収可能性はないものと判断する。
(4) 過去3年以上連続して重要な税務上の欠損金を計上し、当期も欠損金の計上が見込まれる会社及び債務超過又は資本の欠損の状況が長期にわたっており、短期間に当該状況の解消が見込まれない場合には回収可能性はないと判断する。
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