貸倒れ―期末―貸倒引当金の設定―貸倒見積額の算定(貸倒見積高の算定)
貸倒見積額の算定
実務では税法にしたがい、必要経費・損金として認められる貸倒引当金の繰入限度額の金額を設定することが多い。
また、「中小企業の会計に関する指針」でも、所得税・法人税法上で算定される貸倒引当金繰入限度額が明らかに取立不能見込額に満たない場合を除き、同繰入限度額相当額をもって貸倒引当金とすることができるものとしている。
中小企業の会計に関する指針
18.貸倒引当金
(3) 取立不能見込額は、債務者の財政状態及び経営成績に応じて次のように区分し、算定する。
① 原則的な算定方法
…
② 法人税法上の基準による算定方法
本指針においては、次に掲げる平成23年度税制改正(平成23年12月改正) 前の法人税法の区分に基づいて算定される貸倒引当金繰入限度額が明らかに 取立不能見込額に満たない場合を除き、当該繰入限度額をもって、当期の貸 倒引当金繰入金額とすることができる。
しかし、正確な決算書を作成するという観点からは、税法上、必要経費・損金不算入とされている場合でも、貸倒引当金を計上したほうがよい。
また、節税の観点からも、税法上必要経費・損金として認められる限度額の貸倒引当金を設定したほうがよい。
ただし、会計上で見積られた貸倒引当金が税法上の限度額を超過する場合には、その金額について確定申告時に別表4で加算調整を行う必要が生じる。
会計
「金融商品に関する会計基準」では、次の債権の3つの区分に応じた所定の算定方法により貸倒見積額を計上するものとしている。
これは、貸倒引当金の設定にあたり、相手の状況に応じて債権を区分することで、貸倒見積額を適切に算定するためである。
詳細については、上記リンク先をクリック。なお、次のページも参照。
なお、「金融商品に関する会計基準」は評価に関する基準であって、表示に関する基準ではないので、上記の債権の区分は破産更生債権等を除き勘定科目(または貸借対照表上の表示科目)とは連動していないので注意。
後述するように破産更生債権等だけは一般債権(売掛金・受取手形・貸付金勘定など)を破産更生債権等勘定に振り替えることが求められている。
1.一般債権
通常の債権である一般債権は貸倒れの危険性が少ないことから、過去の貸倒れの実績を基準にして引当金を計上する貸倒実績率法によるものとされている。
その計算式は以下のとおりで、貸倒見積額(貸倒引当金設定額)は売上債権の期末残高に一定率を乗じることで算出される。
貸倒見積額(貸倒引当金設定額)= 売上債権の期末残高 ✕ 一定率
『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、263項。
2.貸倒懸念債権
貸倒懸念債権は業績が悪化した相手先に対する債権なので、債権額から担保の処分見込額および保証による回収見込額を減額し、その残額(つまり、回収不能と見込まれる金額)について債務者の財政状態と経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する。
また、この方法に加えて、債権の時価ともいえるNPVによる債権評価もできる。
これにより、貸倒れのおそれのある債権については、将来の回収見込額を割引計算して評価が行われることとなった。
3.破産更生債権等
破産更生債権等は実質的に倒産している相手先に対する債権なので、債権額から担保の処分見込額および保証による回収見込額を減額し、その残額(つまり、回収不能と見込まれる金額)の全額を貸倒見積高とする。
なお、破産更生債権等については財務諸表等規則32条で貸借対照表上、区分掲記しなければならないと規定されているので、期中、売上債権などの債務者が経営破綻または実質的に経営破綻に陥ったときは、一般債権(売掛金・受取手形・貸付金勘定など)を破産更生債権等勘定に振り替える会計処理も別途必要になるので注意を要する。
「債務者が経営破綻または実質的に経営破綻に陥った」具体例(破産更生債権等の具体例)については次のページを参照。
なお、一般債権と貸倒懸念債権についてはこの会計処理は不要である。ただし、貸倒懸念債権についても貸倒懸念債権勘定に振り替えることもある。
税法
税法(所得税法・法人税法)では、債権を個別評価金銭債権と一括評価金銭債権とに区分したうえ、それぞれに係る貸倒引当金の繰入限度額を規定し、必要経費または損金に算入できる貸倒引当金を制限している。
なお、税法上の「1.一括評価金銭債権」は会計上の「1.一般債権」に、そして、「2.個別評価金銭債権」は「2.貸倒懸念債権」「3.破産更生債権等」に対応するが、両者の定義は若干異なる。
詳細については次のページなどを参照。
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