[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

勘定科目を体系的に分類し、仕訳の仕方等を解説した会計の実務的マニュアルです。


棚卸資産(たな卸資産)―会計処理―棚卸資産の評価―②棚卸資産の評価基準


棚卸資産の評価基準とは

棚卸資産の評価基準の定義・意味など

棚卸資産の評価基準(たなおろししさんのひょうかきじゅん)とは、期末棚卸資産時価取得原価帳簿価額)よりも下がった場合において、期末棚卸資産の最終的な貸借対照表価額を決定する基準をいう。

棚卸資産の評価基準の内容

棚卸資産の評価基準には次の2つがある。

  1. 時価を基準にして棚卸資産の価値を再評価する
  2. 原価法による評価額を基準にして棚卸資産の価値を再評価しない(原価法による評価額をそのまま使用する)

この点、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号)により、棚卸資産の評価基準としては、期末棚卸資産時価取得原価より低い場合は時価棚卸資産評価する低価法が強制適用される。

なお、次のページも参照。

決算―棚卸資産の評価(期末棚卸高の計算)

棚卸資産の評価基準の目的・役割・意義・機能・作用など

必要経費に算入する売上原価等の算定のためには、費用収益対応の原則から、いつ(日付)、いくらで(単価)、どれだけ(数量)仕入れた・購入した商品消耗品等が、いつ、いくら で、どれだけ費消されたのか(期中)、そして、その結果、期末時点で、いつ、いくらで仕入れた・購入した商品消耗品等がどれだけ残っているのかを確定しておく必要がある。

なぜならば、期末に売れ残っている在庫商品等は収益に結びついていない=収益に対応していないので、その分の費用を差し引く必要があるからである。

しかし、同じ商品等であっても仕入単価・購入単価が異なることがあるため、この作業は簡単にはいかない。

そこで、期中棚卸資産の払出単価と期末棚卸資産の単価(価値)を便宜的に決定するための方法、すなわち棚卸資産の評価方法が問題となる。

この点、棚卸資産の評価方法としては取得原価主義に基づく原価法が採用されている。

このように棚卸資産の評価方法として原価法が採用されているため、期末棚卸高取得原価帳簿価額となる。

しかし、期末においては、棚卸資産時価取得原価帳簿価額)よりも下がる場合も出てくる。

この場合、期末棚卸資産の最終的な貸借対照表価額を決定するうえで、時価を基準にして棚卸資産の価値を再評価すべきか、それとも棚卸資産の価値を再評価せずに原価法による評価額をそのまま使用するのか、ということが棚卸資産の評価方法の問題とは別に新たに問題となってくる。

これが棚卸資産の評価基準の問題である。

棚卸資産の評価基準の位置づけ・体系

商品の場合
期末商品の評価

商品については、棚卸資産の評価基準にしたがい、期末商品の価値の再評価を行う。

なお、この再評価は、決算時に行われる期末商品の評価という決算整理事項のひとつである。

この期末商品の評価には、次の2つの内容がある。

  1. 商品の数量の再評価 … 棚卸減耗の処理
  2. 商品の価値の再評価 … 商品評価損の処理

棚卸資産の評価基準の歴史・沿革・由来・起源・経緯など

従来、会計上は、棚卸資産の評価基準は原則として原価法によるものとされていた。

しかし、2009年(平成21年)3月期より、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」により、低価法が強制適用されることとなった。

原価法の経緯・沿革・歴史など

低価法の経緯・沿革・歴史など

なお、これに対して、法人税法上は原価法による評価を前提にしている。

したがって、会計上と法上の基準が異なることとなる。

通常は、法上の基準に基づくことが多い。

ただし、特例法(法人税法施行令第31条2項)により、継続適用を前提として、届出をすることにより、低価法による評価を行うことも認められている。

平成21年3月以降
低価法

前述したように、平成21年3月以降は、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」により、強制的に低価法により、棚卸資産評価することとなった。

低価法とは、資産取得原価時価とを比較し、いずれか低いほうの価額を期末資産評価額とする資産の評価基準をいう。

時価会計と似ているが、低価法は、含み益の認識はせずに含み損だけを認識するという点で、時価会計と異なる。

棚卸資産の評価に関する会計基準

棚卸資産の評価に関する会計基準」では、たとえば、通常の販売目的で保有する棚卸資産商品など)の評価基準については、次のように規定している。

通常の販売目的(販売するための製造目的を含む。)で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理する。

中小企業の会計に関する指針

中小企業の会計に関する指針」では、棚卸資産の評価基準につき、次のように規定している。

同指針では、「棚卸資産期末における時価帳簿価額より下落」したことに加えて、「額的重要性がある場合」に限定して時価評価するものとして、時価評価する範囲を「棚卸資産の評価に関する会計基準」よりも狭くしている。

27.棚卸資産の評価基準
(1) 棚卸資産期末における時価帳簿価額より下落し、かつ、額的重要性が ある場合には、時価をもって貸借対照表価額とする。
なお、次の事実が生じた場合には、その事実を反映させて帳簿価額を切り下 げなければならないことに留意する必要がある。
棚卸資産について、災害により著しく損傷したとき
② 著しく陳腐化したとき
③ 上記に準ずる特別の事実が生じたとき

(2) (1)における時価とは、原則として正味売却価額(売却市場における時価から 見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除した額)をいう。

平成21年3月期前
原価法または低価法

棚卸資産の評価基準には、次の2つがある。

上記のうち、どちらの基準を採用するのかは任意であるが(所定の手続きは必要)、原価法を採用している場合であっても、時価取得価額より著しく下落した場合は時価評価が強制されることになる(強制評価減)。



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