売上原価
売上原価とは
売上原価の定義・意味など
売上原価(うりあげげんか)とは、3分法で記帳している場合において、決算整理事項のひとつとして売上原価を算定するために用いられる勘定科目をいう。
参考:『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、257項。
なお、売上原価一般または損益計算書上の区分表示としての売上原価については次のページを参照。
売上原価の位置づけ・体系(上位概念等)
決算整理事項
売上原価の算定
簿記は、最終的には会計として利害関係者に企業の財政状態と経営成績を報告することを目的とする。
この目的は貸借対照表や損益計算書などの決算書(財務諸表)といった報告書を作成・公開することで果たされる。
このうち損益計算書は、企業や個人事業主の1会計期間(事業年度)における利益(いくら儲かったのか)を明らかにするために作成するものである。
そして、損益計算書における利益は、次の計算式で算定・算出される(利益計算)。
利益には、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益の5つの段階がある(→段階利益)が、このうち、当期の粗利である売上総利益は収益=売上高から費用の一要素である売上原価を控除して得られる。
売上原価は、厳密には販売した商品の単価(1個あたりの仕入原価)に販売した数量を掛けて計算するが、この計算は非常に煩雑である(→分記法)。
そこで、売上原価の計算は、決算時に在庫商品を繰越商品勘定などを用いて処理したうえ、期末における仕入勘定の残高(つまり、当期に仕入れた商品の仕入原価の合計額)である当期商品仕入高(いわば、仮の費用)をベースにして、これを売上原価(いわば、確定した費用)に一括して変換して行うのが一般的である(→三分法)。
すなわち、当期商品仕入高のなかには、前期の仕入金額ではあるが当期の費用とすべきもの (前期に仕入れた商品が当期で販売された場合。つまり、前期から繰り越された在庫商品)や、逆に当期の費用とはすべきではないもの(当期に仕入れた商品が売れ残った場合。つまり、当期に売れ残った在庫商品※)が含まれている場合がある。
※当期に売れ残った在庫商品については、売上原価として当期の費用に計上することはできない。
そこで、収益から差し引かれる費用はその収益と何らかの対応関係があるものに限定されるという費用収益対応の原則から、決算時に決算整理事項のひとつとして、当期商品仕入高を次の計算式により売上原価として正しく算定しなおす。
なお、費用と収益の対応関係には①個別対応と②期間対応があるが、売上高と売上原価の対応関係は、個別対応であり、仕入れた商品のうち、売れた分だけを売上原価とし、売れ残った分は売上原価としない。
前期末に商品の在庫がなく、かつ、当期に仕入れた商品がすべて販売された場合には、当期商品仕入高=売上原価となる。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
企業会計原則
売上原価は、…、商業の場合には、期首商品たな卸高に当期商品仕入高を加え、これから期末商品たな卸高を控除する形式で表示し、製造工業の場合には、期首製品たな卸高に当期製品製造原価を加え、これから期末製品たな卸高を控除する形式で表示する。
この計算式により、当期に仕入れた商品の仕入原価の合計額を表していた仕入勘定の残高は、売上高(収益)に対応する商品の仕入原価=売上原価(費用)を表すものとなる。
企業会計原則
売上原価は、売上高に対応する商品等の仕入原価又は製造原価であって、…
さらに、上記の計算式により売上原価を計算するにあたっては、次の2つの方法がある。
参考:『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、257項。
ただし、いずれの方法を採用するにせよ、期首商品棚卸高(前期から繰り越された在庫商品)や期末商品棚卸高(当期に売れ残った在庫商品)は具体的なかたちがあるモノなので、前払費用勘定などで費用処理をするのではなく、繰越商品勘定などの資産勘定で処理をする。
売上原価の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
期末(決算時)等
決算整理事項(決算整理仕訳)
売上原価を算定するための決算整理仕訳の方法として売上原価勘定を用いる場合は以下の手順で行う。
以下、参考:『日商簿記3級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、258-259項。
期首商品棚卸高は前期末において繰越商品勘定の借方に計上され、当期に繰り越されている。
したがって、期首商品棚卸高を繰越商品勘定の貸方から売上原価勘定の借方に振り替える。
売上原価 | ×××× | 繰越商品 | ×××× |
仕入勘定で計上されている当期商品仕入高を仕入勘定の貸方から売上原価勘定の借方に振り替える。
以上、①と②の処理により売上原価勘定の借方には当期中に販売可能である商品の仕入原価が集計されたことになる。
売上原価 | ×××× | 仕入 | ×××× |
期末商品棚卸高は資産として次期に繰り越され、次期以降に販売されたときにその期の売上原価となる。
したがって、期末商品棚卸高を売上原価勘定の貸方から繰越商品勘定の借方に振り替える。
この処理により、売上原価勘定の残高が売上原価となり、繰越商品勘定の残高は期末商品棚卸高となる。
繰越商品 | ×××× | 売上原価 | ×××× |
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