総額主義
総額主義とは
総額主義の定義・意味など
総額主義(そうがくくしゅぎ)とは、損益計算書の収益・費用と貸借対照表の資産・負債・資本の各項目を相殺せずにすべて計上して表示することをいう。
総額主義の位置づけ・体系(上位概念等)
財務諸表の表示方法
総額主義の原則
財務諸表(損益計算書・貸借対照表)の表示方法は次の2つに大別される。
- 総額主義
- 純額主義
この点、企業会計原則では、費用の項目と収益の項目(損益計算書)、資産の項目と負債または資本の項目(貸借対照表)とはそれぞれ相殺せずにすべて計上しなければならないとして、損益計算書についても貸借対照表についても総額主義を原則としている(→総額主義の原則)。
企業会計原則
第二 損益計算書原則
(損益計算書の本質)
一 …
B 費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。
…
第三 貸借対照表原則
(貸借対照表の本質)
一 …
B 資産、負債及び資本は総額によって記載することを原則とし、資産の項目と負債又は資本の項目とを相殺することによって、その全部又は一部を貸借対照表から除去してはならない。
純額主義
(重要性の原則)
ただし、重要性の原則から総額主義の原則には例外があり、次の場合には純額主義が認められている。
※割引は、値引・返品・割戻とは異なり、それが利息としての性格を有すること(早期に代金を回収できたことに対する金融上の費用、または早期に代金を支払ったことに対する金融上の収益)から純額主義による会計処理は認められていない(つまり、割引は売上高・仕入高から控除することはできない)。したがって、割引については原則どおり総額主義による。
値引(売上値引・仕入値引)・返品(売上戻り・仕入戻し)・割戻(売上割戻・仕入割戻)については、総額主義と純額主義のどちらの方法を採用するかは会社の実情にあわせて処理をすればよく、任意である。
財務諸表等規則でもどちらの方法でもかまわない旨の規定がある。
ただし、純額主義による表示が主流である。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(売上高の表示方法)
第七十二条 売上高は、売上高を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。ただし、第一号の項目を示す名称を付した科目及びその控除科目としての第二号の項目を示す名称を付した科目をもつて掲記することを妨げない。
一 総売上高(半製品、副産物、作業くず等の総売上高及び加工料収入その他の営業収益を含む。)
二 売上値引及び戻り高
(商品仕入高の表示方法)
第七十九条 第七十五条第一項第二号の当期商品仕入高は、当期商品仕入高の名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。ただし、商品の総仕入高(仕入運賃及び直接購入諸掛を含む。)を示す名称を付した科目及びその控除科目としての仕入値引、戻し高等の項目を示す名称を付した科目をもつて掲記することを妨げない。
総額主義の具体例
損益計算書
総売上高・総仕入高
総額主義による場合は、たとえば、売上は総売上高、仕入は総仕入高で表示する。
特殊商品売買
委託販売
委託販売の収益を計上する場合、(委託者の手取額ではなく)受託者の売上高をもって委託者の積送品売上とするのは総額主義にもとづくものである。
総額主義の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
値引・返品・割戻
売上値引/仕入値引(値引の場合)・売上戻り/仕入戻し(返品の場合)・売上割戻/仕入割戻(割戻の場合)
先述したように、値引・返品・割戻については、実務上、純額主義により、商品等の販売時・仕入時の貸借反対仕訳により売上・仕入勘定を直接減額・控除して純売上高・純仕入高を記載する会計処理が一般的である。
ただし、値引・返品・割戻の額を帳簿上で明らかにするために、総額主義により、売上値引・仕入値引勘定(値引の場合)、売上戻り(または売上返品)・仕入戻し(または仕入返品)勘定(返品の場合)、売上割戻(または売上割戻高・売上リベート)・仕入割戻(または仕入割戻高・仕入リベート)を特別に設けて処理することもできる。
つまり、値引・返品・割戻があっても、これを売上・仕入から直接控除せずに(つまり、相殺せずに)、控除前の総売上高・総仕入高をもって売上高・仕入高とし、売上高控除項目(売上値引・売上戻り・売上割戻)・仕入高控除項目(仕入値引・仕入戻し・仕入割戻)については、損益計算書に控除形式で表示する。
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