株式―自己株式―処分(自己株式の処分)
自己株式の処分とは
自己株式の処分の定義・意味など
自己株式の処分(じこかぶしきのしょぶん)とは、自己株式を譲渡することをいう。
自己株式の処分の位置づけ・体系(上位概念等)
株式の交付
自己株式の処分は新株の発行とともに株式の交付のひとつとして位置づけられる。
なお、会社法では、自己株式の処分は新株の発行と同じように取り扱われている。
会社法
(募集事項の決定)
第百九十九条 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
自己株式の処分の法的性格・性質
資本取引
会社法では、自己株式の処分は、株主との損益取引ではなく、資本取引と考えられている。
自己株式の処分に関する会計基準と制度会計
自己株式の処分に関する会計処理等を定めた会計基準や制度会計としては、次のようなものがある。
会計基準
制度会計
会社法会計
自己株式の処分の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
自己株式・自己株式処分差益・自己株式処分差損
期中、自己株式を処分したときはその帳簿価額を自己株式勘定の貸方に記帳して減額する。
会社計算規則
第二十四条 …
2 株式会社が自己株式の処分又は消却をする場合には、その帳簿価額を、減少すべき自己株式の額とする。
そして、自己株式の処分の対価と自己株式の帳簿価額とに差額(=自己株式処分差額)がある場合は、当該差額を自己株式処分差益勘定または自己株式処分差損勘定を用いて処理をして、自己株式処分差益はその他資本剰余金に計上し、自己株式処分差損はその他資本剰余金から減額する。
つまり、自己株式の処分は株主との資本取引と解されているので、その自己株式処分差額は損益計算書に計上せず、貸借対照表の純資産の部のその他資本剰余金を直接増減する。
企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
9. 自己株式処分差益は、その他資本剰余金に計上する。
10. 自己株式処分差損は、その他資本剰余金から減額する。
また、その他資本剰余金から減額しきれない場合は、さらにその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額する。
企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
12. 第10項及び第11項の会計処理の結果、その他資本剰余金の残高が負の値となった場合には、会計期間末において、その他資本剰余金を零とし、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額する。
なお、自己株式の処分に要した手数料などの付随費用は、株式交付費勘定などで繰延資産として処理をするのではなく、支出時に支払手数料などの費用勘定の借方に記帳して費用処理をし、損益計算書では営業外費用として計上する。
企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用
14. 自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用は、損益計算書の営業外費用に計上する。
実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い
(1) 株式交付費の会計処理
株式交付費(新株の発行又は自己株式の処分に係る費用)は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理する。
取引の具体例と仕訳の仕方
自己株式100万円を150万円で売却した。なお、売却には手数料として1万円を要した。
普通預金 | 1,490,000 | 自己株式 | 1,000,000 |
支払手数料 | 10,000 | 自己株式処分差益 | 500,000 |
自己株式の処分の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、自己株式の処分は不課税取引として消費税の課税対象外である。
消費税法基本通達
(自己株式の取扱い)
5-2-9 法人が自己株式を取得する場合(証券市場での買入れによる取得を除く。)における株主から当該法人への株式の引渡し及び法人が自己株式を処分する場合における他の者への株式の引渡しは、いずれも資産の譲渡等に該当しない。
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