[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

勘定科目を体系的に分類し、仕訳の仕方等を解説した会計の実務的マニュアルです。


前払い―具体例―手付金


手付とは

手付の定義・意味など

手付(てつけ)とは、売買・賃貸・請負など有償契約の締結の際に、買主などが相手方に交付する有価物(経済上の価値のある有体物)をいう。

有価物とはいっても、現実的には銭であるのがほとんどなので、手付金(てつけきん)ともいう。

手付の分類・種類(法的性質)

手付は、次の3つの種類に分類される。

つまり、手付けを交付するのは、一般的には次の3つの意味があるとされている。

  1. 証約手付…契約が成立したことを証する
  2. 違約手付…債務不履行に備えて違約罰として手付けを交付する
  3. 解約手付…契約当事者が解除権を留保するために手付けを交付するもの

手付の目的・役割・意義・機能・作用など

商品の引取りや引渡し等の優先性

商品の引取りや引渡し等を優先的に行うために手付金の支払い・受取りが行われる。

『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、66項。

契約解除権の留保

民法で、手付には契約解除権が留保されるという特別の効力が認められている。

民法
(手付)
第五百五十七条  買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

解約手付の推定規定

実際に手付が交付される場合、当事者は何のために手付を交付したか(証約手付なのか違約手付なのか解約手付なのか)を明らかにしていないことがほとんどである。

そこで、民法557条1項の手付に関する規定は、手付が交付された場合、それは解約手付けである旨を推定した規定であると解されている(任意規定)。

ただし、違約手付の約定がある場合であっても557条1項の適用は排除されない、つまり、違約手付であるとともに解約手付であると推定されるものと解されている(判例・通説)。

この場合、契約の履行着手前は解約手付として、履行の着手後は違約手付としての性質を有することになる。

手付と関係する概念

類似概念・類義語
内金

内金(うちきん)とは、売買や請負などで、全額の代報酬の支払いに先立ってその一部を支払うこと、または、そのをいう。

三省堂 『スーパー大辞林』

内金の多くは、手付金の性質をもつが、単に代の一部前払いにすぎない場合もある。

岩波書店 『広辞苑 第六版』

手付金の会計簿記経理上の取り扱い

会計処理方法

使用する勘定科目・記帳の仕方等
前受金前払金支払手付金

手付金(または内金)を受け取った場合は前受金勘定負債)、手付金等を支払った場合は前払金勘定資産)などで処理をする。

ただし、先述したように、民法上、手付金には、単に代の一部前払いにすぎない場合の内金とは異なり、特別の効力が認められている(民法第557条第1項)。

そこで、手付金については内金と区別して管理するために特に支払手付金勘定が用いられる場合もある。

また、未完成の建物構築物機械装置船舶などの有形固定資産について、その完成・引渡しまでに前払いした諸費用については建設仮勘定資産)で処理をする。

取引の具体例と仕訳の仕方

手付金を受け取った場合
商品を引き渡す前に手付金を受け取ったとき

取引

商品売上の手付金として現金を受け取った。

仕訳

借方科目
貸方科目
現金 ✕✕✕✕ 前受金 ✕✕✕✕

商品を納品して残を受け取ったとき

取引

上記商品を納品し、残を受け取った。

仕訳

借方科目
貸方科目
前受金 ✕✕✕✕ 売上 ✕✕✕✕
現金 ✕✕✕✕

手付金の務・法・制上の取り扱い

消費税の課・非課・免・不課(対象外)の区分

不課税取引課税対象外)

消費税の課資産の譲渡等や課税仕入れの時期は、所得法人税の場合と同じように、原則として資産の引渡しやサービスの提供があったときとされている。
したがって、手付金を受け取ったり、支払っていたとしても、その受取や支払の時期に関係なく、実際に引渡しやサービスの提供があったときが売上げ仕入れの時期となるので、手付金は消費税の課税対象外となる。

No.6165 前受金前払金などがあるとき|消費税国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6165.htm



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