金融―機能①―資産運用
資産運用とは
資産運用の定義・意味など
資産運用(しさんうんよう)とは、家計や企業がお金を金融資産に貯蓄または投資(広義)することをいう。
(「貯蓄」ではなくて「資産運用」という概念を使用する理由)
経済学では、消費・貯蓄・投資の三者について、通常、次のようにモデル化する。
すなわち、家計は労働で得た所得の一部で効用の最大化を目的に消費を行い、残りを貯蓄にあてる。
そして、貯蓄は銀行などの金融機関を仲介して企業の投資に利用される、と。
日本の戦後高度成長の要因の一つとして、国民の高い貯蓄性向により、豊富な資金が間接金融により企業へ供給されたことがあげられる。
このモデルは、投資を生産設備を増加させること(=設備投資)と在庫を増加させること(=在庫投資)とする投資観に対応したものである。
しかし、こうした投資の概念は、19世紀の産業資本主義※的な投資観である。
※生産手段を私有する資本家が、労働者を雇って、生産手段に労働力を加えることで、不可価値(剰余価値 新たな価値つまり利潤)を生み出すとする資本主義観。
これは現代の資本主義にはそぐわない(私見)。
たとえば、「生産手段を私有する資本家が、労働者を雇って…」では、個人が行う株式投資やFXなどのマネー経済は、資本主義的経済活動にはあたらないことになる。
しかし、マネー経済こそ、効率的に利潤を生みだすことを目的とする資本主義の極致ともいえる。
もっと抽象的・一般的に、資本主義とは、市場経済から利益(利潤)を調達(獲得)することを目的とした経済活動である、と定義すべきである。
この資本主義観のもとでは、利潤を回収できるのであれば、貨幣自体も商品となって(→金融商品)、投資の対象になりうる。
そして、この意味での投資は、家計も参加しうる。
つまり、
家計=消費+貯蓄
ではなくて
となる。
この従来の「貯蓄」に相当する「貯蓄+投資」が、資産運用という概念である。
日本では、小泉内閣がその発足後「骨太の方針」(2001年6月)において、「個人投資家の市場参加が戦略的に重要。貯蓄優遇から投資優遇への金融の在り方の切り替え」と明記し、「貯蓄から投資へ」という方針を打ち出した。
なお、金融商品取引法では、貯蓄の代表である銀行の預金は、投資性の高い金融商品に含めておらず、これと区別している。
資産運用と関係する概念
投資
一般的には、たとえば株式を売買することなども投資(広義)といい、資産運用と同義で使用されている。
ただし、経済学的には、お金を事業に投下すること(=一定期間における生産者の実物資本の増加分)を投資(狭義)という。
したがって、経済学上では、株式の売買などは投資ではなく、資産運用ということになる。
資産運用の位置づけ・体系(上位概念等)
金融
資金が余ったところ(家計など)から資金が必要なところ(企業など)へ資金の融通を図ること(貸し借り)を金融というが、その貸す側面が資産運用である。
これに対して、借りる側面を資金調達という。
資産運用の対象となる金融商品の分類・種類
資産運用の対象となる金融商品は、次のように分類される。
貯蓄型
投資型(狭義の金融商品)
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