開発費
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開発費とは 【development expense】
開発費の定義・意味など
開発費(かいはつひ)とは、新技術や新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓のために特別に支出する諸費用を費用計上する費用勘定、または繰延資産に計上する資産勘定をいう。
法人税法施行令
(繰延資産の範囲)
第十四条 …
三 開発費(新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。)
所得税法施行令
(繰延資産の範囲)
第七条 …
二 開発費(新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。)
法人・個人の別
法人・個人
開発費の範囲・具体例
開発費として処理をするものとしては、具体的には、次のようなものがある。
生産能率の向上または生産計画の変更などにより、工場設備の大規模な配置替えを行った場合等の費用
「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第19号)では、生産能率の向上または生産計画の変更などにより、工場設備の大規模な配置替えを行った場合等の費用も開発費に含まれるものとされている。
ただし、経常的な費用は含まれない。
開発費に関する会計基準と制度会計
制度会計
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(財務諸表等規則)
財務諸表等規則第36条には、繰延処理できる繰延資産の範囲として開発費の科目名が掲げられている。
これは「研究開発費等に係る会計基準」で規定する研究開発費(「研究」と「開発」)の定義の範囲に含まれない費用(つまり、ここにいう開発費)が発生することが想定されるため、それらの費用については繰延資産として計上できることを明示したものである。
参考:「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(会計制度委員会報告第12号) http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/files/2-11-12-2-20110704.pdf
開発費と関係する概念
類似概念・類義語
いわゆる旧商法では、繰延資産として試験研究費と開発費という2つの概念があった。
しかし、「研究開発費等に係る会計基準」が設けられ、同会計基準で、この2つの概念に類似する研究開発費という概念が新たに定義された。
試験研究費は研究開発費に完全に含まれてしまい、開発費は研究開発費に一部含まれる部分と含まれない部分がある。
研究開発費に含まれない部分(つまり、新技術や新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓のために特別に支出する費用)については原則として支出時に売上原価または販売費及び一般管理費として費用処理するが、繰延資産として資産計上することもできる。
研究開発費
「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費は発生時に一般管理費として費用処理される。
研究開発費は実際に製品などに直接結びつくという保証がないので、たとえそれが多額であっても、資産としてはふさわしくないとの判断から繰延資産からはずされた。
参考:中野智之 『最新版 仕訳がすぐわかる 経理・勘定科目事典』 ナツメ社、2007年、117項。
試験研究費
試験研究費は研究開発費に完全に含まれてしまうため、実質的には廃止となった。
ただし、税法上(租税特別措置法)、試験研究費という用語がある。
開発費の位置づけ・体系(上位概念等)
繰延資産
なお、会計上の繰延資産の範囲と税法上の繰延資産の範囲は異なる。
税法上の繰延資産から、会計上の繰延資産に該当するものを除いたものが税法独自の繰延資産ということになる。
開発費の決算等における位置づけ等
の財務諸表における区分表示と表示科目
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業損益の部 > 販売費及び一般管理費 > 開発費(販売費及び一般管理費として処理した場合)
または
区分表示
営業外費用または繰延資産
開発費は費用計上した場合には売上原価または販売費及び一般管理費に属するものとして、また、資産計上した場合には繰延資産に属するものとしてそれぞれ表示する(後述)。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
四 …
(一)資 産
…
C 創立費、開業費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、開発費、試験研究費及び建設利息は、繰延資産に属するものとする。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(繰延資産の範囲)
第三十六条 創立費、開業費、株式交付費、社債発行費及び開発費は、繰延資産に属するものとする。
表示方法
直説法(直接控除法)
開発費を償却の対象となる繰延資産に計上した場合、繰延資産は直接法(直接控除法)しか認められていないので、有形固定資産とは異なり、帳簿価額だけを表示し、また、減価償却累計額の注記も不要である。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
四 …
(一)資 産
…
C 創立費、開業費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、開発費、試験研究費及び建設利息は、繰延資産に属するものとする。これらの資産については、償却額を控除した未償却残高を記載する。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
第三十八条 各繰延資産に対する償却累計額は、当該繰延資産の金額から直接控除し、その控除残高を各繰延資産の金額として表示しなければならない。
開発費の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
開発費と試験研究費は会社の任意で繰延資産とすることができていたが(→会計上の繰延資産)、新たに研究開発費に関する会計基準(「研究開発費等に係る会計基準」)が設けられた。
開発費は研究開発費に一部含まれる部分と含まれない部分があるので、同基準では含まれない部分については従来どおりの処理が可能とされた。
すなわち、研究開発費に含まれない開発費(つまり、新技術や新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓のために特別に支出する費用)は、原則として、支出時に開発費勘定(費用)を用いて費用計上したうえ、売上原価または販売費及び一般管理費として処理する。
ただし、同じく開発費勘定(資産)を用いて繰延資産に計上することもできる。
実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い
(5) 開発費の会計処理
開発費は、原則として、支出時に費用(売上原価又は販売費及び一般管理費)として処理する。ただし、開発費を繰延資産に計上することができる。
繰延資産の計上
繰延資産とした場合は、期末(決算時)に決算整理のひとつとして繰延資産の償却を行う必要がある。
すなわち、その償却額を開発費償却または繰延資産償却費勘定(営業外費用)の借方に記帳して費用計上するとともに開発費勘定の貸方に記入して減少させる(振替仕訳)。
なお、e-Taxの確定申告等作成コーナーで確定申告書を作成する場合は、減価償却費として計上する。
ただし、この場合、e-Taxの確定申告等作成コーナーの決算書・収支内訳書を作成するページが任意償却に対応していないため、内訳書(「減価償却費の計算」)は別途会計ソフトなどで作成する必要がある。
e-Taxヘルプデスクでは、繰延資産償却額についても減価償却費として計上するよう案内している。
もちろん、原則どおり、繰延資産償却といった項目を新たに設定して処理をしてもよい。
e-Taxや確定申告等作成コーナーについては、次のサイトのページなどを参照。
e-Tax - 手続き・申請・届出・内容証明郵便など法律問題その他事務手順
確定申告―手続き―必要書類―確定申告書の書き方・作成方法・作り方―確定申告等作成コーナー - 税金―所得税法
(償却方法・償却期間)
繰延資産の償却方法と償却期間については、会計上は企業会計基準委員会が定めた「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第19号)が基準となる。
これによれば、開発費は支出のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却しなければならない。
実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い
(5) 開発費の会計処理
…、開発費を繰延資産に計上することができる。この場合には、支出のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却しなければならない。
しかし、税法上は、会社・法人の場合は任意償却(法人税法施行令64条第1項第1号)、個人の場合は、60カ月の均等償却または任意償却のいずれかの方法によることとされている(所得税法施行令137条第1項第1号・第3項)。
(記帳方法)
開発費など繰延資産の記帳方法は直接法(直接控除法)によるものとされている。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
四 …
(一)資 産
…
C 創立費、開業費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、開発費、試験研究費及び建設利息は、繰延資産に属するものとする。これらの資産については、償却額を控除した未償却残高を記載する。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
第三十八条 各繰延資産に対する償却累計額は、当該繰延資産の金額から直接控除し、その控除残高を各繰延資産の金額として表示しなければならない。
取引の具体例と仕訳の仕方
開発費を繰延資産に計上する場合
市場の開拓のための諸費用50万円を銀行振込で支払い、繰延資産とした。
開発費 | 500,000 | 普通預金 | 500,000 |
期末(決算時)
決算整理仕訳
決算時に当期分の償却費10万円を計上する。
繰延資産償却費(または開発費償却) | 100,000 | 開発費 | 100,000 |
開発費の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
課税取引
消費税法上、開発費は課税取引に該当し、仕入税額控除の対象となる。
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