在庫―在庫管理―棚卸―実地棚卸(棚卸・たな卸)
実地棚卸とは
実地棚卸の定義・意味など
実地棚卸(じっちたなおろし)とは、帳簿上ではなく、定期的に(月末・決算日など)実地で実際に行う棚卸をいう。
実地棚卸の別名・別称・通称など
棚卸
実地棚卸は、単に棚卸と呼ばれることも多い。
実地棚卸の実施要領
次のページを参照。
実地棚卸の方法
棚卸計算法
実地棚卸の具体的な方法として棚卸計算法(実地棚卸法・棚卸法)がある。
実地棚卸の位置づけ・体系(上位概念等)
棚卸
実地棚卸は棚卸の1つである。
棚卸は次の2つの種類に分類される。
- 帳簿棚卸
- 実地棚卸
帳簿棚卸
本来ならば、帳簿棚卸により算定された在庫数量=帳簿棚卸数量(帳簿有高)と実地棚卸により実際に調べた在庫数量=実地棚卸数量とは一致するはずである。
しかし、商品の盗難(万引き)・紛失や入力ミスなどの理由で両者は一致しないことも多い。
そこで、帳簿棚卸による場合であっても、記録の正確性を確認するために、定期的(月末・決算日など)に実地棚卸を行って実地棚卸数量を調べ、帳簿棚卸数量との照合を行う。
ただし、商品に関しては、決算日に一度、期末商品棚卸高の評価においてなされるのが一般的である。
実地棚卸の目的・役割・意義・機能・作用など
実地棚卸は次の目的のために行われる。
1.在庫管理
2.期末棚卸高の確定
たとえば、当期の商品仕入高のなかには、前期の仕入金額ではあるが当期の費用とすべきもの (前期に仕入れた商品が当期で販売された場合。つまり、前期から繰り越された在庫商品。期首商品棚卸高)や、逆に当期の費用とはすべきではないもの(当期に仕入れた商品が売れ残った場合。つまり、当期に売れ残った在庫商品※。期末商品棚卸高)が含まれている場合がある。
※当期に売れ残った在庫商品については、売上原価として当期の費用に計上することはできない。
したがって、本年分の必要経費となる商品などの売上原価や消耗品費などは、費用収益対応の原則から、本年中の商品などの仕入高や消耗品などの購入高がそのままなるのではなく、次の計算式で算定した金額となる。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 年間の仕入高 - 期末商品棚卸高
消耗品費 = 期首棚卸高 + 年間の購入高 - 期末棚卸高
そこで、商品や消耗品費などの期末棚卸高を確定する必要があるが、そのためには期末に棚卸を行ってその正確な在庫数量を調べる(売れ残った商品在庫等を把握する)必要がある。
なお、これは、税法的には、費用を実際の売上高に対応する仕入額(必要経費)ないしは損金にまで減額するための作業ともいえる。
実地棚卸と関係する概念
派生概念
棚卸資産
実地棚卸をすべき(棚卸しによって金額を決定する)資産のことを棚卸資産という。
棚卸表
実地棚卸の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
期末(決算時)等
実地棚卸(商品)
決算時には、実地棚卸によって決定された期末時点の在庫(つまり、当期に売れ残った在庫)=期末商品棚卸高を商品勘定に振り替えて売上原価から控除する。
具体的には、当期に売れ残った在庫の仕入原価の合計額を期末商品棚卸高(または期末棚卸高)勘定の貸方に記帳して(つまり、期末商品棚卸高を減少させて)これを売上原価から控除するとともに、商品勘定の借方に記帳して資産計上する。
つまり、当期の費用とはすべきではない期末商品棚卸高(費用)をいったん商品(資産)として計上するわけである。
翌期首
振替処理
期末時点の在庫は翌期以降に販売するため、翌期首には、いったん商品(資産)として計上した期末商品棚卸高を再び期首商品棚卸高勘定(費用)に振り替える。
具体的には、期末商品棚卸高を商品勘定の貸方に記帳してこれを減少させるとともに、期首商品棚卸高勘定の借方に記帳してこれを増加させる。
管理
棚卸(在庫管理)
棚卸は毎月行うことが理想であるが、期末だけ行うこともできる。
なお、在庫が増えると資金繰りが悪くなるので、在庫管理はしっかりと行う必要がある。
取引の具体例と仕訳の仕方
期末(決算時)
決算にあたり実地棚卸によって決定された商品の在庫100万円を計上した。
商品 | 100万 | 期末商品棚卸高(期末棚卸高) | 100万 |
翌期首
期首商品棚卸高(期首棚卸高) | 100万 | 商品 | 100万 |
実地棚卸の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、実地棚卸により決定された期末商品棚卸高は原則として不課税取引として消費税の課税対象外である。
ただし、課税事業者が免税事業者となった場合、期末商品棚卸高は仕入税額控除の対象とはならない(消費税法36条5項)。
逆に、免税事業者が新たに課税事業者となった場合、課税事業者となる日の前日において所有する商品のうちに、納税義務が免除されていた期間において仕入れた商品がある場合は、その商品に係る消費税額を課税事業者になった課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなして仕入税額控除の対象とされる。
No.6491 免税事業者が課税事業者となったとき|消費税|国税庁 http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6491.htm
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