[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

勘定科目を体系的に分類し、仕訳の仕方等を解説した会計の実務的マニュアルです。


販売管理費―人件費―従業員―従業員退職金


(" 退職金(退職給付・退職給与) "から複製)

退職金とは

退職金の定義・意味など

退職金(たいしょくきん)とは、従業員や役員が退職する際に、その過去の勤務に対して一時に支払われる慰労金である退職一時金企業年金制度から給付される退職年金を処理する費用勘定をいう。

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(定義)
第八条  

54  この規則において「退職給付」とは、退職以後に従業員等(財務諸表提出会社と雇用関係にある使用人及び当該財務諸表提出会社役員退職給付制度の対象となる者に限る。)をいう。次項、第五十六項及び第五十八項において同じ。)に支払われる退職一時金及び退職年金をいう。

退職金の別名・別称・通称など

退職給付退職給与

財務諸表等規則では退職給付(たいしょくきゅうふ)という用語が使用されている。

また、法人税基本通達では退職給与(たいしょくきゅうよ)という用語も使用されている。

法人・個人の別

法人・個人

退職金は法人・個人で使用される勘定科目である。

退職金の分類・種類

退職一時金・退職年金

企業退職給付制度には、一般的に退職金と呼ばれる退職一時金と、厚生年金基金などの退職年金がある。

  1. 退職一時金
  2. 退職年金

なお、所得法上の退職所得は、「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与」と定義されており、退職年金は含まれていない。

所得
(退職所得
第三十条 退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」という。)に係る所得をいう。

退職金の性格・性質

退職金は、過去の労働に対する対価(つまり、過去の給与の後払い)としての性格と、過去の労働に対する功労金としての性格(つまり、利益処分的な性格)とをあわせもっている。

退職金勘定の範囲・具体例

確定給付企業年金

確定給付企業年金退職金勘定で処理をする。

解雇予告手当

労働基準法上、労働者を解雇する場合には、 原則として、少なくとも30日前に解雇の予告をするか、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないと規定されているが、これを解雇予告手当という。

この解雇予告手当は、所得基本通達により、給与としてではなく退職手当等に該当するものとされている。

したがって、解雇予告手当を従業員に支払ったときは、給与ではなく退職金勘定で処理をする。

所得基本通達
解雇予告手当
30-5 労働基準法第20条《解雇の予告》の規定により使用者が予告をしないで解雇する場合に支払う予告手当は、退職手当等に該当する。

No.2736 解雇予告手当未払賃金立替払制度に基づき国が弁済する未払賃金を受け取ったとき (退職所得)|源泉所得税国税庁 http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2736.htm

退職金の目的・役割・意義・機能・作用など

対策・節方法としての退職金

退職金は、節対策・節方法のひとつとして、高い節効果がある。

後述するように、法人税法上、退職金は優遇されている。

すなわち、従業員はもちろんのこと、社長・役員、そして家族従業員に退職金を支給した場合、支給額が相当・適正であるかぎり、その全額の損金算入が認められている。

退職金制上の優遇措置が、会社設立・法人化のメリットの一つとされている。

会社設立(法人化・法人成り)のメリット - 手続き・申請・届出・内容証明郵便など法律問題その他事務手順

また、所得法上も、退職金は優遇されている。

すなわち、退職金控除という給与所得控除より手厚い控除があり、しかも、その控除後の所得の半分だけが課され、さらに給与所得とは別個に課され(分離課)、率も低くなる。

したがって、退職金を受け取る側にとっても、特に、社長をはじめ役員については、月々の役員報酬というかたちではなく、退職金というかたちで多くもらうほうが、租税負担、社会保険料負担がともに大幅に軽減されることになる(実際の手取額でかなりの差が出る)。

他の勘定科目との関係

役員退職金

役員に対する退職金については、従業員に対する退職金と区別して、特に役員退職金勘定を使用する場合もある。

退職金勘定決算等における位置づけ等

退職金勘定財務諸表における区分表示表示科目

損益計算書経常損益の部 > 営業損益の部 > 販売費及び一般管理費退職金

退職金会計簿記経理上の取り扱い

会計処理方法

使用する勘定科目・記帳の仕方等
退職金退職給付引当金

退職金を支払ったときは、退職金勘定借方に記帳して費用計上する。

ただし、退職金は従業員等が勤務していた過去の労働力に対して支払われるものなので、実際に退職金を支払った会計期間に全額費用計上することは妥当ではない。

そこで、決算時に将来の退職給付のうち当期に属する部分を見積もり、退職給付引当金繰入(または退職給付費用勘定費用)で毎期費用計上して、退職給付引当金負債)を設定するのが、会計上は望ましい処理である。

そして、実際に退職金を支払ったときは、その退職者に設定されていた退職給付引当金を取り崩し、引当金で足らない場合はその不足額を退職金勘定借方に記帳して費用計上する。

所得源泉徴収
源泉徴収の要否

退職金給与ではないので社会保険料等の控除は不要であるが、所得法上、退職所得として所得住民税源泉徴収は必要になる。

なお、退職所得には退職所得控除の適用があるので、退職者から「退職所得の受給に関する申告書」を提出してもらう。

同申告書の提出がない場合は、20%の率で源泉徴収を行う。

退職金の原資

次のページを参照。

退職金原資の確保の方法・手段

取引の具体例と仕訳の仕方

退職給付引当金を設定していない場合

取引

退職金現金で支払った。なお、退職給付引当金は設定していない。

仕訳

借方科目
貸方科目
退職金 ✕✕✕✕ 現金 ✕✕✕✕
預り金 ✕✕✕✕

退職給付引当金を設定している場合
退職給付引当金で足りるとき

取引

退職金現金で支払った。なお、退職給付引当金を設定している

仕訳

借方科目
貸方科目
退職給付引当金 ✕✕✕✕ 現金 ✕✕✕✕
預り金 ✕✕✕✕

退職給付引当金で足らないとき

取引

退職金現金で支払った。なお、退職給付引当金は設定しているが、支払いには不足していた。

仕訳

借方科目
貸方科目
退職給付引当金 ✕✕✕✕ 現金 ✕✕✕✕
退職金 ✕✕✕✕ 預り金 ✕✕✕✕

退職金務・法・制上の取り扱い

必要経費算入(所得法)・損金算入法人税法)の可否

次のページを参照。

退職金(退職給与)―税務―必要経費算入・損金算入

退職金の課・非課・免・不課(対象外)の区分

不課税取引課税対象外)

退職金不課税取引として、消費税の課税対象外である。



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