開業費―会計処理
開業費の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
開業費
開業準備活動は通常の営業活動ではないため、開業準備費用は、原則として、支出時に開業費勘定(費用)を用いて費用計上したうえ、営業外費用として処理する。
また、当該費用は営業活動と密接であることなどから、販売費及び一般管理費として処理することもできる。
ただし、同じく開発費勘定(資産)を用いて繰延資産に計上することもできる。
実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い
(4) 開業費の会計処理
開業費は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理する。ただし、開業費を繰延資産に計上することができる。…。また、開業費を販売費及び一般管理費として処理することができる。
なお、この場合に資産計上できるのは、税法上の規定にしたがい、開業準備費用のうち特別に支出する費用に限る。
繰延資産の計上
資産計上の日付
開業費勘定で繰延資産として資産計上する場合、帳簿上の日付は開業日の日付とする。
開業日とは、個人事業主の場合は、個人事業の開業等届出書に記載した[開廃業日]のことであり、会社・法人の場合は、設立年月日(会社設立の登記申請日)、または、法人設立届出書に記載した[事業開始(見込み)年月日]などとなる。
次のページなどを参照。
独立開業の手引き―①個人事業の開業届出・廃業届出等手続―個人事業の開廃業等届出書 - 手続き・申請・届出・内容証明郵便など法律問題
繰延資産の償却
繰延資産とした場合は、期末(決算時)に決算整理のひとつとして繰延資産の償却を行う必要がある。
すなわち、その償却額を開業費償却または繰延資産償却費勘定(営業外費用)の借方と開業費勘定の貸方に記入する(振替仕訳)。
なお、e-Taxの確定申告等作成コーナーで確定申告書を作成する場合は、減価償却費として計上する。
ただし、この場合、e-Taxの確定申告等作成コーナーの決算書・収支内訳書を作成するページが任意償却に対応していないため、内訳書(「減価償却費の計算」)は別途会計ソフトなどで作成する必要がある。
本来は営業外費用として計上すべきであるが、e-Taxヘルプデスクでは、繰延資産償却額についても減価償却費として計上するよう案内している。
もちろん、原則どおり、開業費償却または繰延資産償却費といった項目を新たに設定して処理をしてもよい。
e-Taxや確定申告等作成コーナーについては、次のサイトのページなどを参照。
e-Tax - 手続き・申請・届出・内容証明郵便など法律問題その他事務手順
確定申告―手続き―必要書類―確定申告書の書き方・作成方法・作り方―確定申告等作成コーナー - 税金―所得税法
(償却方法・償却期間)
繰延資産の償却方法と償却期間については、会計上は企業会計基準委員会が定めた「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第19号)が基準となる。
これによれば、開業費は開業のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をしなければならないとされている。
実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い
(4) 開業費の会計処理
…、開業費を繰延資産に計上することができる。この場合には、開業のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をしなければならない。
しかし、税法上は、会社・法人の場合は任意償却(法人税法施行令64条第1項第1号)、個人の場合は、60カ月の均等償却または任意償却のいずれかの方法によることとされている(所得税法施行令137条第1項第1号・第3項)。
任意償却による場合には、支出の年に全額償却してもよく、あるいは、まったく償却しなくてもよい。
また、いつでも償却費として必要経費または損金に算入することもできる。
しかし、開業した年に開業費を一括して経費にしてしまうと、赤字になる場合もある。
そこで、年度末に決算をして利益が確定してから償却費を決めてもよい。
ただし、青色申告の場合は、その年の赤字を5年間繰り越すことができるので、その年に全額経費処理するのが一般的である。
(記帳方法)
開業費など繰延資産の記帳方法は直接法(直接控除法)によるものとされている。
企業会計原則
(貸借対照表科目の分類)
四 …
(一)資 産
…
C 創立費、開業費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、開発費、試験研究費及び建設利息は、繰延資産に属するものとする。これらの資産については、償却額を控除した未償却残高を記載する。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
第三十八条 各繰延資産に対する償却累計額は、当該繰延資産の金額から直接控除し、その控除残高を各繰延資産の金額として表示しなければならない。
開業費の管理
会計資料(証憑・証拠)
費用処理をする場合であっても、繰延資産として計上する場合であっても、その内訳がわかる証憑を保存しておく。
取引の具体例と仕訳の仕方
期中
開業準備費用を繰延資産に計上したとき
(会社・法人の場合)
会社設立後、事業を開始するまでに要した開業準備費用50万円を現金で支払い、繰延資産に計上した。
開業費 | 50万 | 現金 | 50万 |
(個人事業主の場合)
広告宣伝費など各種開業準備費用の全額50万円を現金で支払った。 なお、開業資金として特に現金を準備しておらず、事業主個人のお金から支払っている。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
開業費 | 50万 | 事業主借 | 50万 |
なお、特に開業資金を準備していた場合には、事業主借勘定ではなく、現金勘定で処理をする。
期末(決算時)
繰延資産の償却
(定額法で償却するとき)
決算にあたり、当期分の償却費10万円を計上した。
繰延資産償却費(または開業費償却) | 10万 | 開業費 | 10万 |
(一括償却するとき)
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延資産償却費(または開業費償却) | 50万 | 開業費 | 50万 |
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