預り金
預り金とは 【deposit received】
預り金の定義・意味など
預り金(あずかりきん)とは、役員・従業員・取引先などから、後日その者に返金するか、または、その者に代わって第三者に支払いをするために、一時的に預かった金銭のうち、短期的に返還されるもの(決算日の翌日から1年以内に返済期日が到来するもの)を処理する負債勘定をいう。
参考:駒井伸俊 『世界一使いやすい!勘定科目と仕訳の事典』 秀和システム、2007年、134項。
預り金の科目属性
負債
預かった金銭は後日支払わなければならない債務なので、預り金は負債勘定である。
法人・個人の別
法人・個人
預り金は法人・個人で使用される勘定科目である。
預り金の範囲・具体例
預り金として処理するものとしては、具体的には、次のようなものがある。
他の勘定科目との関係
役員預り金・従業員預り金と所得税預り金・住民税預り金・社会保険料預り金
預り金勘定は、外部の取引先に対するものと内部の役員・従業員に対するものとを区別するため、役員・従業員に対するものについては役員預り金・従業員預り金勘定を用いる場合がある。
また、さらに内容を明確にするため、所得税預り金勘定・住民税預り金勘定(または所得税預り金と住民税預り金とを合わせて税金預り金勘定)・社会保険料預り金勘定などを用いることもある。
参考:『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、134項。
長期預り金・預り保証金
役員・従業員の身元保証金や取引先からの長期の営業保証金・入札保証金の受け入れなどは1年以内に返済する必要はないため、流動負債とはできない。
そこで、これらは、長期預り金勘定や預り保証金勘定などを使用して、固定負債として取り扱う。
借入金
預り金は金銭を一時的に預かっているだけなので、金銭を借り入れたときに使用する借入金勘定とは区別する必要がある。
預り金の決算等における位置づけ等
預り金の財務諸表における区分表示と表示科目
区分表示
流動負債
役員・従業員は、1年基準(ワン・イヤー・ルール)により処理をされ、短期(決算日の翌日から起算して1年以内に支払期限が到来するもの)は流動負債に属し、長期(決算日の翌日から起算して1年を超えて支払期限が到来するもの)は固定負債に属するものとして表示する。
企業会計原則注解
[注16] 流動資産又は流動負債と固定資産又は固定負債とを区別する基準について
…
貸付金、借入金、差入保証金、受入保証金、当該企業の主目的以外の取引によって発生した未収金、未払金等の債権及び債務で、貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に入金又は支払の期限が到来するものは、流動資産又は流動負債に属するものとし、入金又は支払の期限が一年をこえて到来するものは、投資その他の資産又は固定負債に属するものとする。
会社計算規則
(負債の部の区分)
第七十五条 …
2 次の各号に掲げる負債は、当該各号に定めるものに属するものとする。
一 次に掲げる負債 流動負債
…
ホ 通常の取引に関連して発生する未払金又は預り金で一般の取引慣行として発生後短期間に支払われるもの
表示科目
預り金
預り金は貸借対照表上も預り金として表示するのが原則である。
ただし、各種の預り金を区別して管理したほうが適当である場合は、それぞれ独立の科目を用いて表示する。
特に、役員または従業員からの預り金は、他の預り金と異なり会社内部の取引であるため、財務諸表等規則では、他の預り金と区別して表示することが求められている。
しかし、実務上は独立科目とはせずに、他の少額な流動負債とあわせてその他の流動負債として表示することも多い。
ただし、役員または従業員からの預り金の金額が負債と純資産の合計額の5%を超えるものについては、その内容を示す名称を付した科目をもつて別に掲記しなければならないとしている。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(流動負債の区分表示)
第四十九条 流動負債に属する負債は、次に掲げる項目の区分に従い、当該負債を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。…
…
十 預り金。ただし、株主、役員又は従業員からの預り金を除く。
…
十四 その他
…
第五十条 前条第一項第十四号に掲げる項目に属する負債のうち、株主、役員若しくは従業員からの短期借入金等の短期債務又はその他の負債で、その金額が負債及び純資産の合計額の百分の五を超えるものについては、当該負債を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
預り金の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
金銭を一時的に預かったときは、預り金勘定の貸方に記帳して負債計上する。
そして、後日、預かった金銭を支払ったときは、預り金勘定の借方に記帳して減少させる。
給与の法定控除等
役員・従業員の給与・賞与はその全額を支給するのではなく、税金(源泉所得税・個人住民税)や社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料など)などを差し引いた額を支給する。
ただし、給与手当・役員報酬勘定の借方に記帳して費用計上すべき金額は、控除後の手取り額ではなく、控除前の給料の全額である。
他方、控除した額は預り金勘定(負債)※の貸方に記帳して負債計上するとともに、役員・従業員に実際に支払った額を現金預金勘定の貸方に記帳して減少させる。
※内容を明確にするため、所得税預り金勘定・住民税預り金勘定(または所得税預り金と住民税預り金とを合わせた税金預り金勘定)・社会保険料預り金勘定などを用いることもある。
参考:『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、134項。
そして、後日、会社等が役員・従業員に代わって税務署や年金事務所に納付することになる。
なお、源泉所得税は、扶養控除届出書を役員・従業員に毎年書いてもらい、それにもとづき源泉徴収税額を計算する。
個人住民税は、市役所から送られてくる1年間分の住民税の通知にもとづき記帳する。
預り金の管理
補助科目の作成等
預り金には、さまざまな種類があり、それぞれ支払の時期が異なる。
特に、源泉所得税、住民税、社会保険料は、その支払期日までに納付しないと、延滞税や不納付加算税といった附帯税を負担しなければならなくなる。
なお、さらに、この附帯税は、罰金としての性格があるため、法人税の課税所得の計算上は、損金不算入となる。
そこで、源泉所得税、住民税、社会保険料、旅行積立金などの補助科目を設けて、残高や期日を管理したほうがよい。
または、前述したように、外部の取引先に対するものと内部の従業員に対するものとを区別するため、従業員に対するものについては従業員預り金勘定を用いてもよい。
また、さらに内容を明確にするため、所得税預り金勘定、 社会保険料預り金勘定などを用いてもよい。
取引の具体例と仕訳の仕方
従業員に支払う給与から源泉徴収等したとき
給与を源泉所得税・住民税・社会保険料を控除して銀行振込で支払った。
給料手当 | ✕✕✕✕ | 預り金(源泉所得税) | ✕✕✕✕ |
預り金(住民税) | ✕✕✕✕ | ||
預り金(社会保険料) | ✕✕✕✕ | ||
普通預金 | ✕✕✕✕ |
専門家に支払う報酬から源泉徴収したとき
弁護士報酬(または監査報酬など)20万円を源泉所得税(10%、2万円)を預かって、18万円を現金で支払った。
支払手数料 | 20万 | 現金 | 18万 |
預り金 | 2万 |
年末調整
次のページを参照。
預り金の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、預り金は不課税取引として消費税の課税対象外である。
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