特許権
特許権とは
特許権の定義・意味など
特許権(とっきょけん)とは、特許法にもとづいて登録された発明※を独占的・排他的に行使できる権利を処理するための資産勘定をいう。
※発明とは、自然法則を利用した技術的思想のうち高度なものをいう。
なお、権利としての特許権はパテントとも呼ばれる。
法人・個人の別
法人・個人
特許権は法人・個人で使用する勘定科目である。
特許権の位置づけ・体系(上位概念等)
無形固定資産
無形固定資産には特許権も含めて次のようなものがある。
- 法律上の権利
- 借地権(地上権を含む)
- 鉱業権
- 漁業権(入漁権を含む)
- 水利権
- 法律によって知的生産物などに与えられる独占的権利
- 特定の施設の利用権など契約上の権利
- ソフトウェア
- コンピュータプログラム
- システム仕様書
- 営業権といった企業信用などにより超過収益力をもたらす権利
- リース資産(当該会社がファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産である等の一定の条件あり)
会社計算規則
(資産の部の区分)
第七十四条 …
3 次の各号に掲げる資産は、当該各号に定めるものに属するものとする。
…
三 次に掲げる資産 無形固定資産
イ 特許権
ロ 借地権(地上権を含む。)
ハ 商標権
ニ 実用新案権
ホ 意匠権
ヘ 鉱業権
ト 漁業権(入漁権を含む。)
チ ソフトウエア
リ のれん
ヌ リース資産(当該会社がファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産であって、当該リース物件がイからチまで及びルに掲げるものである場合に限る。)
ル その他の無形資産であって、無形固定資産に属する資産とすべきもの
特許権と関係する概念
特許権と実用新案権との違い
実用新案権は、登録された考案(物品の形状・構造の空間的表現)を独占的に行使できる権利であり、特許権の対象のほうが技術的に高度である。
特許権の決算等における位置づけ等
特許権の財務諸表における区分表示と表示科目
貸借対照表 > 資産 > 固定資産 > 無形固定資産 > 特許権
区分表示
無形固定資産
前述したように特許権は無形固定資産に属するものとして表示する。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
…
(一)資 産
…
B …
営業権、特許権、地上権、商標権等は、無形固定資産に属するものとする。
表示方法
直説法
(帳簿価額)
減価償却の対象となる無形固定資産については、直接法しか認められていない。
つまり、有形固定資産とは異なり、帳簿価額だけを表示し、また、減価償却累計額の注記も不要である。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
…
(一)資 産
…
B …
無形固定資産については、減価償却額を控除した未償却残高を記載する。
会社計算規則
(無形固定資産の表示)
第八十一条 各無形固定資産に対する減価償却累計額及び減損損失累計額は、当該各無形固定資産の金額から直接控除し、その控除残高を当該各無形固定資産の金額として表示しなければならない。
特許権の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
特許権は取得原価で評価したうえ、特許権勘定の借方に記帳して資産計上する。そして、その後毎決算期に減価償却により費用処理していく。
ただし、特定の研究開発目的にのみ使用され、他の目的に使用できない特許権を取得した場合の原価は、取得時に研究開発費勘定で費用処理する。
取得原価主義の適用
資産としての特許権の評価基準については、原則どおり、取得原価主義が適用される。
取得原価(取得価額)の決定方法
特許権の取得価額は、その取得形態により次のように決定される。
以下、中野智之 『最新版 仕訳がすぐわかる 経理・勘定科目事典』 ナツメ社、2007年、101項を参考
取得価額の決定方法 | |||
---|---|---|---|
他から購入 | 購入価額+付随費用 | ||
自社で発明 | 開発費 | 繰延資産処理 | 未償却残額(+付随費用) |
開発費・研究開発費 | 費用処理 | (付随費用) |
1.特許権を他から購入した場合
取得原価(取得価額)の決定方法としては、特許権の購入代金のほか、出願料・登録免許税など特許権の購入に要したすべての付随費用を計上する。
2.自社で発明した場合
当該発明にかかった費用をどのように処理しているかにより、取得価額が決まる。
次の2つの場合があるが、いずれの場合においても、付随費用は取得価額に含めないことができる。
繰延資産として資産計上している場合
発明にかかった費用が繰延資産(開発費)として資産計上されている場合、特許権の取得原価(取得価額)は、その未償却残額と付随費用の合計となる。
費用処理している場合
支出年度の費用として処理している場合、特許権の取得原価(取得価額)は付随費用のみとなる。
減価償却
耐用年数
特許権などの工業所有権はそれぞれ法的有効期間が定められているが、実務では税法上の耐用年数を使って減価償却する。
意匠権の耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」別表第一で8年と規定されている。
減価償却の方法
特許権などの無形固定資産には、修繕という観念がないため、理論的に定率法による減価償却を認める余地がない。
したがって、原則として、定額法しか認められていない(定例法は、不可)。
取引の具体例と仕訳の仕方
期中(購入・取得時)
特許権 | ×××× | 普通預金 | ×××× |
特許権の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
課税取引
消費税法上、特許権は課税取引に該当し、仕入税額控除の対象となる。
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