支払手数料
支払手数料とは 【commission fee】
支払手数料の定義・意味など
支払手数料とは、手数料と報酬の支払いを処理する費用勘定をいう。
法人・個人の別
法人・個人
支払手数料は法人・個人で使用される勘定科目である。
支払手数料の位置づけ・体系(上位概念等)
一般管理費
支払手数料は、損益計算書上、一般管理費に属する手数料である。
なお、これに対して、販売手数料は販売費に属する手数料である。
つまり、販売手数料は販売に直接要した費用として、一般管理費扱いの支払手数料とは区別して処理しなければならない。
支払手数料と関係する概念
同義概念・同義語
管理諸費
事業所によっては支払手数料ではなく管理諸費という名称を使用しているところもある。
類似概念・類義語
支払報酬料・顧問料
源泉徴収の対象となる報酬については、これを源泉徴収の対象とはならない銀行の振込手数料などの手数料と区別するため、特に支払報酬料という勘定科目を使用することもある。
また、特に外部の専門家に支払う顧問料については顧問料勘定を使用することもある。
反対概念・対概念
受取手数料
支払手数料の範囲・具体例
支払手数料勘定で処理をするものとしては、たとえば次のようなものがある。
手数料
- 手数料
- 金融機関関係
- 郵便局の定額小為替の手数料(料金)
- 情報提供等の対価として交付した金品
- 証明書発行手数料
- 収入証紙
- クリーニング代
- 各種の修理・保守(定期点検・保守点検)
- インターネット関係
- 官報公告
- 自己株式に係る費用
- その他
銀行の振込手数料
銀行の振込手数料は、回数が少ない場合には雑費勘定で処理してもよい。
手形割引の手数料
手形割引の手数料は、通常、割引料もあわせて手形売却損勘定で処理をするが、手数料については支払手数料を用いる会計処理もある。
情報提供等の対価として交付した金品
情報提供料、仲介手数料、斡旋手数料などは支払手数料勘定などで費用処理をする。
なお、正当な対価の支払いと認められない場合、税務上、交際費として取り扱われる場合がある。
租税特別措置法関係通達
(情報提供料等と交際費等との区分)
61の4(1)-8 法人が取引に関する情報の提供又は取引の媒介、代理、あっせん等の役務の提供(以下61の4(1)-8において「情報提供等」という。)を行うことを業としていない者(当該取引に係る相手方の従業員等を除く。)に対して情報提供等の対価として金品を交付した場合であっても、その金品の交付につき例えば次の要件の全てを満たしている等その金品の交付が正当な対価の支払であると認められるときは、その交付に要した費用は交際費等に該当しない。
(1) その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること。
(2) 提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること。
(3) その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること。
また、不動産業者への礼金を支払手数料として費用化できるのは20万円未満の場合に限られる。
証明書発行手数料
次のような各種の証明書発行手数料などは租税公課勘定のほか支払手数料勘定で処理をしてもよい。
ただし、上記の証明書発行手数料については、消費税法上、非課税とされている。
したがって、支払手数料勘定で処理をする場合には、会計ソフトの消費税区分で「非課税」を選択する。
収入証紙
収入証紙を購入したときは、支払手数料勘定で処理することもできる。
ただし、収入証紙は消費税法上非課税取引とされているので、通常は租税公課勘定で処理をする。
クリーニング代
ただし、一会計年度で相当回数発生する場合には、一般管理費に属する手数料としての支払手数料勘定などで処理をする。
自己株式に係る費用
自己株式に係る次の費用は、株式交付費勘定(資産)で繰延資産に計上するのではなく、支出時に支払手数料勘定(自己株式の処分については株式交付費勘定(費用)でも可)などで費用計上したうえ、損益計算書の営業外費用に計上する。
企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用
14. 自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用は、 損益計算書の営業外費用に計上する。
ただし、自己株式の処分については、企業規模の拡大のためにする資金調達などの財務活動にかかる費用(組織再編の対価として株式を交付する場合を含む)は、株式交付費勘定(資産)を用いて繰延資産に計上することもできる。
実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い
(1) 株式交付費の会計処理
株式交付費(新株の発行又は自己株式の処分に係る費用)は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理する。ただし、企業規模の拡大のためにする資金調達などの財務活動(組織再編の対価として株式を交付する場合を含む。)に係る株式交付費については、繰延資産に計上することができる。
積送諸掛
委託販売において受託者が立替払いしている諸費用や受託者が受け取る販売手数料は積送諸掛勘定で処理するが、支払手数料勘定で処理してもよい。
報酬
講演料
プログラマーに支払う報酬
プログラマーに支払う報酬(10万円未満のソフトウェアの開発を依頼した場合の費用)は外注費勘定で処理することもできる。
支払手数料の決算等における位置づけ等
支払手数料の財務諸表における区分表示と表示科目
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業損益の部 > 販売費及び一般管理費 > 支払手数料
所得税の青色申告決算書(損益計算書)記載の勘定科目の当否
支払手数料は所得税の青色申告決算書(損益計算書)の経費欄には印刷されていない。
しかし、一般的に使用される勘定科目であり、会計ソフトでもデフォルトで設定されている。
支払手数料の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
手数料や報酬を支払ったときは支払手数料勘定の借方に記帳して費用計上する。
所得税の源泉徴収
一定の専門家に報酬を支払う場合は所得税の源泉徴収をする義務がある(→一定の専門家に支払う報酬・料金等)(所得税法204条1項2号・所得税法施行令320条2項)。
ただし、法人の場合は、所得税ではなく法人税になるので、源泉徴収は不要である。
源泉徴収した所得税(=源泉所得税)は預り金勘定で処理をする。
なお、報酬額に消費税の額を含めた金額が源泉徴収の対象となる。
源泉徴収すべき所得税額
源泉徴収すべき所得税額は支払金額(源泉徴収の対象となる金額)により次のようになる(所得税法205条)。
- 弁護士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・弁理士・測量士・建築士・不動産鑑定士・企業診断員(中小企業診断士・経営コンサルタント)などに支払う場合
- 司法書士・土地家屋調査士・海事代理士に支払う場合
- (1回の支払金額ー1万円)✕10%
No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金|源泉所得税|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2798.htm
No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金|源泉所得税|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2801.htm
源泉所得税の納付期限
源泉所得税は原則として支払い月の翌月10日までに税務署に納付する。
ただし、例外として納期の特例という制度がある。
参考:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|源泉所得税|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2505.htm
支払手数料の事務
法定調書
(支払調書の作成)
一定の要件に該当する報酬などを支払った場合、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」と呼ばれる支払調書を作成し、税務署に提出しなければならない。
その様式については、下記のページからダウンロードできます(エクセルで作成)。
ビジネス文書テンプレート(書式・様式・雛形(雛型 ひな形 ひな型))の無料ダウンロード:税務書類の様式
なお、法定調書、支払調書の詳細については、下記の国税庁のホームページを参照
No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数|法定調書|国税庁
支払手数料の管理
補助科目の作成
支払いごとにたとえば「銀行振込手数料」「税理士顧問料」などといった補助科目を作成して管理しておくと便利である。
取引の具体例と仕訳の仕方
手数料
銀行の振込手数料
事務用品1万円を購入し、代金は銀行振込で支払った。なお、振込手数料として500円かかった。
消耗品費 | 10,000 | 普通預金 | 10,500 |
支払手数料 | 500 |
不動産会社の仲介手数料
次のページを参照。
報酬
報酬を支払ったとき
(源泉徴収が必要な場合)
弁護士報酬(または監査報酬など)20万円を源泉所得税(10%、2万円)を預かって、18万円を現金で支払った。
支払手数料 | 20万 | 現金 | 18万 |
預り金 | 2万 |
(源泉徴収が不要の場合)
税理士顧問料(月額)を銀行口座からの自動引き落とし(口座振替)により支払った。なお、税理士法人である(源泉徴収不要)。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
支払手数料(または支払報酬) | ✕✕✕✕ | 普通預金 | ✕✕✕✕ |
源泉所得税(所得税預り金)を税務署に納付したとき
預り金 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
支払手数料の税務・税法・税制上の取り扱い
必要経費算入(所得税法)・損金算入(法人税法)の可否
業務の遂行上生じた紛争を解決するため弁護士に支払った報酬
たとえば、業務の遂行中、交通事故にあい、弁護士に示談交渉を依頼した場合などに支払う報酬は、必要経費または損金に算入できる。
所得税関係の審査請求の手続きに関する税理士に支払った報酬
譲渡所得に対する課税処分の取消しを求めて国税不服審判所に審査請求をした場合において、その手続きに関して税理士に支払った報酬は必要経費・損金に算入されない。
なお、この審査請求を認める裁決に基づき課税処分が取り消されたことに伴い、還付加算金の支払いを受けた場合であっても、この還付加算金に係る必要経費・損金ともならない。
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
課税取引
消費税法上、支払手数料は原則として課税取引に該当し、仕入税額控除の対象となる。
ただし、各種の証明書発行手数料は非課税取引にあたり、消費税は課税されない。
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