損益計算書―経常損益―営業損益―営業費用―売上原価
売上原価とは
売上原価の定義・意味など
売上原価(うりあげげんか)とは、損益計算書の区分表示のひとつで、商品・製品・サービスの販売・製造のため※の費用であり、売上高に対応する商品等の仕入原価・製造原価・役務原価をいう。
※岩波書店 『広辞苑 第六版』
参考:日本経済新聞社 『会計用語辞典』 日本経済新聞出版社、1978年、22頁。
企業会計原則
売上原価は、売上高に対応する商品等の仕入原価又は製造原価であって、…
なお、決算整理で損益計算書上の売上原価を計算する方法のひとつとして用いられる勘定科目としての売上原価勘定については次のページを参照。
売上原価の範囲・具体例
仕入原価・製造原価・役務原価
売上原価は仕入原価・製造原価はもちろんのこと、役務原価も含む。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
第七十条 収益又は費用は、次に掲げる項目を示す名称を付した科目に分類して記載しなければならない。
一 売上高
二 売上原価(役務原価を含む。以下同じ。)
…
売上原価の目的・役割・意義・機能・作用など
簿記は、最終的には、利害関係者に企業の財政状態と経営成績を報告することを目的とする。
この目的は貸借対照表や損益計算書などの決算書(財務諸表)といった報告書を作成・公開することで果たされることになる。
このうち損益計算書は、企業や個人事業主の1会計期間(事業年度)における利益(つまり、いくら儲かったのか)を明らかにする(=利益計算)ために作成するものである。
この点、損益計算書における利益は、次の計算式で算定・算出する。
利益には、売上総利益、営業利益、経常利益等いくつかの種類・段階がある。
つまり、利益計算の前提として必要とされるのが、売上原価といえる。
売上原価の位置づけ・体系(上位概念等)
損益計算書の区分表示
なお、会社計算規則は損益計算書の要旨の記載方法について定めているが、これなどを参考にすると、損益計算書の区分表示の体系は以下のとおりになる。
会社計算規則
(当期純利益又は当期純損失)
第百四十三条 損益計算書の要旨は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
一 売上高
二 売上原価
三 売上総利益金額又は売上総損失金額
四 販売費及び一般管理費
五 営業外収益
六 営業外費用
七 特別利益
八 特別損失
…
7 次の各号に掲げる額が存する場合には、当該額は、当該各号に定めるものとして表示しなければならない。ただし、次の各号に掲げる額(第九号及び第十号に掲げる額を除く。)が零未満である場合は、零から当該額を減じて得た額を当該各号に定めるものとして表示しなければならない。
一 売上総損益金額(零以上の額に限る。) 売上総利益金額
二 売上総損益金額(零未満の額に限る。) 売上総損失金額
三 営業損益金額(零以上の額に限る。) 営業利益金額
四 営業損益金額(零未満の額に限る。) 営業損失金額
五 経常損益金額(零以上の額に限る。) 経常利益金額
六 経常損益金額(零未満の額に限る。) 経常損失金額
七 税引前当期純損益金額(零以上の額に限る。) 税引前当期純利益金額
八 税引前当期純損益金額(零未満の額に限る。) 税引前当期純損失金額
九 当該事業年度に係る法人税等 その内容を示す名称を付した項目
十 法人税等調整額 その内容を示す名称を付した項目
十一 当期純損益金額(零以上の額に限る。) 当期純利益金額
十二 当期純損益金額(零未満の額に限る。) 当期純損失金額
損益計算書の段階利益
損益計算書の段階利益のひとつである売上総利益は売上高から売上原価を控除して得られる。
企業会計原則
(営業利益)
D 売上総利益は、売上高から売上原価を控除して表示する。
役務の給付を営業とする場合には、営業収益から役務の費用を控除して総利益を表示する。
会社計算規則
(売上総損益金額)
第八十九条 売上高から売上原価を減じて得た額(以下「売上総損益金額」という。)は、売上総利益金額として表示しなければならない。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(売上総損益金額の表示)
第八十三条 売上高から売上原価を控除した額(売上原価が売上高をこえる場合は、売上原価から売上高を控除した額)は、売上総利益金額又は売上総損失金額として表示しなければならない。
売上原価の計算方法
売上原価は業種によりその計算方法が異なり、また売上原価とは異なる名称を使用する場合もある。
企業会計原則
売上原価は、…、商業の場合には、期首商品たな卸高に当期商品仕入高を加え、これから期末商品たな卸高を控除する形式で表示し、製造工業の場合には、期首製品たな卸高に当期製品製造原価を加え、これから期末製品たな卸高を控除する形式で表示する。
販売業の場合
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
製造業の場合
売上原価 = 期首製品棚卸高 + 当期製品製造原価 - 期末製品棚卸高
サービス業の場合
サービス業の場合には、サービス提供に対応する原価部分をいう。
建設業の場合
建設業は個別受注工事なので、期首および期末棚卸高という概念はない。
したがって、完成工事高(建設業で、売上高に相当する科目)に対する原価部分で、特に完成工事原価という科目を使用する。
売上原価に関する指標
売上原価に関係する指標として、次の2つがある。
ともに、収益性分析の指標で、両者を足すと1になる。
売上高総利益率(売上総利益率・売上利益率・売上高総利益率・粗利率)
売上原価率
売上原価の決算等における位置づけ等
売上原価の財務諸表における区分表示と表示科目
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業損益の部 > 売上原価
区分表示
たとえば、販売業の場合、期中は仕入勘定で記帳するが、損益計算書上は決算整理で仕入勘定の残高(=当期商品仕入高)と期末商品棚卸高から売上原価を計算したうえ、売上原価と表示する。
会社計算規則
(損益計算書等の区分)
第八十八条 損益計算書等は、次に掲げる項目に区分して表示しなければならない。この場合において、各項目について細分することが適当な場合には、適当な項目に細分することができる。
一 売上高
二 売上原価
三 販売費及び一般管理費
四 営業外収益
五 営業外費用
六 特別利益
七 特別損失
売上原価の表示方法
会社計算規則では、売上原価は最低限その総額と、売上総利益のみの表示をすれば足りるとされている。
ただし、財務諸表等規則では、売上原価の計算過程を表示し、売上高からこれを控除し、売上総利益を表示することとされている。
実際は、財務諸表等規則の適用外の会社においても、財務諸表等規則によった表示がよく行われている。
売上原価の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
仕入
期中(決算整理前)は仕入勘定の借方に記帳して費用処理をして、当期において仕入れに要した購入代金を記録する。
収益の認識基準(計上時期・期間帰属)
発生主義(債務確定主義の適用対象外)
売上原価については、費用の認識基準としては、債務確定主義まで必要とせず、現金の収入・支出に関わらず、取引の事実が発生した時点で収益・費用を認識(計上)するという発生主義が適用される。
詳細については、次のページなどを参照。
決算
決算整理事項(決算整理仕訳)
売上原価の算定
期末(決算時)には、決算整理により、所定の計算(=売上原価の計算方法)を行うことにより、仕入から当期の売上原価を算定する。
当期の売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高(=期末における仕入勘定の残高) - 期末商品棚卸高
なお、上記算式における「当期商品仕入高」には、本年中の掛買いなどによる仕入れでまだ代金を支払っていないものも含まれる。
逆に、前年末に未払金として仕入金額に含めた金額を、本年の支払いの際に仕入れとして記帳している場合には、その分を除外する必要がある。
詳細については次のページなどを参照。
売上原価の税務・税法・税制上の取り扱い
必要経費算入(所得税法)・損金算入(法人税法)の可否
売上原価は代表的な費用であり、その全額を必要経費算入(所得税法上)・損金算入(法人税法上)できる。
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
課税取引
消費税法上、売上原価は課税取引(課税仕入れ)に該当し、仕入税額控除の対象となる。
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