[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)

勘定科目を体系的に分類し、仕訳の仕方等を解説した会計の実務的マニュアルです。


未払税金


未払税金とは

未払税金の定義・意味など

未払税金(みばらいぜいきん)とは、租税公課のうち、事業所税不動産取得税自動車税固定資産税都市計画税消費税税込方式を採用した場合)など必要経費または損金に算入できる税金で、納義務は確定したが、未納の額を処理する負債勘定をいう。

未払税金の目的・役割・意義・機能・作用など

損金経理による未払計上

租税公課は、法(所得法または法人税法)上、必要経費または損金に算入できるものとできないものがある。つまり、租税公課のなかには、会計上と法上の取り扱いが異なるものがある。

租税公課―税務・税法・税制上の取り扱い―必要経費算入・損金算入の可否

そこで、租税公課損金経理により未払計上する場合、必要経費または損金に算入できるものとできないものとに大別し、算入可の租税公課の未納額は未払税金勘定で、そして、算入不可の租税公課法人税住民税など)の未納額は未払法人税等勘定などで処理する。

法人税基本通達
No.5300 損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期
1 損金の額に算入されない主な租税公課
損金の額に算入されない主な租税公課は次のとおりです。
(1) 法人税、地方法人税、都道府県民及び市町村民の本
(2) 各種加算税及び各種加算金延滞税及び延滞金(地方税の納期限の延長に係る延滞金は除きます。)並びに過怠
(3) 罰金及び科料(外国又は外国の地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含みます。)並びに過料
(4) 法人税額から控除する所得、復興特別所得及び外国法人税

対策・節方法としての未払税金

法上、販売費及び一般管理費については、債務が確定していれば、期末までに支払っていなくても未払計上して経費にできる(必要経費算入・損金算入できる)ものとされている(→債務確定主義)。

所得
必要経費
第三十七条  その年分の不動産所得額、事業所得額又は雑所得額(事業所得額及び雑所得額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

法人税
(各事業年度所得額の計算)
第二十二条  …
 内国法人の各事業年度所得額の計算上当該事業年度損金の額に算入すべき額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一  当該事業年度収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二  前号に掲げるもののほか、当該事業年度販売費一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三  当該事業年度損失の額で資本取引以外の取引に係るもの

したがって、費用収益対応の原則の見地からはもちろんのこと、節対策のひとつとしても、未払計上できるものはもれなく拾い出すようにする。

未払税金の範囲・具体例

未払税金勘定で処理する必要経費または損金に算入できる租税公課には、次のようなものがある。

事業税

事業税損金算入が認められているが、会計上は、原則として、損金不算入法人税住民税と同じ処理が求められている。

そのため、事業税の未納の額については、一般には未払法人税等勘定で処理をする。

ただし、この場合、法人税の確定申告において、申告調整を行うことになる。

法人税申告書―別表四―留保―減算項目―納税充当金から支出した事業税等の金額 - 税金

消費税

消費税の未納の額については、別途、未払消費税等勘定で処理することもある。

他の勘定科目との関係

未払金

未払税金は未払金の一種なので、租税の未納額についても未払金勘定で処理してもよい。

ただし、未払金勘定とは独立した科目である未払税金勘定で処理したほうが望ましいとされる。

中野智之 『最新版 仕訳がすぐわかる 経理勘定科目事典』 ナツメ社、2007年、128項

未払費用

会計上、未払金未払費用は区別されているが、務上は債務が確定しているかどうかが重要であって(→債務確定主義)、両者は特に区別されていない。

したがって、確定債務であり経費にできる(必要経費算入または損金算入できる)のであれば、未払金勘定で処理しても未払費用勘定で処理してもよい。

したがって、租税公課の未納額についても未払費用勘定で処理することが考えられる。

ただし、これもやはり本来は適切な処理とはいえない。

中野智之 『最新版 仕訳がすぐわかる 経理勘定科目事典』 ナツメ社、2007年、128項

未払税金の決算等における位置づけ等

未払税金の財務諸表における区分表示表示科目

一般に、未払金は、1年基準ワン・イヤー・ルール)により処理をされ、短期(決算日の翌日から起算して1年以内に支払期限が到来するもの)は流動負債に属し、長期(決算日の翌日から起算して1年を超えて支払期限が到来するもの)は固定負債に属するものとされる。

貸借対照表負債流動負債未払金(未払税金)

企業会計原則注解
[注16] 流動資産又は流動負債固定資産又は固定負債とを区別する基準について
 …
 貸付金借入金差入保証金受入保証金、当該企業の主目的以外の取引によって発生した未収金未払金等の債権及び債務で、貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に入金又は支払の期限が到来するものは、流動資産又は流動負債に属するものとし、入金又は支払の期限が一年をこえて到来するものは、投資その他の資産又は固定負債に属するものとする。

未払税金の会計簿記経理上の取り扱い

会計処理方法

使用する勘定科目・記帳の仕方等
事業所税の場合

期末決算時))

務上、事業所税などの申告納方式による租税については、納申告書を提出した事業年度必要経費または損金算入するのが原則とされている。

例外的に、製造原価等を構成する事業所税については申告期限未到来のものであっても損金経理により未払計上することが認められている。

所得基本通達
(その年分の必要経費に算入する租税
37-6 法第37条第1項の規定によりその年分の各種所得額の計算上必要経費に算入する国税及び地方税は、その年12月31日までに申告等により納付すべきことが具体的に確定したものとする。…

法人税基本通達
(租税損金算入の時期)
9-5-1 法人が納付すべき国税及び地方税(法人の各事業年度所得額の計算上損金の額に算入されないものを除く。)については、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める事業年度損金の額に算入する。
(1) 申告納方式による租税 納申告書に記載された額については当該納申告書が提出された日の属する事業年度とし、更正又は決定に係る額については当該更正又は決定があった日の属する事業年度とする。ただし、次に掲げる場合には、次による。
イ 収入金額又は棚卸資産の評価額のうちに申告期限未到来の納付すべき酒等に相当する額が含まれている場合又は製造原価、工事原価その他これらに準ずる原価のうちに申告期限未到来の納付すべき事業に係る事業所税若しくは地価に相当する額が含まれている場合において、法人が当該額を損金経理により未払金に計上したときの当該額については、当該損金経理をした事業年度とする。

第1款 租税|基本通達・法人税法|国税庁 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_05_01.htm

No.5300 損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期|法人税国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5300.htm

ただし、会計上は決算損金経理により未払計上するのが一般的である。

なぜならば、法上、販売費及び一般管理費については、債務が確定していれば、期末までに支払っていなくても経費にできる(必要経費算入・損金算入できる)ものとされている(所得法37条・法人税法22条3項2号)(→債務確定主義)ところ、費用収益対応の原則の見地からはもちろんのこと、節対策のひとつとしても、未払計上できるものはもれなく拾い出すようにするためである。

したがって、事業所税損金経理により未払計上する場合は、決算日租税公課勘定費用)の借方に記帳して費用計上するとともに、未払税金(または未払事業所税未払金未払費用未払法人税等勘定などの貸方に記帳して負債計上する。

(確定申告時)

確定申告時に事業所税を納付したときは、その納付額を現金預金勘定などの貸方に記帳するとともに、未払税金勘定等の借方に記帳してこれを減少させる。

固定資産税の場合

(納通知書を受け取ったとき)

固定資産税は、普通徴収とされている。

4~6月頃に固定資産税通知書が納者に交付されるので、これにより年4回に分けて金融機関等で納付することになる。

なお、全期を前納できる市町村もある。

固定資産税の納通知書を受け取ったときはその時点で額が確定するので、その全額を租税公課勘定借方に記帳して費用計上する。

なお、租税公課のなかでも固定資産税を別途管理したい場合には、固定資産税勘定を設定してもよい。

参考: 『日商簿記2級 商業簿記 スピード攻略テキスト』 DAI-X出版、2004年、174項。

しかし、他方、この時点ではまだ納付していないので、その相手科目としては未払税金(または未払金未払費用勘定などの貸方に記帳して負債計上する。

なお、納期が翌年2月である固定資産税の第4期分についても、本年分の費用になるのが原則である。

ただし、国税庁『青色申告の決算の手引き』によれば、翌年分の費用にしても「差し支え」ないものとされている。

国税庁『平成22年分青色申告の決算の手引き』

固定資産税を納付したとき)

固定資産税の各納付時期に固定資産税を納付したときは、その納付額を現金預金勘定などの貸方に記帳するとともに、未払税金勘定借方に記帳して減少させる。

取引の具体例と仕訳の仕方

事業所税の場合
期末決算時)

取引

決算を迎え、事業所税を計上した。

仕訳

借方科目
貸方科目
租税公課 ✕✕✕✕ 未払税金 ✕✕✕✕

確定申告時

取引

事業所税の納申告書を提出してこれを納付した。

仕訳

借方科目
貸方科目
未払税金 ✕✕✕✕ 普通預金 ✕✕✕✕

固定資産税の場合
通知書を受け取ったとき

取引

当期にかかる固定資産税20万円の納通知書を受け取った。

仕訳

借方科目
貸方科目
租税公課 20万 未払税金 20万

固定資産税を納付したとき

取引

固定資産税の第1期分5万円の納付時期が到来したので、現金で納付した。

仕訳

借方科目
貸方科目
未払税金 5万 現金 5万

未払税金の務・法・制上の取り扱い

消費税の課・非課・免・不課(対象外)の区分

不課税取引課税対象外)

消費税法上、未払税金は消費税の課税対象外である。



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