勘定科目―分類①―特別なグループ―対照勘定
対照勘定とは
対照勘定の定義・意味など
対照勘定(たいしょうかんじょう)とは、簿記上の取引(会計取引)には該当しないが、備忘記録のため、借方(たとえば、「◯◯義務見返り」など)と貸方(たとえば、「◯◯義務」など)といった一対の同一金額の勘定科目で表し、消滅する際も同じという勘定をいう。
参考:日本経済新聞社 『会計用語辞典』 日本経済新聞出版社、1978年、119頁。
対照勘定の特色・特徴
対照勘定は常に一対で用いられ、片方だけが用いられるということはない。
日本経済新聞社 『会計用語辞典』 日本経済新聞出版社、1978年、119頁。
対照勘定と関係する概念
備忘勘定
対照勘定をさして備忘勘定と呼ぶ向きもある。
日本経済新聞社 『会計用語辞典』 日本経済新聞出版社、1978年、147頁。
備忘勘定は、いわゆる1円勘定のように対照表示によらないものと、保証債務勘定と保証債務見返勘定のように対照表示によるものとに大別できるので、前者を一方的備忘勘定と称し、後者を対照的備忘勘定と称して区別することが望ましいように思われる。対照的備忘勘定は、備忘勘定であると同時に対照勘定とも称されているものである…
対照勘定の具体例
特殊商品売買
試用販売
試用販売のために商品を試送した場合、対照勘定法によるときは、試用品の売価を試用販売未収金(または試用販売契約・試用販売売掛金)/試用仮売上(または試用販売)という対照勘定を用いて備忘記録する。
『日商簿記2級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、56項。
割賦販売
割賦販売の収益の認識基準につき、割賦基準(回収期限到来基準(支払期限到来基準)または現金回収基準(回収基準))による場合、対照勘定法によるときは、割賦販売をしたときに、その売価を割賦販売未収金(または割賦販売売掛金・割賦販売契約)勘定と割賦仮売上(または割賦販売)勘定という一対の対照勘定を用いて備忘記録する。
『日商簿記2級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、53項。
保証債務
債務の保証を行った場合に発生する偶発債務を対照勘定法により備忘記録するには、保証債務見返/保証債務という対照勘定を用いる。
手形
手形の裏書譲渡
手形の裏書譲渡をした場合に発生する偶発債務を対照勘定法により備忘記録するには、裏書義務見返/裏書義務(または手形裏書義務見返/手形裏書義務)という対照勘定を用いる。
手形の割引
手形の割引をした場合に発生する偶発債務を対照勘定法により備忘記録するには、割引義務見返/割引義務(または手形割引義務見返/手形割引義務)という対照勘定を用いる。
有価証券
担保
有価証券を担保として差し入れた側
資金を借り入れて有価証券を担保として差し入れた場合は、所有権は移転していないが、手許からなくなるので、他人に有価証券を差し入れたことを備忘記録するため、差入有価証券/有価証券という対照勘定※を用いる。
※厳密には対照勘定とはいえないが、『会計上の備忘勘定と対照勘定』(久野光朗、1964年)において「対照的備忘勘定」として位置づけられていることにここでは倣った。
有価証券を担保として受け入れた側
資金を貸し付けて有価証券を担保として受け入れた場合は、所有権は移転していないが、他人の有価証券を所有していることを備忘記録するため、保管有価証券/預り有価証券という対照勘定を用いる。
貸借
有価証券を貸し付けた場合は、所有権は移転していないが、手許からなくなるので、他人に有価証券を貸し付けたことを備忘記録するため、貸付有価証券/有価証券という対照勘定※を用いる。
※厳密には対照勘定とはいえないが、『会計上の備忘勘定と対照勘定』(久野光朗、1964年)において「対照的備忘勘定」として位置づけられていることにここでは倣った。
有価証券を借り入れた側
有価証券を借り入れた場合は、所有権は移転していないが、他人の有価証券を借りていることを備忘記録するため、保管有価証券/借入有価証券という対照勘定を用いる。
対照勘定の位置づけ・体系(上位概念等)
特殊商品売買の会計処理の方法
未着品売買と委託販売の会計処理には、手許商品区分法と対照勘定法の2つがあるが、簿記検定試験2級では主に手許商品区分法が出題される。
試用販売の会計処理には、手許商品区分法と対照勘定法の2つがある。
割賦販売の会計処理には、収益の認識基準として割賦基準(回収期限到来基準(支払期限到来基準)または現金回収基準(回収基準))による場合、対照勘定法と未実現利益控除法(未実現利益整理法)の2つがある。
偶発債務の備忘記録
勘定科目の特別なグループ
勘定科目は、その性質により、資産・負債・資本・費用・収益の5つのグループに大別される。
ただし、このグループに単純には分類できない、次のような特別な勘定科目のグループもある。
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