[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

勘定科目を体系的に分類し、仕訳の仕方等を解説した会計の実務的マニュアルです。


引当金―分類―評価性引当金―貸倒引当金の設定―貸倒見積額の算定―税法―貸倒引当金繰入限度額―個別評価


(" 必要経費―引当金―貸倒引当金―貸倒引当金繰入限度額―個別評価 "から複製)

個別評価とは

個別評価の定義・意味など

個別評価(こべつひょうか)とは、法上、貸倒引当金の繰入限度額の計算にあたり、個々の債権ごとに個別に評価することをいう。

個別評価の位置づけ・体系(上位概念等)

貸倒引当金の繰入限度額の計算方法

個別評価貸倒引当金の繰入限度額の計算方法のひとつである。

法(所得法・法人税法)では、貸倒引当金の設定に関して、個別評価によるものと一括評価によるものとに大別したうえ、それぞれに貸倒引当金の対象となる債権の範囲と貸倒引当金の繰入限度額を規定している。

  1. 一括評価一括評価貸金所得法)・一括評価金銭債権法人税法)が対象
  2. 個別評価個別評価貸金等所得法)・個別評価金銭債権法人税法)が対象

個別評価の目的・役割・意義・機能・作用など

必要経費損金算入の制限

貸倒懸念債権破産更生債権等などは貸倒損失としてその100%を費用計上したいところである。

しかし、貸倒損失に計上できるのは実際に回収不能となった(つまり、実際に貸倒れになった)場合に限られるので、その要件を満たしていない。

また、だからといって貸倒見積額の計上貸倒引当金の設定についても法上はこれを無制限に認めるわけにもいかない。

そこで、貸倒引当金の対象となる債権の範囲と貸倒引当金の繰入限度額を規定することにより、一定の費用計上は認めながらも、必要経費または損金に算入できる貸倒引当金を制限した。

貸倒引当金の対象となる債権の範囲と繰入限度額

貸倒引当金の対象となる債権の範囲
個別評価貸金等所得法)・個別評価金銭債権法人税法)

個別評価の対象となる債権は個別評価貸金等所得法)・個別評価金銭債権法人税法)である。

なお、会計上は「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号)が定める貸倒懸念債権破産更生債権等に相当する。

貸倒引当金の繰入限度額

個別評価貸金等所得法)・個別評価金銭債権法人税法)は次の4つに区分されていて、それぞれについて貸倒引当金の繰入限度額が規定されている(所得法施行令144条1項・法人税法施行令96条1項)。

計算は当該貸等・金銭債権に係る債務者ごとに行い、その合計額が繰入限度額となる。

なお、この区分に該当しない金銭債権一括評価貸金所得法)・一括評価金銭債権法人税法)として一括評価の対象となる。

個別評価貸金等個別評価金銭債権の区別貸倒引当金の繰入限度額
①債務者に生じた更生計画認可の決定等の事由により弁済が猶予され、または賦払により弁済される場合の貸等・金銭債権 その事由が生じた日の属する年の翌年1月1日から5年以内に弁済されることとなつている額以外の額(たとえば、10年後に返済されることになった額)
②債務者に債務超過の状態が相当期間継続しその営む事業に好転の見通しがない等の事由が生じている場合の貸等・金銭債権 その取立て等の見込みがないと認められる
③債務者に更生手続開始の申立て等の事由が生じている場合の貸等・金銭債権 金銭債権の額-取り立て等の見込みがあると認められる額)✕ 50%
④外国の政府等に対する金銭債権のうち、長期にわたる債務の履行遅滞によりその経済的な価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる事由が生じている場合の貸等・金銭債権 金銭債権の額-実質的に債権とみられない部分の額と取立て等の見込みがあると認められる額)✕ 50%

所得法施行令
個別評価貸金等に係る貸倒引当金勘定への繰入限度額
第百四十四条  法第五十二条第一項 (貸倒引当金)に規定する政令で定める事実は、次の各号に掲げる事実とし、同項 に規定する政令で定めるところにより計算した額は、当該各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める額とする。
 法第五十二条第一項 の居住者がその年十二月三十一日(その者が年の中途において死亡した場合には、その死亡の時。以下この項において同じ。)において有する貸等(同条第一項 に規定する貸等をいう。以下この条において同じ。)につき、当該貸等に係る債務者について生じた次に掲げる事由に基づいてその弁済を猶予され、又は賦払により弁済されること 当該貸等の額のうち当該事由が生じた日の属する年の翌年一月一日から五年を経過する日までに弁済されることとなつている額以外の額(担保権の実行その他によりその取立て又は弁済(以下この項において「取立て等」という。)の見込みがあると認められる部分の額を除く。)
 更生計画認可の決定
 再生計画認可の決定
 特別清算に係る協定の認可の決定
 イからハまでに掲げる事由に準ずるものとして務省令で定める事由
 法第五十二条第一項 の居住者がその年十二月三十一日において有する貸等に係る債務者につき、債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由により、当該貸等の一部の額につきその取立て等の見込みがないと認められること(当該貸等につき前号に掲げる事実が生じている場合を除く。) 当該一部の額に相当する
 法第五十二条第一項 の居住者がその年十二月三十一日において有する貸等に係る債務者につき次に掲げる事由が生じていること(当該貸等につき、第一号に掲げる事実が生じている場合及び前号に掲げる事実が生じていることにより同項 の規定の適用を受けた場合を除く。) 当該貸等の額(当該貸等の額のうち、当該債務者から受け入れた額があるため実質的に債権とみられない部分の額及び担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の額を除く。)の百分の五十に相当する
 更生手続開始の申立て
 再生手続開始の申立て
 破産手続開始の申立て
 特別清算開始の申立て
 イからニまでに掲げる事由に準ずるものとして務省令で定める事由
 法第五十二条第一項 の居住者がその年十二月三十一日において有する貸等に係る債務者である外国の政府、中央銀行又は地方公共団体の長期にわたる債務の履行遅滞によりその貸等の経済的な価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められること 当該貸等の額(当該貸等の額のうち、これらの者から受け入れた額があるため実質的に債権とみられない部分の額及び保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の額を除く。)の百分の五十に相当する

法人税法施行令
貸倒引当金勘定への繰入限度額
第九十六条  法第五十二条第一項 (貸倒引当金)に規定する政令で定める事実は、次の各号に掲げる事実とし、同項 に規定する政令で定めるところにより計算した額は、当該各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める額とする。
 法第五十二条第一項 の内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権に係る債務者について生じた次に掲げる事由に基づいてその弁済を猶予され、又は賦払により弁済されること 当該金銭債権の額のうち当該事由が生じた日の属する事業年度終了の日の翌日から五年を経過する日までに弁済されることとなつている額以外の額(担保権の実行その他によりその取立て又は弁済(以下この項において「取立て等」という。)の見込みがあると認められる部分の額を除く。)
 更生計画認可の決定
 再生計画認可の決定
 特別清算に係る協定の認可の決定
 イからハまでに掲げる事由に準ずるものとして務省令で定める事由
 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権に係る債務者につき、債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由により、当該金銭債権の一部の額につきその取立て等の見込みがないと認められること(当該金銭債権につき前号に掲げる事実が生じている場合を除く。) 当該一部の額に相当する
 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権に係る債務者につき次に掲げる事由が生じていること(当該金銭債権につき、第一号に掲げる事実が生じている場合及び前号に掲げる事実が生じていることにより法第五十二条第一項 の規定の適用を受けた場合を除く。) 当該金銭債権の額(当該金銭債権の額のうち、当該債務者から受け入れた額があるため実質的に債権とみられない部分の額及び担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の額を除く。)の百分の五十に相当する
 更生手続開始の申立て
 再生手続開始の申立て
 破産手続開始の申立て
 特別清算開始の申立て
 イからニまでに掲げる事由に準ずるものとして務省令で定める事由
 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権に係る債務者である外国の政府、中央銀行又は地方公共団体の長期にわたる債務の履行遅滞によりその金銭債権経済的な価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められること 当該金銭債権の額(当該金銭債権の額のうち、これらの者から受け入れた額があるため実質的に債権とみられない部分の額及び保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の額を除く。)の百分の五十に相当する



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