[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

勘定科目を体系的に分類し、仕訳の仕方等を解説した会計の実務的マニュアルです。


施設利用権


施設利用権とは

施設利用権の定義・意味など

施設利用権(しせつりようけん)とは、各事業者に対して施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して便益を受ける権利を処理する資産勘定をいう。

施設利用権の範囲・具体例

施設利用権の範囲

施設利用権は、事業目的のためのものに限る。また、電話加入権を除く。

施設利用権の具体例

たとえば、法人税法施行令では次のような例があげられている(同施行令13条)。

電気通信施設利用権

電気通信施設利用権とは、電信(テレックス)・データ通信サービスなどの提供を受ける権利をいう。

電話加入権と違い、譲渡はできない。

施設利用権の位置づけ・体系(上位概念等)

無形固定資産

施設利用権は無形固定資産のひとつである。

無形固定資産には施設利用権も含めて次のようなものがある。

  1. 法律上の権利
    1. 借地権(地上権を含む)
    2. 鉱業権
    3. 漁業権(入漁権を含む)
    4. 水利権
  2. 法律によって知的生産物などに与えられる独占的権利
    1. 工業所有権
      1. 特許権
      2. 商標権
      3. 実用新案権
      4. 意匠権
    2. 著作権
  3. 特定の施設の利用権など契約上の権利
    1. 電話加入権
    2. 施設利用権
      1. 電気ガス供給施設利用権
      2. 水道施設利用権
      3. 工業用水道施設利用権
      4. 電気通信施設利用権など
    3. ダム使用権
    4. ノウハウノーハウ
  4. ソフトウェア
    1. コンピュータプログラム
    2. システム仕様書
  5. 営業権といった企業信用などにより超過収益力をもたらす権利
    1. 営業権のれん
  6. リース資産(当該会社ファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産である等の一定の条件あり)

会社計算規則
資産の部の区分)
第七十四条 …
 次の各号に掲げる資産は、当該各号に定めるものに属するものとする。

 次に掲げる資産 無形固定資産
 特許権
 借地権(地上権を含む。)
 商標権
 実用新案権
 意匠権
 鉱業権
 漁業権(入漁権を含む。)
 ソフトウエア
 のれん
 リース資産(当該会社ファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産であって、当該リース物件がイからチまで及びルに掲げるものである場合に限る。)
 その他の無形資産であって、無形固定資産に属する資産とすべきもの

施設利用権の決算等における位置づけ等

施設利用権の財務諸表における区分表示表示科目

貸借対照表資産固定資産無形固定資産 > 施設利用権など

区分表示
無形固定資産

前述したように施設利用権は無形固定資産に属するものとして表示する。

表示科目

貸借対照表では"適当な項目に細分"して表示することとされている(会社計算規則74条2項)。

ただし、その額が資産総額の5%以下であれば、「その他無形固定資産(その他の無形固定資産)」として表示すれば足りる(財務諸表等規則29条)。

会社計算規則
資産の部の区分)
第七十四条  …
 固定資産に係る項目は、次に掲げる項目に区分しなければならない。この場合において、各項目は、適当な項目に細分しなければならない。
一  有形固定資産
二  無形固定資産
三  投資その他の資産

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
第二十九条  前条第一項第十一号の資産のうち、その額が資産の総額の百分の五を超えるものについては、当該資産を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。

表示方法
直説法(直接控除法

減価償却の対象となる無形固定資産については、直接法直接控除法)しか認められていない。

つまり、有形固定資産とは異なり、帳簿価額だけを表示し、また、減価償却累計額の注記も不要である。

企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)

(一)資 産

B …
無形固定資産については、減価償却額を控除した未償却残高を記載する。

会社計算規則
無形固定資産の表示)
第八十一条  各無形固定資産に対する減価償却累計額及び減損損失累計額は、当該各無形固定資産額から直接控除し、その控除残高を当該各無形固定資産額として表示しなければならない。

施設利用権の会計簿記経理上の取り扱い

会計処理方法

減価償却

施設利用権は、原則として、資産計上して減価償却をする必要がある。

ただし、取得価額が10万円未満のものについては、法により他の減価償却資産と同様に少額減価償却資産として、消耗品費勘定などを用いて費用処理をすることができる(つまり、取得時の経費とすることができる)(→即時償却一時償却))。

また、取得価額が20万円未満の場合は、一括償却資産として、3年間で均等償却できる(→一括償却資産の3年均等償却)。

さらに、青色申告者である中小企業者等の場合は、少額減価償却資産の特例により、取得価額30万円未満のものについても、その取得価額の全部の額を一括して消耗品費勘定などを使用して費用計上できる(→即時償却一時償却))。

つまり、取得価額の考え方は他の固定資産と同じである。

なお、取得価額の判定に際し、消費税の額を含めるかどうかについては納者の経理方式による。

すなわち、経理であれば消費税を含んだ額で、経理であれば消費税を含まない額で判定する。

なお、免税事業者経理方式は経理になる。

No.2100 減価償却のあらまし|所得国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2100.htm

減価償却の記帳方法

直接法

前述したように、無形固定資産については直接法しか認められていない。

耐用年数

減価償却費の計算基礎となる施設利用権の耐用年数については、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」別表第一で次のように規定されている。

施設利用権の種類耐用年数
専用側線利用権 30年
鉄道軌道連絡通行施設利用権 30年
電気ガス供給施設利用権 15年
水道施設利用権 15年
工業用水道施設利用権 15年
電気通信施設利用権 20年

減価償却の方法減価償却費の計算方法

定額法

施設利用権は、無形固定資産として、残存価額はゼロで、法定耐用年数定額法によって均等償却する。

無形固定資産は権利なので、一定期間が経過したあとの権利の価値は何もないということである。

袴田 正美,袴田 幸江 『経理 勘定科目のことがよくわかる事典』 西東社、2007年、97項。



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