売上割引
売上割引とは
売上割引の定義・意味など
売上割引(うりあげわりびき)とは、販売側が割引した場合(掛取引を行った場合、その掛代金が支払期日前に支払われたときに、その支払期日の短縮による利息分を免除(ディスカウント)した場合)の割引額を処理する費用勘定をいう。
売上割引の性格・性質
費用
通常、掛取引を行った場合、掛代金には取引日から掛代金の支払期日までの利息が含まれている。
しかし、その掛代金が支払期日前に支払われた場合には、その支払期日の短縮による利息分を免除すること(ディスカウント)が行われる(→割引)。
『日商簿記2級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、28項。
したがって、売上割引は利息としての性格を有しており、換言すれば、売掛金の回収の前倒しに対する対価、つまり、早期に代金を回収できたことに対する金融上の費用といえる。
法人・個人の別
法人・個人
売上割引と関係する概念
仕入割引
割引は、販売側では売上割引勘定、仕入側では仕入割引勘定を使用する。
売上値引・売上返品(売上戻り)・売上割戻
売上割引と売上値引・売上割戻は商品代金を引き下げるという点で共通する。
ただし、商品代金を引き下げる理由がそれぞれ異なるため、会計上は区別して考える。
なお、売上値引・売上返品・売上割戻の会計処理の方法は同じであるが、売上割引だけは異なる(後述)。
『日商簿記2級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、27項。
売上割引の目的・役割・意義・機能・作用など
総額主義
企業会計原則では総額主義が原則とされているが(→総額主義の原則)、売上値引・売上返品・売上割戻については、実務上、重要性の原則から純額主義による会計処理が一般的である。
つまり、商品等の販売時の貸借反対仕訳をして売上勘定を直接減額・控除して純売上高を記載する。
しかし、売上割引はそれが利息としての性格を有すること(売上割引は早期に代金を回収できたことに対する金融上の費用)から純額主義による会計処理は認められておらず、売上高から直接減額・控除することはできない。
そこで、原則どおり総額主義により、売上から控除する割引の額を帳簿上で明らかにするために売上割引勘定が用いられる。
売上割引の位置づけ・体系(上位概念等)
売上高控除項目
前述したように売上割引は売上高控除項目ではない(売上高から控除することはできない)。
なお、純額主義による売上高控除項目には次のようなものがある。
売上割引の決算等における位置づけ等
売上割引の財務諸表における区分表示と表示科目
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業外損益の部 > 営業外費用 > 売上割引
区分表示
営業外費用
前述したように、売上割引は早期回収に対する金融上の損益(費用)なので、営業外費用に分類される。したがって、売上からの控除項目である売上値引・売上戻り・売上割戻とは、きちんと区別する必要がある。
表示科目
売上割引
売上割引については財務諸表等規則93条で区分掲記が定められているので、原則として売上割引として表示する。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(営業外費用の表示方法)
第九十三条 営業外費用に属する費用は、支払利息、社債利息、社債発行費償却、創立費償却、開業費償却、貸倒引当金繰入額又は貸倒損失(第八十七条の規定により販売費として記載されるものを除く。)、有価証券売却損、売上割引その他の項目の区分に従い、当該費用を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。ただし、各費用のうちその金額が営業外費用の総額の百分の十以下のもので一括して表示することが適当であると認められるものについては、当該費用を一括して示す名称を付した科目をもつて掲記することができる。
売上割引の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
割引をしたときは、その割引額を売上割引勘定の借方に記帳して費用計上する(総額主義)。
取引の具体例と仕訳の仕方
取引先が支払期日前に掛代金10万円を現金で支払ったので、1千円の割引をした。
売上割引 | 1千 | 売掛金 | 10万 |
現金 | 9万9千 |
売上割引の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
課税取引
売上割引は、「売上げに係る対価の返還等」として、課税標準額に係る消費税額から控除することができる。
消費税法基本通達
(売上割引)
14-1-4 課税資産の譲渡等に係る対価をその支払期日よりも前に支払いを受けたこと等を基因として支払う売上割引は、売上げに係る対価の返還等に該当する。
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