前受収益
(" 貸借対照表―負債―流動負債―前受収益 "から複製)
前受収益とは 【deferred revenue】
前受収益の定義・意味など
前受収益(まえうけしゅうえき)とは、貸借対照表の流動負債に属する表示科目として、一定の契約にしたがって継続して役務(サービス)の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対して支払いを受けた対価をいう。
なお、後述するように、勘定科目として用いることもできる。
企業会計原則
〔注5〕経過勘定項目について
(2) 前受収益
前受収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。
法人・個人の別
法人・個人
前受収益の会計基準と制度会計
企業会計原則・会社計算規則・財務諸表等規則
前受収益については、企業会計原則や会社計算規則・財務諸表等規則で定められている。
前受収益の位置づけ・体系(上位概念等)
貸借対照表の表示科目
通常、個別的に前受地代家賃・前受利息・前受手数料などの勘定科目(負債)で処理されるが、貸借対照表ではこれらが前受収益というひとつの表示科目にまとめられる。
経過勘定項目
経過勘定項目とは、費用収益対応の原則から(後述)、現金の収支の時期と損益計算上の損益認識の時期のずれを処理するための勘定科目(貸借対照表科目)をいう。
前受収益の目的・役割・意義・機能・作用など
費用収益対応の原則
収益の繰延
当期に収益として受け取った金額のなかに、次期以降の期間に対する収益が含まれている場合がある。
この場合、費用収益対応の原則から、決算整理事項のひとつとして、その次期以降の期間に対する収益を当期の収益から控除し、次期以降に繰り延べる会計処理=収益の繰延が行われる。
前受地代家賃などの前受収益勘定はこの収益の繰延で用いられる負債勘定である。
参考:『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、249項。
前受収益の範囲・具体例
範囲
前受収益勘定は、地代家賃・利息・手数料など、営業外収益に係る前受額の処理をする勘定である。
実務上は、継続的な役務提供に限らず、次期以降の営業外収益となるものの前受け分を広く前受収益として処理されていることも多い。
具体例
前受収益として処理をするものとしては、具体的には、次のようなものがある。
他の勘定科目との関係
前受金
通常の営業取引である商品販売取引などで現金預金を前受けした場合には、前受金勘定で処理をする。
前受収益の決算等における位置づけ等
前受収益の財務諸表における区分表示と表示科目
区分表示
前受収益は、ワン・イヤー・ルールの適用を受ける。
流動負債として取り扱われる場合
企業会計原則注解
[注16] 流動資産又は流動負債と固定資産又は固定負債とを区別する基準について
…前受収益は、流動負債に属するものとする。
会社計算規則
(負債の部の区分)
第七十五条 …
2 次の各号に掲げる負債は、当該各号に定めるものに属するものとする。
一 次に掲げる負債 流動負債
…
ト 前受収益
固定負債として取り扱われる場合
前受収益のうち、決算日の翌日から起算して1年を超える期間で収益化されるものは固定負債に属し、長期前受収益などの科目で表示をする。
表示科目
前受収益
仕訳上の勘定科目(前受地代家賃・前受利息・前受手数料など)をそのまま貸借対照表の表示科目として用いるのではなく、前受収益としてまとめて表示する。
これは外部へ報告するにはそのほうがわかりやすいからである。
このように仕訳上の勘定科目と貸借対照表上の表示科目とが異なるので注意。
前受収益の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
期末(決算時)等
決算整理仕訳
前受収益は、次期以降の収益となるものなので、当期の損益計算から除去する(当期の損益計算には含めない)とともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。
企業会計原則
〔注5〕経過勘定項目について
(2) 前受収益
前受収益は、…時間の経過とともに次期以降の収益となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。
これには、具体的には、次の2つの方法がある。
- 受取時に収益計上し、決算時にまとめて翌期分を前受収益に振り替える方法(決算期ごとに振り替える方法)…収益の繰延
- 受取時に収益計上するが、 その翌月ごとに収益に振り替えていく方法(月ごとに振り替える方法)
一般的には、たとえば、地代家賃の前受けであれば、期中処理の段階では、単に受取家賃勘定などで収益計上しておき、決算整理の段階で収益の繰延を行う。
具体的には、次期以降の期間に対する収益の金額を、該当する収益勘定の借方に記帳して当期の損益計算に計上するとともに、前受地代家賃・前受利息・前受手数料などの前受収益勘定(負債)の貸方に記帳して貸借対照表の負債の部に計上する。
翌期首
再振替仕訳
翌期首には、負債として繰り延べられた金額を収益に戻す会計処理(再振替仕訳)を行う。
具体的には、収益の勘定の貸方に記帳するとともに、前受収益勘定(負債)の借方に記帳する。
例外
重要性の原則
重要性の原則から、重要性の乏しいものについては、継続適用を前提にして、負債に計上しなくてもよいとされている(つまり、わざわざ前受収益に振り替える必要はない)。
企業会計原則
重要性の原則は、財務諸表の表示に関しても適用される。
重要性の原則の適用例としては、次のようなものがある。
…
(2) 前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。
実務上の取り扱い
前受収益勘定
前述したとおり、通常は個別的に前受地代家賃・前受利息・前受手数料などの勘定科目で処理をし、貸借対照表でこれらが前受収益というひとつの表示科目にまとめられる。
しかし、前受地代家賃勘定などで個別的に処理をするのはあくまで内部的な管理のためにすぎない。
したがって、これらを貸借対照表にまとめあげることが面倒であれば、最初から前受収益勘定で処理をしてもよい。
ただし、この場合、補助科目を使って前受地代家賃・前受利息・前受手数料などを区別して管理する。
取引の具体例と仕訳の仕方
12月1日に向こう6カ月分の家賃300,000円が銀行に振り込まれた。なお、会計期間は1月1日から12月31日の1年間である。
以下、『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、250項の仕訳の具体例を参考。
期中
12月1日に向こう6カ月分の家賃300,000円を受け取った。
普通預金 | 300,000 | 受取家賃 | 300,000 |
期末(決算時)
期末(12月31日)に決算整理仕訳のひとつとして収益の繰延を行った。
受取家賃 | 250,000 | 前受地代家賃(または前受収益) | 250,000 |
翌期首
翌期首(1月1日)に負債として見越された金額を収益に戻すため、再振替仕訳を行った。
前受地代家賃(または前受収益) | 250,000 | 受取家賃 | 250,000 |
前受収益の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、前受収益は不課税取引として消費税の課税対象外である。
現在のページが属するカテゴリ内のページ一覧[全 18 ページ]
- 売上原価
- 前払費用
- 前払地代家賃(前払地代・前払家賃)
- 前払保険料
- 前払利息
- 前受収益
- 前受地代家賃(前受地代・前受家賃)
- 前受手数料
- 前受利息
- 未収収益
- 未収地代家賃(未収地代・未収家賃)
- 未収利息
- 未収手数料
- 未払給料(未払賃金)
- 未払地代家賃(未払地代・未払家賃)
- 未払保険料
- 未払費用
- 未払利息
現在のページが属するカテゴリのサイトにおける位置づけ
- ホーム
- 勘定科目一覧(一般)
- 資産―現金・預金
- 資産―売上債権
- 資産―有価証券
- 資産―棚卸資産
- 資産―他流動資産(五十音順)
- 資産―有形固定資産
- 資産―無形固定資産
- 資産―投資その他の資産―資本参加を目的とする投資
- 資産―投資その他の資産―長期利殖を目的とする投資
- 資産―投資その他の資産―その他の長期性資産(五十音順)
- 資産―繰延資産
- 負債―仕入債務
- 負債―他流動負債(五十音順)
- 負債―固定負債
- 負債―評価勘定
- 純資産―株主資本―資本金
- 純資産―株主資本―資本剰余金
- 純資産―株主資本―利益剰余金
- 純資産―株主資本―自己株式
- 純資産―評価・換算差額等
- 純資産―新株予約権
- 収益―営業収益―売上高
- 費用―売上原価
- 収益―営業収益―商品売買益
- 費用―販売管理費―あ行
- 費用―販売管理費―か行
- 費用―販売管理費―さ行(さ-じむ)
- 費用―販売管理費―さ行(しゃ-せき)
- 費用―販売管理費―さ行(接待交際費)
- 費用―販売管理費―さ行(せんーそ)
- 費用―販売管理費―た行
- 費用―販売管理費―な行
- 費用―販売管理費―は行
- 費用―販売管理費―ま行
- 費用―販売管理費―や行
- 費用―販売管理費―ら行
- 収益―営業外収益(五十音順)
- 費用―営業外費用(五十音順)
- 費用―営業外費用―繰延資産の償却費
- 収益―特別利益
- 費用―特別損失
- その他―事業主勘定
- その他―備忘勘定(対照勘定)
- 決算整理で用いる独自の勘定科目
- 差引損益計算で用いる独自の勘定科目
- 帳簿決算で用いる独自の勘定科目
- 勘定科目一覧(一般)