納税―年末調整
年末調整とは
年末調整の定義・意味・意義
1年間に実際に毎月の給与や賞与から源泉徴収した所得税の合計額(源泉徴収税額)は、本来納めるべき年税額とは一致しないのが通常です。
年末調整とは、会社が、その年最後に給与等の支払いをする際に、源泉徴収税額と年税額とを比較し、その過不足分を、徴収しすぎた額は還付し、不足する額は徴収することをいいます。
年末調整制度の趣旨・目的・役割・機能
源泉徴収税額の過不足分の精算
年末調整は、源泉徴収税額と年税額とを比較し、その過不足分を精算するための制度です。
なお、会社が年末調整を行うことで、従業員は原則として(同じく「精算」のための制度である)確定申告をする必要がなくなります。
源泉徴収税額と実際の年税額が異なる理由
源泉徴収税額と年税額とが通常は異なる理由は、毎月源泉徴収される税額が、年間を通して給与の額・扶養家族に変更がないことを前提にしてあらかじめ決まっているからです。
しかし、実際には、年の途中で昇給・ベースアップにより給与の額が変動することがあります。
また、結婚や出生により扶養家族が増減したりしますが、年の途中で扶養家族などに異動があっても、その異動後の支払い分から修正することとされています。
しかし、すでに受け取っている給与から源泉徴収された所得税は修正されません。
さらに、配偶者特別控除や生命保険料、地震保険料の控除などは、年末調整の際に控除することとされています。
年末調整の根拠法令・法的根拠・条文など
所得税法
所得税法
(年末調整)
第百九十条 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、第一号に規定するその年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が二千万円以下であるものに対し、 その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合(その居住者がその後その年十二月三十一日までの間に当該支払者以外の者に当 該申告書を提出すると見込まれる場合を除く。)において、第一号に掲げる所得税の額の合計額がその年最後に給与等の支払をする時の現況により計算した第二 号に掲げる税額に比し過不足があるときは、その超過額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当し、その不足額は、その年最後に給与等 の支払をする際徴収してその徴収の日の属する月の翌月十日までに国に納付しなければならない。
年末調整の位置づけ・体系
申告納税制度の例外
そして、個人の所得税については、毎年、各個人が、暦年(1月1日~12月31日)を年度として決算を行い、翌年3月までに確定申告して納付するという申告納税方式を原則としています。
しかし、給与所得(いわゆるサラリーマンの給料)については、例外的に(例外とはいっても、例外のほうが原則より多いのですが)、社員に代わって会社が、源泉徴収や年末調整を行うことで社員と国の事務を代行する義務を負わされています。
そして、その結果、原則として、社員は確定申告をする必要がなくなります。
つまり、給与所得については、その大きな特色として、源泉徴収・年末調整・申告不要の制度がセットで適用されています。
年末調整制度の評価・批評・批判など
源泉徴収制度は日本独自の制度というわけではありません。
しかし、源泉徴収と年末調整をセットにして会社に義務づけているのは、日本だけともいわれています。
特に、年末調整制度は、「歳入の確保」のため、本来は国が行うべき徴収手続きを民間企業にやらせている(つまり、民間企業を徴税の道具として無料で利用している)日本独特の慣行であるとともに、納税者意識が薄まるものであるとの批判もあります。
年末調整の会計・簿記・経理上の取り扱い
年末調整で12月分の源泉所得税の預り金の金額より還付金の額が大きくなった場合
会計経理処理方法・簿記の記帳の仕方・使用する勘定科目等
年末調整で12月分に源泉徴収した金額より還付金の額が大きくなった場合、実務的には、通常、預り金の借方に計上して処理をする。
取引と仕訳の具体例・事例
給与:20万円
源泉所得税額:2万円
年末調整による源泉所得税の還付額:3万円
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
給与 |
200,000
|
現金 |
210,000
|
所得税預り金 |
30,000
|
所得税預り金 |
20,000
|
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