社債―発行―発行形態―割引発行
割引発行とは
割引発行の定義・意味など
割引発行(わりびきはっこう)とは、社債を額面金額よりも低い発行金額で発行することをいう。
たとえば、額面金額100円の社債を90円で発行することである。
割引発行の目的・役割・意義・機能・作用など
金利の調整
前払利息
割引発行は、社債の利率が市場利子率よりも低い場合、金利の調整のために行われる。
つまり、割引発行による額面金額と発行金額との差額は前払利息としての性格がある。
日本では、通常、社債の利率が市場利子率よりも低いため、割引発行が一般的である。
割引発行の位置づけ・体系(上位概念等)
社債の発行形態
社債には額面金額(社債金額。償還金額。返済しなければならない金額)と発行価額(払込金額)がある。
額面金額と発行価額との大小関係から、社債の発行形態は次の3つの種類に分類される。
割引発行の分類・種類
利付社債
利付社債とは、社債の償還期日までの間、決まった時期に利子・利息を受け取ることができる社債をいう。
つまり、利付社債では、社債の額面金額と取得価額の差額分の利益とは別に利益が発生することになる。
社債の応募者利回りが市場の平均金利よりも低いときに、社債の募集を容易にするために行われる。
割引債
割引債とは、社債券に利札がなく、利子・利息に相当する金額を社債の額面額から差し引いた金額で発行される社債をいう。
無利子債ともいわれる。
割引発行の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
社債・社債発行費
社債を割引発行したときは、(額面金額ではなく)発行価額を社債勘定(負債)の貸方に記帳して負債に計上する。
なお、従来、社債の額面金額と発行金額との差額は、社債発行差金勘定を用いて繰延資産に計上していたが、この会計処理は不要となった。
代わりに、当該差額(社債発行差金に相当する額)については、会社法を受けた「金融商品に係る会計基準」(企業会計基準第10号)では、期末(決算時)に償却原価法にもとづいて算定された価額を毎期計上していくものとしている。
具体的には、貸借対照表上、社債発行差金に相当する額を社債金額から直接控除することになる。
企業会計基準第10号 金融商品に係る会計基準
5.金銭債務
26. 支払手形、買掛金、借入金、社債その他の債務は、債務額をもって貸借対照表価額とする。 ただし、社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など、収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額をもって、貸借対照表価額としなければならない。
また、広告費・手数料・印刷費・登録免許税など社債発行に要した諸費用については、原則として、支出時に社債発行費勘定(費用)を用いて費用計上したうえ、営業外費用として処理する。
ただし、同じく社債発行費勘定(資産)を用いて繰延資産に計上することもできる。
「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第19号)
以上、詳細については次のページを参照。
取引の具体例と仕訳の仕方
社債を割引発行したとき
社債(額面総額1000万円)を900万円で割引発行した。なお、社債発行に要した諸費用は30万円であった。
当座預金 | 900万 | 社債 | 900万 |
社債発行費 | 30万 | 普通預金 | 30万 |
現在のページが属するカテゴリ内のページ一覧[全 17 ページ]
- 社債
- 社債―発行
- 社債―発行―発行形態
- 社債―発行―発行形態―平価発行
- 社債―発行―発行形態―割引発行
- 社債―発行―発行形態―打歩発行
- 社債―利払い
- 社債―決算整理事項―①社債の評価替え
- 社債―決算整理事項―①社債の評価替え―償却原価法
- 社債―決算整理事項―①社債の評価替え―償却原価法―利息法
- 社債―決算整理事項―①社債の評価替え―償却原価法―定額法
- 社債―決算整理事項―②社債発行費の償却
- 社債―決算整理事項―③社債利息の見越計上
- 社債―決算整理事項―④社債利息の未払分の計上
- 社債―償還
- 社債―償還―方法―満期償還
- 社債―償還―方法―買入償還
現在のページが属するカテゴリのサイトにおける位置づけ