法定福利費
法定福利費とは
法定福利費の定義・意味など
法定福利費(ほうていふくりひ)とは、社会保険料(広義)のうち会社が負担すべき金額を処理する費用勘定をいう。
法人・個人の別
法人・個人
法定福利費は法人・個人で使用される勘定科目である。
法定福利費の範囲・具体例
法定福利費で処理する費用は、健康保険法・介護保険法・厚生年金保険法・労働基準法・労働者災害補償保険法・雇用保険法などの法律で定められている福利厚生にかかる次の社会保険料である。
他の勘定科目との関係
福利厚生費
法律に基づいて支出する法定福利費以外に、会社が任意で支出する福利厚生費(狭義の福利厚生費)もあるが、法定福利費とこの狭義の福利厚生費とをあわせて福利厚生費(広義の福利厚生費)勘定で処理してもよい。
預り金
ただし、社会保険料(狭義)と雇用保険料は法定福利費勘定で処理することもできる。
特に、雇用保険料については法定福利費に計上して処理したほうが簡単である。
法定福利費の決算等における位置づけ等
法定福利費の財務諸表における区分表示と表示科目
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業損益の部 > 販売費及び一般管理費 > 法定福利費
区分表示
販売費及び一般管理費
法定福利費は一般管理業務に関して発生した
費用として販売費及び一般管理費に属するものとして表示する。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(販売費及び一般管理費の範囲)
第八十四条 会社の販売及び一般管理業務に関して発生したすべての費用は、販売費及び一般管理費に属するものとする。
法定福利費の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
負担割合
会社または個人事業主と従業員の社会保険料の負担割合は保険の種類により異なる。
すなわち、健康保険料・介護保険料(第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の介護保険料)・厚生年金保険料は、会社等と従業員とで折半する。
なお、個人事業主自身の社会保険料については会計処理は不要である。
確定申告の際に、支払った社会保険料を社会保険料控除として申告するのみである。
使用する勘定科目・記帳の仕方等
社会保険料(狭義)の場合
預り金・法定福利費
社会保険料(狭義)については、会社等が従業員が負担する前月分の社会保険料を当月分の給料から控除(天引き)したうえ、月末までに会社等の負担分(児童手当拠出金含む)とあわせて年金事務所に納付する。
たとえば、3月分の社会保険料は4月の給料から控除し、4月末までに納付する。
この場合の会計処理は、給料を支払うときに従業員が負担する社会保険料の控除分を預り金(または預り金の内容を明確にするために、従業員預り金または社会保険料預り金)勘定の貸方に記帳して負債計上する。
前述したように、社会保険料(狭義)は、法定福利費勘定を使用することもできる。
なお、給料から控除するものには、社会保険料のほか、税金(源泉所得税と住民税(特別徴収の場合))があるが、これもやはり預り金(または預り金の内容を明確にするために、源泉所得税預り金・住民税預り金)勘定などで処理をする。
そして、月末までに預かった本人負担分と会社等の負担分の社会保険料をあわせて年金事務所に納付したときに預り金勘定と法定福利費勘定の借方に記帳して最終的な処理を行う。
労働保険料の場合
労働保険料のうち、労働者災害補償保険料は会社等が全額を負担するが、雇用保険料は会社等と従業員とで一定割合を負担する(原則として折半)。
ただし、労働保険料は、1年度分を概算で計上し3回に分割して納付し、確定申告で清算するため、会計処理は複雑となる。
会社により処理の仕方は異なる。
なお、雇用保険料については、社会保険料(狭義)と同様の会計処理を行うが、納付時に全額を法定福利費で処理をし、その後、従業員の給料から天引きするたびに法定福利費を減額していくという簡易的な方法もある。
取引の具体例と仕訳の仕方
社会保険料(狭義)の場合
給与を支払ったとき
従業員に本人負担分の社会保険料を差し引いた給与を銀行振込で支払った。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
給与 |
✕✕✕✕
|
預り金(本人負担分) |
✕✕✕✕
|
普通預金 |
✕✕✕✕
|
毎月の社会保険料を納付したとき
従業員から預かった社会保険料を事業主負担分とあわせ当月末に納付した。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
法定福利費(会社等の負担分) |
✕✕✕✕
|
普通預金 |
✕✕✕✕
|
預り金(本人負担分) |
✕✕✕✕
|
労働保険料の場合
雇用保険料の場合
概算支払時
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
立替金 |
✕✕✕✕
|
普通預金 |
✕✕✕✕
|
法定福利費 |
✕✕✕✕
|
立替金は被保険者(従業員)負担分で、法定福利費は事業主負担分。
給料支払時
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
給与 |
✕✕✕✕
|
預り金 |
✕✕✕✕
|
普通預金 |
✕✕✕✕
|
預り金は被保険者(従業員)負担分。預り金勘定の代わりに立替金勘定を用いるところもある。
労働保険料確定時
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
預り金 |
✕✕✕✕
|
立替金 |
✕✕✕✕
|
法定福利費 |
✕✕✕✕
|
普通預金 |
✕✕✕✕
|
従業員負担分で概算支払していた立替金勘定は、年度末に労働保険料が確定したときに、預り金勘定(従業員負担分)と相殺する。
法定福利費の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
法定福利費は消費税の課税対象外である。
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