販売管理費―人件費―役員―役員給与―役員報酬
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役員報酬とは
役員報酬の定義・意味など
役員報酬(やくいんほうしゅう)とは、取締役、監査役など会社の役員に対して、その職務執行の対価として支払われる役員給与のうち、次のいずれかのものをいう(法人税法第34条)。
法人のみ使用する用語である。
上記に該当しない給与は、法人税法上、役員賞与等として取り扱われ、損金算入は認められない。
このように、役員報酬については、いわゆる「お手盛り」や租税回避の弊害を防止するため、会社法や法人税法でさまざまな制限が設けられている。
役員報酬の位置づけ・体系(上位概念等)
役員給与
なお、法人税法上、役員給与は、役員報酬も含め、次の3つの種類に分類され、それぞれその取り扱いが異なる。
役員報酬の範囲・具体例
役員報酬については、租税回避の弊害を防止する見地から法人税法において制限が設けられている。
その詳細については、次のページを参照。
役員報酬と関係する概念
役員賞与
2006年(平成18年)施行の会社法
会計上、役員報酬は費用処理されるが、役員賞与については、従来は株主総会の利益処分として処理されていた。
しかし、2006年(平成18年)施行の会社法により、一定の役員賞与も役員報酬と同様に費用計上することになった。
役員報酬の規制
会社法上の取り扱い
役員報酬の決定方法
しかし、役員報酬は、役員自らが自由に決定できるので、いわゆる「お手盛り」の弊害により、株主の利益が害されるおそれがある。
そこで、会社法上、役員報酬は、従業員の給料とは区別され、その報酬額等が定款または株主総会の決議で定められることとしている。
会社法
(取締役の報酬等)
第三百六十一条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容
法人・個人の別
法人
役員報酬の目的・役割・意義・機能・作用など
給与等(「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与」)は所得税法上給与所得として取り扱われている。
所得税法
(給与所得)
第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
しかし、給与等の会計上の取扱いについては、役員、使用人兼務役員、従業員(使用人)とでは異なる。
そこで、会計上、役員などの給与等は従業員の給与等とは区別して役員報酬勘定を用いる。
節税対策・節税方法としての役員報酬
実際、零細企業(特に、一人会社)では、役員報酬や役員退職金といった役員給与は、節税対策として使用されていることも多い。
ただし、役員報酬として損金算入が認められるには、法人税法上、一定の制限が加えられていて、定期同額であること等が条件とされ、臨時のボーナスなどは認められない(これに対して、従業員の臨時ボーナスは経費として認められる)。
したがって、役員報酬を節税対策として使用する場合、その最適額(会社の税金と役員の税金をトータルで考えて一番有利な報酬額)は、予想利益との関係で事前に決定しなければならないことになる。
そして、そのためには、正確なシミュレーションが必要となる。
役員報酬の変更の手続きについては、次のページを参照。
役員報酬―役員報酬の変更―手続き - 手続き・申請・届出・内容証明郵便など法律問題その他事務手順
なお、役員報酬を給与として処理しても、税法上は問題ないが、中小企業会計基準には準拠していないことになるため、銀行借入や経営審査が必要とされる場合には不適。
役員報酬の決算等における位置づけ等
役員報酬の財務諸表における区分表示と表示科目
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業損益の部 > 販売費及び一般管理費 > 役員報酬
区分表示
販売費及び一般管理費
役員報酬は販売費及び一般管理費に属するものとして表示する。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(販売費及び一般管理費の範囲)
第八十四条 会社の販売及び一般管理業務に関して発生したすべての費用は、販売費及び一般管理費に属するものとする。
金融庁総務企画局 『「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(財務諸表等規則ガイドライン)』
84 規則第84条に規定する販売費及び一般管理費に属する費用とは、会社の販売及び一般管理業務に関して発生した費用例えば販売手数料、荷造費、運搬費、広告宣伝費、見本費、 保管費、納入試験費、販売及び一般管理業務に従事する役員、従業員の給料、賃金、手当、 賞与、福利厚生費並びに販売及び一般管理部門関係の交際費、旅費、交通費、通信費、光熱費及び消耗品費、租税公課、減価償却費、修繕費、保険料、不動産賃借料及びのれんの償却額をいう。
役員報酬の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
給与を支払ったとき
役員に給与を支払ったときは役員報酬勘定の借方に記帳して費用計上する。
(法定控除等)
役員の給与・賞与はその全額を支給するのではなく、税金(源泉所得税・個人住民税)や社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料など)などを差し引いた額を支給する。
ただし、役員報酬勘定の借方に記帳して費用計上すべき金額は、控除後の手取り額ではなく、控除前の給料の全額である。なお、役員は雇用保険に加入できないので、雇用保険料の控除は行わない。
他方、控除した額は預り金勘定(負債)※の貸方に記帳して負債計上するとともに、役員に実際に支払った額を現金預金勘定の貸方に記帳して減少させる。
※内容を明確にするため、所得税預り金勘定・住民税預り金勘定(または所得税預り金と住民税預り金とを合わせた税金預り金勘定)・社会保険料預り金勘定などを用いることもある。
参考:『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、134項。
そして、後日、会社等が役員に代わって税務署や年金事務所に納付することになる。
なお、源泉所得税は、扶養控除届出書を役員に毎年書いてもらい、それにもとづき源泉徴収税額を計算する。
個人住民税は、市役所から送られてくる1年間分の住民税の通知にもとづき記帳する。
費用の認識基準(計上時期・期間帰属)
支払日計上
すなわち、役員報酬は、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与のいずれかに限り、損金算入が認められている。
このうち、一般的には、定期同額給与というかたちで支給されることが多い。
そのため、役員の給与については、まず税法上の要請・条件を満たす必要があるので、従業員の給与のように期間対応ということは考慮しなくてもよい。
したがって、役員報酬については、従業員の給与のように未払金を計上せず、支払日で計上するのが通常である。
役員報酬に関する事務
社会保険
(新たに役員が就任した場合)
社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金)の適用事業所で役員が新たに就任した場合は、資格取得時決定のために、被保険者資格取得届をする必要がある。
被保険者資格取得届とその手続きについてはそれぞれ次のページを参照。
(定時報告)
定時決定のために、7月1日現在のすべての被保険者について、その年の4月・5月・6月に支払われた報酬月額等を年金事務所に届け出る算定基礎届をする必要がある。
算定基礎届とその手続きについてはそれぞれ次のページを参照。
(役員報酬に著しい変動があった場合)
社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入している役員の報酬に著しい変動があった場合において、一定の要件を満たしているときには、随時改定のため、月額変更届をする必要がある。
月額変更届とその手続きについてはそれぞれ次のページを参照。
取引の具体例と仕訳の仕方
給料を支払ったとき
役員の給料を源泉所得税・個人住民税・社会保険料を控除して銀行振込で支払った。
給料手当 | ✕✕✕✕ | 預り金(所得税) | ✕✕✕✕ |
預り金(住民税) | ✕✕✕✕ | ||
預り金(社会保険料) | ✕✕✕✕ | ||
普通預金 | ✕✕✕✕ |
役員報酬の税務・税法・税制上の取り扱い
役員報酬の法人税法上の取り扱い
前述のように、役員報酬については、「お手盛り」の弊害を防止する見地から会社法による制限が設けられているほか、租税回避の弊害を防止する見地から法人税法においても制限が設けられている。
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
原則
不課税取引(課税対象外)
例外
課税取引
例外的に、通勤手当や現物給与は課税取引に該当し、仕入税額控除の対象となる。
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