自己株式処分差益
自己株式処分差益とは
自己株式処分差益の定義・意味など
自己株式処分差益(じこかぶしきしょぶんさえき)とは、自己株式の処分の際、その対価から自己株式の帳簿価額を控除した額(=自己株式処分差額)が正の値の場合における当該差額を処理するための資本勘定をいう。
つまり、自己株式の処分により生じた売却益を処理するための勘定科目である。
企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
用語の定義
4. 「自己株式処分差額」とは、自己株式の処分の対価から自己株式の帳簿価額を控除した額をいう。
5. 「自己株式処分差益」とは、自己株式処分差額が正の値の場合における当該差額をいう。
法人・個人の別
法人
自己株式処分差益は法人特有の勘定科目である。
自己株式処分差益の位置づけ・体系(上位概念等)
その他資本剰余金
自己株式処分差益は、貸借対照表上、資本金及び資本準備金減少差益(資本金減少差益・資本準備金減少差益)などともに、その他資本剰余金の内訳となる。
自己株式処分差益と関係する概念
反対概念・対概念
自己株式処分差損
自己株式の処分により売却益ではなく売却損が生じた場合には、自己株式処分差損勘定を用いる。
他の勘定科目との関係
その他資本剰余金
自己株式処分差益・自己株式処分差損勘定の代わりに、あわせてその他資本剰余金勘定を用いて仕訳をしている例もある。
中野智之 『最新版 仕訳がすぐわかる 経理・勘定科目事典』 ナツメ社、2007年、158項など。
しかし、内容を適切に示すため自己株式処分差益・自己株式処分差損勘定を使用したほうがよいと思われる。
自己株式処分差益に関する会計基準と制度会計
会計基準
自己株式処分差益に関する会計処理等を定めた会計基準としては、次のようなものがある。
自己株式処分差益の決算等における位置づけ等
自己株式処分差益の財務諸表における区分表示と表示科目
前述したように、自己株式処分差益はその他資本剰余金に計上し、その内訳科目として表示する。
貸借対照表 > 純資産の部 > 株主資本 > 資本剰余金 > その他資本剰余金
企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
9. 自己株式処分差益は、その他資本剰余金に計上する。
自己株式処分差益の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
自己株式の処分
自己株式を処分したときはその帳簿価額を自己株式勘定の貸方に記帳して減額するが、自己株式の処分の対価から自己株式の帳簿価額を控除した額(=自己株式処分差額)が正の値の場合(つまり、自己株式の処分により売却益が生じた場合)は、当該差額を自己株式処分差益勘定の貸方に記帳して処理をし、その他資本剰余金に計上する。
つまり、自己株式の処分は株主との資本取引と考え、その売却益は損益計算書に計上せず、貸借対照表の純資産の部のその他資本剰余金を直接増額する。
企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
9. 自己株式処分差益は、その他資本剰余金に計上する。
なお、自己株式の処分の際に要した手数料などの付随費用は、株式交付費勘定などで繰延資産として処理をするのではなく、支払手数料などの費用勘定の借方に記帳して費用処理をし、損益計算書では営業外費用として計上する。
企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用
14. 自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用は、 損益計算書の営業外費用に計上する。
実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い
(1) 株式交付費の会計処理
株式交付費(新株の発行又は自己株式の処分に係る費用)は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理する。
取引の具体例と仕訳の仕方
自己株式100万円を150万円で売却した。なお、売却には手数料として1万円を要した。
普通預金 | 1,490,000 | 自己株式 | 1,000,000 |
支払手数料 | 10,000 | 自己株式処分差益 | 500,000 |
自己株式処分差益の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、自己株式の処分は不課税取引として消費税の課税対象外である。
消費税法基本通達
(自己株式の取扱い)
5-2-9 法人が自己株式を取得する場合(証券市場での買入れによる取得を除く。)における株主から当該法人への株式の引渡し及び法人が自己株式を処分する場合における他の者への株式の引渡しは、いずれも資産の譲渡等に該当しない。
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