無形固定資産
(" 貸借対照表―資産―固定資産―無形固定資産 "から複製)
無形固定資産とは 【intangible fixed asset】
無形固定資産の定義・意味など
無形固定資産(むけいこていしさん)とは、貸借対照表の区分表示のひとつで、権利のように形のない(物体ではない・物理的実体のない)固定資産をいう。
無形固定資産の位置づけ・体系(上位概念等)
固定資産
なお、固定資産は、企業会計原則などにより、次の3つの種類に分類されている。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
…
(一)資産
… B 固定資産は、有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産に区分しなければならない。
会社計算規則
(資産の部の区分)
第七十四条 …
2 固定資産に係る項目は、次に掲げる項目に区分しなければならない。この場合において、各項目は、適当な項目に細分しなければならない。
一 有形固定資産
二 無形固定資産
三 投資その他の資産
無形固定資産の分類・種類
権利の内容による分類
無形固定資産は、権利の内容により、次のような種類に分類できる。
参考:中野智之 『最新版 仕訳がすぐわかる 経理・勘定科目事典』 ナツメ社、2007年、98項。
減価償却対象の肯否による分類
減価償却資産
借地権、電話加入権以外の無形固定資産は減価償却の対象となる。
非減価償却資産
借地権と電話加入権は、時の経過により資産価値が減少することはないので、減価償却の対象とならない。
したがって、また、取得価額が10万円未満の場合でも資産計上する必要がある。
無形固定資産の範囲・具体例
無形固定資産の範囲
生物
畜産業における牛、豚、果樹園を経営している場合の果樹などは、生物として減価償却の対象とされ、貸借対照表上の表示上は、無形固定資産として取り扱われる。
ただし、観賞用、興行用の生物は、工具器具備品として有形固定資産として取り扱われる。
無形固定資産の具体例
無形固定資産には、次のようなものがある。
なお、これらは、実際には、それぞれ内容のわかる科目名を付して処理することとされている。
- 法律上の権利
- 借地権(地上権を含む)
- 鉱業権
- 漁業権(入漁権を含む)
- 水利権
- 法律によって知的生産物などに与えられる独占的権利
- 特定の施設の利用権など契約上の権利
- ソフトウェア
- コンピュータプログラム
- システム仕様書
- 営業権といった企業信用などにより超過収益力をもたらす権利
- リース資産(当該会社がファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産である等の一定の条件あり)
会社計算規則
(資産の部の区分)
第七十四条 …
3 次の各号に掲げる資産は、当該各号に定めるものに属するものとする。
…
三 次に掲げる資産 無形固定資産
イ 特許権
ロ 借地権(地上権を含む。)
ハ 商標権
ニ 実用新案権
ホ 意匠権
ヘ 鉱業権
ト 漁業権(入漁権を含む。)
チ ソフトウエア
リ のれん
ヌ リース資産(当該会社がファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産であって、当該リース物件がイからチまで及びルに掲げるものである場合に限る。)
ル その他の無形資産であって、無形固定資産に属する資産とすべきもの
無形固定資産の決算等における位置づけ等
無形固定資産の財務諸表における区分表示と表示科目
貸借対照表 > 資産 > 固定資産 > 無形固定資産 > ◯◯
区分表示
固定資産
前述したように無形固定資産は固定資産に属するものとして表示する。
表示科目
貸借対照表では"適当な項目に細分"して表示することとされている(会社計算規則74条2項)。
ただし、その金額が資産総額の5%以下であれば、「その他無形固定資産(その他の無形固定資産)」として表示すれば足りる(財務諸表等規則29条)。
会社計算規則
(資産の部の区分)
第七十四条 …
2 固定資産に係る項目は、次に掲げる項目に区分しなければならない。この場合において、各項目は、適当な項目に細分しなければならない。
一 有形固定資産
二 無形固定資産
三 投資その他の資産
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
第二十九条 前条第一項第十一号の資産のうち、その金額が資産の総額の百分の五を超えるものについては、当該資産を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
表示方法
直説法(直接控除法)
減価償却の対象となる無形固定資産については、直接法(直接控除法)しか認められていない。
つまり、有形固定資産とは異なり、帳簿価額だけを表示し、また、減価償却累計額の注記も不要である。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
…
(一)資 産
…
B …
無形固定資産については、減価償却額を控除した未償却残高を記載する。
会社計算規則
(無形固定資産の表示)
第八十一条 各無形固定資産に対する減価償却累計額及び減損損失累計額は、当該各無形固定資産の金額から直接控除し、その控除残高を当該各無形固定資産の金額として表示しなければならない。
無形固定資産の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
期中に無形固定資産を取得したときはその取得原価を該当する資産勘定の借方に記帳して資産計上する。そして、その後、減価償却資産には毎決算期に減価償却により費用計上していく。
期中(購入・取得時)
資産計上
取得原価(取得価額)の決定方法としては、当該固定資産の購入代金のほか、購入に要したすべての付随費用を計上する。
期末(決算時)
減価償却
減価償却の対象
法律上有効期限が定められている無形固定資産は、有形固定資産と同様に減価償却の対象となる。
ただし、取得価額が10万円未満のものは、事業の用に供した年度に費用に計上することができる。
また、借地権、電話加入権は、資産価値の減価がないので、減価償却資産には該当しない。
減価償却の記帳方法
直説法
減価償却の方法
無形固定資産には、修繕という考え方が成立しないため、理論的に定率法による減価償却を認める余地がない。
したがって、無形固定資産は、原則として、定額法しか認められていない(定例法は、不可)。
ただし、例外として、鉱業権に生産高比例法が認められている。
なお、有形固定資産が備忘価額1円まで償却するのに対し、無形固定資産では全額を償却する。
したがって、無形固定資産の定額法による当期償却額の算定方法は次の計算式となる。
無形固定資産の定額法による当期償却額 = 取得価額 ✕ 定額法による償却率
任意償却
税法上、無形固定資産についても有形固定資産と同様に任意償却ができる。
したがって、赤字決算となる場合には、減価償却費を計上しないこともできる。
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