貸借対照表―資産―繰延資産―会計上の繰延資産(会社法上の繰延資産)
会計上の繰延資産とは
会計上の繰延資産の範囲
①会社法
旧商法
いわゆる旧商法では、次の8つに限り、繰延資産として計上することを認めていた。
新会社法
しかし、会社法のもとでは、繰延資産の範囲は明確に規定されていない(繰延資産の限定列挙の廃止)。
すなわち、平成18年5月1日施行の会社計算規則では、「繰延資産として計上することが適当であると認められるもの」が繰延資産に属すると規定されているだけであり、繰延資産として計上することができる項目とその具体的な会計処理について、旧商法施行規則のような規定はない。
これは、「政策判断に基づいて積極的に資産計上を認める規定を設けることは適当ではなく、また、会計慣行に委ねることとしているので積極的に資産計上を認める規定を設けることは適当ではない」との趣旨に基づく。
②会計基準等
実務対応報告書第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」
こうして会社法で繰延資産の限定列挙が廃止され、繰延資産の範囲は会計慣行に委ねられることとなった。
そこで、これを受けて、企業会計基準委員会が2006年(平成18年)8月に公表したものが実務対応報告書第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」で、本実務対応報告では繰延資産として次の5つが規定されている。
これらを繰り延べて資産計上するか、あるいは、その事業年度の費用として処理するかは、会社が任意に選択できる。
なお、これまで繰延資産とされていた社債発行差金については、企業会計基準第 10号「金融商品に関する会計基準」において会計処理(社債金額から直接控除する方法)を定めているので、本実務対応報告では、経過措置に関する事項を除き、取り扱わないものとされている。
中小企業の会計に関する指針
中小企業の会計に関する指針では、「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」と同じく次に掲げるものが繰延資産とされている。
40.繰延資産の範囲
(1) 創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費、新株予約権発行費が繰延資産に該当する。
企業会計原則
創立費、開業費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、開発費、試験研究費及び建設利息は、繰延資産に属するものとする。これらの資産については、償却額を控除した未償却残高を記載する。
財務諸表等規則
財務諸表等規則(正式名称「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」)では、次に掲げるものが繰延資産とされている。
(繰延資産の範囲)
第三十六条 創立費、開業費、株式交付費、社債発行費及び開発費は、繰延資産に属するものとする。
会計上の繰延資産の位置づけ・体系(上位概念)
繰延資産
繰延資産には、会計上の繰延資産(会社法上の繰延資産)と税法上の繰延資産(所得税法上の繰延資産・法人税法上の繰延資産)とがある。
なお、会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の範囲は異なるので注意を要する(→税法独自の繰延資産)。
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