手形譲渡損
手形譲渡損とは
手形譲渡損の定義・意味など
手形譲渡損(てがたじょうとそん)とは、手形割引をした場合の手形額面金額と手取額との差額(手形の満期日までの利息(割引料)と手数料)を処理するための費用勘定をいう。
法人・個人の別
法人・個人
手形譲渡損は法人・個人で使用される勘定科目である。
手形譲渡損に関する会計基準と制度会計
会計基準
中小企業の会計に関する指針
「中小企業の会計に関する指針」では、手形割引については手形譲渡損勘定で処理をすることとされている(「損益計算書の例示」等)。
ただし、後述するように「金融商品会計に関する実務指針」では手形売却損勘定で処理をすることとされている。また、弥生会計(弥生会計 16)などの会計ソフトでも「手形売却損」という科目名が使用され、法人税基本通達でも「手形売却損」という用語が使用されている例がある。
14.金銭債権の譲渡
手形の割引又は裏書及び金融機関等による金銭債権の買取りは、金銭債権の譲渡に該当する。したがって、手形割引時に、手形譲渡損が計上される。
他の勘定科目との関係
手形売却損
「金融商品会計に関する実務指針」においては、手形割引における手形の額面金額と手取額との差額(手形の満期日までの利息(割引料)と手数料)については、手形譲渡損ではなく手形売却損勘定で処理をすることが規定されている。
金融商品会計に関する実務指針
割引手形及び裏書譲渡手形の会計処理
136. 割引手形及び裏書譲渡手形については、原則として新たに生じた二次的責任である保証債務を時価評価して認識するとともに、割引による入金額又は裏書による決済額から保証債務の時価相当額を差し引いた譲渡金額から、譲渡原価である帳簿価額を差し引いた額を手形売却損益として処理する。
利子割引料(支払利息割引料)(または割引料)
手形割引を手形の売買ではなく文字通り手形の割引と解して、手形割引における手形の額面金額と手取額との差額を手形の割引料としてとらえると、手形売却損の代わりに利子割引料(支払利息割引料)(または割引料)勘定で処理することもできる。
参考:袴田 正美,袴田 幸江 『経理 勘定科目のことがよくわかる事典』 西東社、2007年、198項。
ただし、金融商品会計導入により、手形割引は手形の売買として解されるようになったため、手形譲渡損(または手形売却損)勘定を使用するほうが適切といえる。
金融商品会計に関する実務指針
割引手形及び裏書譲渡手形
251. 手形割引は、手形の所持人が満期前に第三者に手形を譲渡し、その対価として譲渡の日以後満期に至るまでの金利相当額(割引料と呼ばれる。)を手形額面金額から差し引いた金額を受け取る取引である。
手形譲渡損の範囲
手数料
『パッと引いて仕訳がわかる 逆引き勘定科目事典』(岩崎恵利子著、シーアンドアール研究所、2009年)では、手形譲渡損は割引料のみを含むものとし、手数料については別途支払手数料勘定で処理をする仕訳例が掲載されている。
しかし、継続適用を前提に(→継続性の原則)、経理自由の原則から、手形譲渡損勘定で割引料とあわせて手数料を処理してもよいのではないかと考える(私見)。
また、「中小企業の会計に関する指針」の「損益計算書の例示」でも、手形譲渡損があるにもかかわらず、支払手数料の表示はない。
手形譲渡損の決算等における位置づけ等
手形譲渡損の財務諸表における区分表示と表示科目
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業外損益の部 > 営業外費用 > 手形譲渡損
手形譲渡損の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
手形を割引いた場合は、手形代金を受け取る権利がなくなるので、受取手形勘定(資産)の貸方に記帳して減少させるとともに、手取額は、当座預金勘定などの借方に記帳するが、手形の額面金額と手取額との差額のうち割引料は手形譲渡損勘定(営業外費用)の借方にそれぞれ記帳して費用処理をする。
取引の具体例と仕訳の仕方
所持していた約束手形1,000,000円を銀行で割り引き、割引料20,000円と手数料1,080円を控除した金額が普通預金口座に入金された。
普通預金 | 978,920 | 受取手形 | 1,000,000 |
手形譲渡損 | 20,000 | ||
支払手数料 | 1,080 |
参考として、割引料については手形譲渡損勘定で、そして、手数料については支払手数料勘定でそれぞれ処理をする仕訳例を掲載した。
岩崎恵利子 『パッと引いて仕訳がわかる 逆引き勘定科目事典』 シーアンドアール研究所、2009年、185項。
手形譲渡損の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
非課税取引
消費税法上、手形譲渡損は非課税取引として、仕入税額控除の対象とならない。
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